がんばりたくない心
ついさっき、橋のところに立っていた人がいなくなった。
たぶん死んじゃったんだ。
かわいそうに。
でも、あんなにも心配してくれた人がいたのに。
どうして、あんなことをしたんだろう。
たかたま通りかかった周りの人が嘆いてる。
どうしてと、同じように首をかしげながら。
頑張れ。
といわれると。
頑張らないといけないような気持ちになる
頑張れ、と言われると。
頑張らない人間には価値がないのかもしれないと思ってしまう。
頑張れといわれ続けると、それ以外は求められていないのだと思うようになる。
だから、頑張りたくても頑張れないと、心が折れる。
折れた。
だから、家を出て終わるために、便利な場所を探した。
そこはすぐ近くだった。
停滞していて、淀んで詰まった思考が、久々に正常に働いた。
早く見つかってよかったな、そう思った。
橋の所に立って、下を流れる川を眺める。
吸い込まれそうになるから、ずっと見つめていて、はやく吸い込まれないかなあと思う。
でも、いつまでたっても吸い込まれないから、自分から吸い込まれにいくしかないと思うようになる。
身を乗り出したら、後ろから来た誰かに腕をつかまれた。
その人間は言った。
「何があったのか知らないけど、命を粗末にしたらいかん。頑張って生きていればそのうちいいことあるはずだ」