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ホワイトコーヒー

作者: John

私は陽が燦燦と降り注ぐ穏やかな日曜の昼下がりにある小洒落た喫茶店に入った。ショッピング街を彷徨き少し喉でも潤そうと思っての事だった。メニューを見たが結構なお値段の品揃えだった。一番安い物でホワイトコーヒー13ドルというのが私の手の出る代物だった。目が飛び出るとは、こういう事だなと私は染み染み感じ入った。何も頼まずに店を出る勇気を私は持ち合わせていなかった。店には、その値段の高さからか私、金持ってますといったブルジョア感覚な客が数名いるだけだった。しかし、私はその値段の高さよりもホワイトコーヒーと言うメニューに「ホワイ?」と思った。私には、そのホワイトコーヒーを頼むという選択肢しか残されておらず仕方なくウエイトレスを呼んでホワイトコーヒーとは何たる物かと尋ねようとした。でっぷりと肥えた鼻頭と顎ににきびが出来ている目付きの悪いふてぶてしい感じのウエイトレスがドスンドスンと地響きを立てながら歩み寄ってきた。私は食肉加工工場に出荷してやりたいという衝動を抑え平静を装った。「このホワイトコーヒーとは何ですか?」ウエイトレスは高飛車な態度で私に接客した。「それはジャコウネコの糞から抽出されたコピ ルアクの豆を使用しております」ウエイトレスの女は無愛想に答えた。恐らく私を中産階級以下の黒人だと見下しているのだろう。私はメニューを再度確認した。そこには〈コピ ルアク 85ドル〉と記されてあった。ネ、ネコの糞から抽出されたコーヒーガ85ドル!私はアルマゲドンも遠い将来の日ではないなと確信した。私は、その面を張り倒してやりたいという衝動を僅かに残った理性で抑制しながら再度尋ねた。「コピ ルアクとホワイトコーヒーとの違いは?」女はぶっきらぼうに答えた。「コピ ルアクはコピ ルアク100%。ホワイトコーヒーはコピ ルアク1%ミルク99%です」私はボブ ディランの『ブルーにコンガラガッテ』な気分になった。私は疑り深い視線をいけ好かないウエイトレスにお見舞いして尋ねた。「もはや、それはミルクですよね?」その、いけ好かないウエイトレスの女は不動の山の如き面構えで言い放った。「その1%のコピ ルアクを感じ取ってもらえれば何よりです」私の心は、その一言で折れた。「ホワイトコーヒーを一杯」ウエイトレスの女はふてぶてしくテーブルを離れカウンター越しにマスターに言った。「ホワイトコーヒー一杯」マスターは私に聞こえるか聞こえないかの程度の声音で言った。「ちっ、しみったれた客だな」私には、はっきりと聞こえた。クソッ、クソッ、クソッ、この白人至上主義に傾倒したKKK(クー クラックス クラン)の手先めがッ。5分後、ホワイトコーヒーがやって来た。私はストローでチューチューした。それは、ミルクだった。しかも、氷が溶けて水っぽくなった…私は1分で飲み干してレジで13ドル置いて帰った。深夜。私はドジャーズのベースボールキャップにマスク、全身黒尽くめといった出で立ちでモンキーレンチを手にして、あの忌々しい喫茶店に戻って来た。裏口の窓ガラスを割り侵入した。防犯ベルは取り付けられていなかった。私はしめしめとほくそ笑んだ。そして、ペットボトルに忍ばせていた灯油を店内にばら撒き正面扉の施錠を解除して外に出るとマッチを擦って投げ入れた。灯油に引火しみるみる燃え盛る店内。こんなぼったくり店は地上から抹消すべきだという自己中心的な正義感に浸りながら私は走って逃げた。燃えろ、燃え尽きちまえ、このぼったくり店め。このクソったれの白人至上主義者どもめが。私はここ数年味わった事のない高揚感に包まれ無我夢中ではしっていた…

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