4.ドクター・ドゥーサ。
息切れしてきた(モンエナ飲み、執筆
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アグニスを呼びに部屋を出ると、そこにはもう一人の男性がいた。
白衣をまとった優男。眼鏡をかけている細い目をした彼は、こちらを見ると恭しく礼をした。それでアグニスも俺とライスに気付いたらしい。
こちらを見て、こう言った。
「悪いな、医者様がきたんだ」
「そっか。それじゃ、今日はこれで帰ることにするさ」
なので、俺はライスと互いを確認してから答える。
これから治療ということは、あまり騒がしいと邪魔になってしまうだろう。そう思って言うと、医者様と呼ばれた男性は申し訳なさそうに頬を掻いた。
「すみません。この病は、私でも手を焼くものでして……」
「ん、パラライズ症候群のことか? でも、原因が分からないって――」
「あぁ、そのことなんだがな。このドゥーサ先生は、王都で初めてパラライズ症候群の治療に成功したらしいんだ」
「あはは。まだ、研究段階ですけど、ね……」
俺の疑問にアグニスが答え、医者――ドゥーサはまた苦笑い。
しかし、この情報はとかく貴重だった。それに話が本当だとしたら、ニアの病気は完治に向かうかもしれない。
俺とライスは顔を見合わせて、同じ思いを抱いた。
安堵とはまさしく、このことを言うのだろう。
「それじゃ、なおさら邪魔だな。俺たちは帰るよ」
「あぁ、今日はありがとうな」
なるべく早く退散した方がいい。
そう考えて、俺とライスはアグニスたちにそう告げた。
そして、ひとまず各々の家路に就く。だが――。
「どうした、ライス……?」
「え……? あ、いや。なにか変な靄が見えて……」
家を出た直後のことだ。
ライスはアグニスの家を見ながら、そう口にする。
「靄……?」
「えっと、信じてもらえないと思うんですけど――」
そして、どこか困ったように俺に告げるのだった。
◆
「それで、どうなんだ。ドゥーサ先生」
「これはかなり、重度ですね」
「…………」
診察を終えた医者を出迎え、アグニスは訊ねる。
しかし、返ってきた答えが芳しくなく、すぐに沈黙してしまった。
それでもドゥーサは、気持ちを切り替えるように彼へ一つの提案をする。
「もし、なのですけれど――」
思い悩むようにして。
「金貨五十枚ほどあれば、相応の量の薬が用意できるかもしれません」――と。
金額を聞いて、表情を強張らせるアグニス。
何故なら金貨五十枚となれば、冒険者が一年かけて稼ぐ大金だったからだ。それを聞いたアグニスの心には、ルクシオに敗北する前のような焦りが生まれる。
拳を震わせ、うつむいてしまった。
だが――。
「ですが、用意いただければ確実にニアちゃんは治りますよ」
それに反して、ドゥーサはどういうわけか。
アグニスに見えない角度で、口角を大きく歪めるのだった。