4.決着と、一方その頃。
ここまでがオープニング(*‘ω‘ *)
あとがきもお読みください。
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――戦いを終えて。
「……おい。一つ質問だ、ルクシオ」
「なんだ?」
アグニスは、ふと俺にこう訊ねた。
「【加速】した俺の攻撃、どうやって捌いた?」――と。
それを問われて、俺はやや自嘲気味に笑った。
何故なら、今回の勝負は本当に『相性』が決め手になったのだから。俺はもう大丈夫だろうと思い、種明かしをすることにした。
「あぁ、俺のスキルは【変速】っていうのでさ。あらゆる物の速度を自在に操ることができるんだ」――と。
――【変速】スキル。
その名の通り、この力はあらゆる速度を変えることができる。
例えばアグニスが【加速】で素早く移動したように、俺もまたそれが可能。それに加えて、対象の動きを遅くすることだって、できてしまうのだ。
「へっ……なるほど、な」
だからこの力を使った戦闘は、ほとんど反則だと思う。
それこそ、卑怯者の謗りを受けても仕方ない。
そう思った。だが――。
「いいや……。それでも、負けは負け、だな」
アグニスは、どこか晴れやかにそう口にした。
「そう言ってもらえると、安心するよ」
俺が素直な心境を吐露すると、アグニスは少しだけニヤリと笑う。どうやら彼は貴族たちのように、勝負の後になって不平不満を口にする性格ではないようだった。そのことにも安堵しつつ、手を差し伸べる。
すると彼は、少し意外そうな顔をした。
「なんのつもりだ?」
「いや、単純にオッサンを認めただけだよ。スゲェ破壊力だったし、少しでも気を抜けば、俺の身体は木っ端微塵にされてただろうし」
「けっ……。そう言うなら、呼吸の一つくらい乱せっての」
彼はそう言うと、若干だがへそを曲げてしまった。
俺はそんな相手の態度に苦笑いしつつ、しかし正直に評価する。
「いいや、必死だったさ。だってアグニスのオッサンは、俺に――」
自然と、小さな笑みを浮かべながら。
「スキルを使わせた『二人目』の相手、だからな」――と。
間違いない。
この戦いでは、俺のスキル――【変速】を駆使しなければ、勝てなかった。
だから、心の底から相手を讃える。
そのつもりだったが、アグニスは呆れたように笑って言うのだった。
「馬鹿野郎。ルクシオ、テメェ――」
俺の手を取りながら。
「まだ、本気の欠片も出してなかっただろうが」――と。
◆
――一方その頃。
「説明をしてもらおうか。学園長よ」
「ひ、ひぃぃぃ……!?」
王城の謁見の間では、王都立学園の長が詰問を受けていた。
いいや、彼だけではない。その場にいるのはルクシオを追放した際、あの部屋にいた貴族全員であった。彼らは大量の汗を流しながら、視線を泳がせる。
そんな彼らに向かって、一人の男性――国王リガルドは告げた。
「ルクシオ・アインズワークは、我が直々に学園に招いた生徒である。類稀な才気に満ちた少年を何故、退学処分としたのか――その理由を述べよ」
訊かずとも分かっている。
しかし、あえて彼らの口から語らせよう。
そんなリガルドの思惑が見えた。だが、それを感じ取る余裕もなく――。
「あ、あの少年は素行に問題がありまして! 指導しても改善が見られなかったため、私どもから退学勧告を――」
そう語ったのは、一人の貴族。
しかし、彼の言葉を遮ってリガルドは声を張り上げた。
「何が素行不良か! ルクシオに救われたと、我に報告に上がった女生徒がいるぞ! 聞くところによれば、素行に問題があったのはむしろ貴族側ではないか!?」
「ひ、ひぃぃ!?」
その一喝に全員が震え上がる。
沈黙し、やがて誰もが気力を失ったように頭を垂れた。
そんな彼らに呆れたのか、国王は大きなため息をついて告げる。
「仕方ない。一度だけ、機会を与えようではないか」
まったく期待しない声色で。
「すぐに、ルクシオを探し出せ。そして連れ戻すのだ!」――と。
リガルド国王の情状酌量。
貴族たちはあまりに情けなく、涙目でそれに頷くのだった……。
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