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3/10

2.驚き。

応援よろしくです!

あとがきもd(*‘ω‘ *)!










「あ、あの……ルクシオさん……」

「どうしたんだ、ライス?」



 俺が剣の手入れをしていると、少年――ライスは控えめに声をかけてきた。ボサボサ髪で右目が隠れている彼は、汚れがなければ綺麗な顔をしているだろう。

 そんな彼はちらり、アグニスの方を見た。



「本当に、大丈夫なんですか……? だって――」

「相手はAランク冒険者だから、か?」

「…………はい」



 そして、そんなことを言うので先回り。

 ライスは頷いて、唇を噛んだ。



「アグニスには強力なスキルがあるんです。彼と戦った人はみんな、アグニスの姿が突然見えなくなった、って……」

「へぇ……? それは――」



 不安げな少年の言葉に反して、俺の口角は思わず上がる。

 だがあえて口に謝せず、一つ頷いてから笑顔でライスの頭を撫でた。



「大丈夫だ、ライス。これでも俺は、意外に強いからさ」――と。



 いまは、彼の不安を消すのが先決だと考えて。

 するとライスは一瞬だけ目を丸くして、すぐに顔を真っ赤にした。



「あ、あの……! 頑張ってください!」

「おう!」



 そんな少年に見送られる形で。

 俺は、冒険者ギルド内に造られた闘技場へと向かった。







「逃げずにきたみてぇだな?」

「そりゃあ、俺の方から提案したわけだしな」

「へっ……! そうやって逃げる奴なんざ、山のように見てきたさ」



 足を踏み入れると、金網内の広場――その中央にアグニスはいた。

 得物はない。その代わり、拳に特別な金属をはめている。なるほど、どうやらアグニスは『拳闘士』というものらしい。


 己の肉体のみを武器として、相手を打ちのめす戦士。

 今まで相手にしたことのない手合いに、俺は隠すことなく笑みを浮かべた。



「ずいぶんと、余裕だな」

「そうでもないさ。緊張で膝が震えてるよ」

「嘘つけ。そんな野郎が、笑えるわけがねぇ……」



 すると、アグニスもそのことに気付いたらしい。

 拳を構えると、ニヤリと笑った。

 そして――。



「行くぞォ! この、くそガキがァ!!」



 開始の合図もなく、一直線に突っ込んできた!



「おっ、と……!」



 そして、体格に見合わない速度で拳を振り下ろす。


 すると――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!


 頑丈な石造りの舞台。

 それを木っ端微塵に粉砕した。



「馬鹿みたいな力だな、おい……」



 俺はそれを回避し、距離を取ってからそう呟く。

 なるほど、たしかにAランク冒険者に相応しい身体能力だ。俺は心の内で素直に称賛の言葉を送りながら剣を抜き放ち、すぐに構える。

 この速度の攻撃なら、まだ目で追えるはずだ。


 そう思って、相手の出方をうかがっていると――。



「遅いんだよォ!!」



 瞬きの間に。

 アグニスの巨躯は俺の目の前に、あった。

 そして、その破壊力満点の拳を思い切り叩きつけて――。








 アグニスは、それこそルクシオを破壊するつもりで拳を振り下ろした。

 久々の逃げない獲物だ。だからこそ、渾身の力で叩き潰す。

 男はそう考えて、拳を振るったのだ。



「…………けっ」



 轟音鳴り響き。

 周囲には、粉砕した広場の破片が舞う。

 その最中でアグニスは静かに目を閉じてから、後方を振り返った。



 観衆も、何が起きたのか分からずにどよめく。

 誰もが、そこに立つ少年を見つめていた。



「おい、ガキ。どういうことだ……?」

「……さぁ、な。知りたかったら、倒せばいいだけだろう?」



 回避不可能のはずだった。

 絶対的な至近距離から、アグニスはルクシオに拳を振り下ろした。

 それなのに、視界が開けた先には――。



「オッサンのスキルは――【加速】ってところか」





 ――余裕綽々。

 剣を肩にかけて笑う、彼の姿があった。




 


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