1.ギルドでの騒動。
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さて、学園を追放されて数日後。
俺が向かったのは冒険者ギルドだった。
王都で生活するためには、それなりに金がかかる。普通の仕事を探しても良いのだけれど、いかんせん俺はそこまで器用な性格をしていなかった。
そんなわけで、ギルドに足を踏み入れると……。
「うわー……。すげぇ散らかってるな」
分かってはいたが、あまりにも雑然としていて苦笑してしまった。
酒場と併設されているためか、若干酒気も漂っている。一応は未成年なので、なるべくそれを嗅がないように気を付けながら、俺は受付へと向かった。
「はいはい。冒険者登録かな?」
「あぁ、頼む」
「なにか、参考になる経歴はあるかい?」
「ん、そうだな――」
そこにいた爺さんに訊ねられ、俺はふと考える。
追放――退学処分になった王都立学園の成績でも、経歴になるのだろうか。だがとりあえず、経歴っぽいのがそれしかないので、素直に申告することにした。
「えっと、王都立学園を退学、だな」
「あぁ、そうかい」
すると、爺さんは大きなため息をついて言う。
「残念だが、最下級のFランクからスタートだよ。王都立学園の退学や追放処分は、落第生以下の扱いになるからね」――と。
――どうしてまた、冒険者なんかに。
彼はそんな眼差しで俺を見た。
どうして、って。生活費が必要だから、だけど。
そう思ったが、俺はすぐに気持ちを切り替えるのだった。
元より肩書きだとか、そういったものに興味はない。FランクだとかSランクだとか、考えるだけで面倒くさくなってくる。
俺は一通りの説明を受けて、ギルドカードを受け取った。
「さて、と。そうなると次は、クエストを――ん?」
そして、さっそく仕事を受けようと思った時だ。
「この薄汚れた貧民め! 俺の金を盗ったのは、お前だろう!?」
「ち、違います! オレは、そんなこと――」
なにやら、言い争う声が聞こえてきたのは。
他の人々も、何事かと集まってきた。俺も気になったので、その中に混ざって詳しく様子をうかがうことにする。そうしていると、見えたのは継ぎ接ぎだらけの服を着た少年が、屈強な男に足蹴にされている姿だった。
「言い訳をするな! お前のような貧民は、それでないと生きていけないからな! どうせ手元にある金も全部、どこかから盗んだものだろう!?」
「違う……! これは、オレが頑張ってクエストで――」
「嘘を吐くな!!」
「うわ……!?」
少年の弁明も聞かず、一方的に攻撃する大男。
そんな二人の様子を見て、他の冒険者は小さな声でこう話していた。
「また、だ」――と。
その会話に、耳を傾ける。
「アグニスの野郎、また貧民から金を巻き上げてるぜ」
「最近、手当たり次第だな。止めた方が良いんじゃないのか?」
「やめとけ。アレでもアグニスは、Aランクの冒険者だぞ? それに下手に逆らったりしたら、こっちまで不要な揉め事を抱えそうだ」
ため息交じりに。
彼らの言葉を聞いてから、俺は足を踏み出した。そして――。
「おい、もっと金を出せ――――ん?」
「え……?」
俺はアグニスと呼ばれた冒険者と、倒れる少年の間に割って入る。
大男の振り下ろした拳を受け止めながら、呆然とする男の子に手を差し出した。
「大丈夫か?」
「え、あの――わっ!?」
困惑する少年を無理矢理引き起こして。
次に俺は、アグニスに向かってこう告げるのだった。
「……なぁ、オッサン。その金さ、返してやってくれねぇか?」
すると彼は、あからさまに不機嫌な表情でこう答える。
「金を返せ……? 馬鹿言うな、こいつの金は俺様のものだ」
「それ、証明できるのか? まさか、根拠もなしに言いがかりってわけじゃ、ないよな?」
「あぁん……?」
こちらの言葉に、アグニスはその強面を歪めた。
そして、ジッと俺を睨んで言うのだ。
「なんだ、テメェ。痛い目に遭いたい、ってのか?」――と。
俺はそれに対して怯むことはない。
ただ、背後の少年を守るように立って答えた。
「あぁ、だったら――」
剣を中程まで引き抜き、示しながら。
「これで、決着をつけないか?」――と。