10-1
雪姫は、微睡みのなかで、昔の記憶を辿っていた。
――もし、約束が果たされなかったのなら、私はあなたを殺すと伝えたはずです。
愚かな夫を生かしたあの日の記憶が蘇る。それが母性故の選択だったのか、人間らしく情けをかけただけなのかは分からない。
後に、我が子らも人生を無事に終えたことを知った。思い通りに事が進んだことへの評価、母としての安堵、それから子への羨望――ともかく、複雑な心境だったことには間違いない。
誰も彼も約束を忘却するというのに、結局人間を信じて生きていくしか道がないのだということを改めて理解する。人間を信じるのは、目的の達成のためだ。人間関係を構築すること、愛を育むことさえ、全ては終わりを迎えるために必要な労力。それは、一般的な人生をなぞらっているはずなのに、豊かさとは無縁で、空虚である。
――嗚呼、でも。あの子は違ったかもしれない。
何もかもが気に入らなかったし、一緒にいると苛立ちを覚えた。それなのに、ふとした時に一番に思い出すのは、あの子だった。
端から、あの子に何も期待はしていなかった。あの子に自分を救ってほしいとも思わない。それから裏切られたとて憎しみを抱くこともあるまい。
そうだと思っていた。そうだと思っていたから――。
長らく更新が途絶えていて申し訳なかったですが、少しだけ再開します。そろそろ終わりそう……?




