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ティーナの足の痛みの原因は、まるで分からなかった。
歩くと全体がズキズキと痛むのだと言うが、そうでないときは特に痛みを感じないのだという。マリーは取り敢えずではあるが、ハーブを調合した自作の痛み止め(塗り薬と飲み薬)を処方してティーナの様子を見ることにした。
ところで、ティーナについて、彼女は単身でここへ来たのだという。この町を経由して、親戚の住む町へと行きたいらしい。また、彼女は大陸から遥々海を超えて来たのだという。大きな船から小舟へと乗り継ぎ、途中の悪天候で小舟は呆気なく沈んでしまい、どうにかこうにか泳いであの岩場までたどり着いたそうだ。やっとの思いで陸に上がったはよいものの、いきなり足が激痛に襲われ動けなくなっていたのだということだ。外傷は見られなかったが、小舟の転覆時に怪我をしたのかもしれない。
「それにしても、親切な方とお会いできてよかったわ」
ティーナはマリーの家を気に入り、ソファのうえで寛いでいる。マリーが煎れたエルダーフラワーとレモンのハーブティーも口に合ったようで、既に二杯目を口にしている。
ティーナにとっては今日知り合った赤の他人の家に上がり込んでいるという状況であるが、ここまでまるで遠慮がないと逆に清々しいものである、とマリーは感じていた。
「ええと、ティーナ……ごめんなさいね。私、これから仕事に行かなければならなくて。一人にしても大丈夫かしら」
「ああ、どうか構わないでくださいな。私はここで大人しく休んでおりますから……それにしても、大変ねえ。こんな夕刻からお仕事だなんて」
「ええ。今流行りの病の患者が日に日に増えていくものだから、医者だけでなく薬師も患者を診ているのよ。それなのに、領主ときたら、人魚信仰ばかりで……」
あ、今の話は忘れて。私ったら疲れているんだわ……とマリーは付け加える。
人魚信仰に熱心な人々の気持ちを理解している一方で、やはり心のどこかでそれらに辟易しているというのが、どうもマリーの本心らしい。これではいけない、と思いながらも漏れてしまった言葉は行き場を失っていた。




