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少しばかり不思議な組み合わせの三人が、音子の家を訪れるに至ったには理由がある。
夕美と音子がゆのとまゆから意味深な言葉を告げられた後、二人がホールへと戻ったとき、彼女たちのその意味を知ることとなった。
何事もなかったかのように、不審者騒動は収束していたのだ。否、本当に何事もなかったことが事実となっている。
あからさまな異変に、夕美と音子はわざわざ誰かに不審者の件はどうなったの、と尋ねるような野暮なことはしなかった。学芸会が終わるまで二人は大人しく観劇することにして、放課後はゆのとまゆを待つことにした。下校時間さえ過ぎてしまえば、彼女たちは向こうから現れるのである。
案の定、現れた二人はまるで何事もなかったかのように、お待たせと挨拶をした。二人から丁寧に説明されることは期待できないと判断し、夕美から話を切り出すことにする。
「以前、伺いましたよね。吸血鬼事件は事件になってないって」
音子は何の話か分からないし、自身が何故この場にいるのかもあまり理解できていない。ただ、口を挟めるような状況でないことは音子にも分かったのである。
「あなた達が意図的に事件にしていないのだと、今日を以て確信しました。あなた達は――」
「ああ、待って!」
ここぞという台詞を遮ったのはまゆだった。まゆはそのまま続ける。
「ちょうどいい機会だわ。場所を変えて話しましょ。そうね、どこがいいかしら……やっぱりタルトの美味しいカフェ、ああでもジャンクなのもいいわね、ハンバーガーとポテトとか」
ふふふと嬉しそうに、場所の候補を挙げていく。夕美は完全に緊張の糸が切れてしまい、唖然としていた。
「でもダメね。やっぱり静かな個室がいいわ。あ、そうだ。ゆーみんと音子ちゃんのお宅にお邪魔するのはどうかしら」
突然、会話の矛先を向けられた夕美と音子はいったい何の話をしているのか理解できなかった。暫くキョトンとしていると、ゆのがフォローに入ってくれる。
「今のはまゆの冗談よ。気にすることはないわ。あなた達、あたし達の言うことを全て真に受けていたら疲れるわよ」
それをあなたが言うの、と夕美は思わず口にしそうになるが、これ以上本題から逸れることは阻止すべきだと判断し、呑み込むことにする。不本意ではあるが、納得しておくことにした。
「いいわ、私の家でよければ」
音子の突然の発言に、三人は驚き息を呑んでしまう。三人の様子に音子は、何かおかしなことでも言ってしまったのかしら……と落ち込んでしまう。夕美は慌ててそれを否定することに忙しい。
「音子ちゃん! ありがとう!」
まゆは音子の手を取り、ぶんぶんと上下に振る。夕美はその様子を少し羨ましく思いながらも、横で微妙な笑みを浮かべるに留めた。
「ありがたいけれど、本当に平気なの? 無理しなくて大丈夫なのよ」
まゆと音子を離しながら、ゆのは落ち着いたトーンで音子に尋ねる。音子は首を横に振る。
「大丈夫。問題ないわ」
こうして、三人は音子とともに音子の家を訪ねることになったのである。誠に奇妙な経緯であるが。




