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「音子さん、お帰りなさい」
和服に身を包んだ四十代ほどに見える女性が出迎える。少し気の強そうな顔立ちだ。音子は、慣れた様子で無表情に促していた。
音子の後ろには、夕美、ゆの、まゆが控えている。着物の女性に、音子の友達なのかどうかを尋ねられると、三人は何の躊躇もなく肯定した。
「まあ、珍しい! 皆さま、音子さんがいつもお世話になっております。ご案内しますから、どうぞ中へ」
女性はぱっと顔が明るくなるや否や、深々と礼をして微笑んでいた。意外にも、三人は歓迎されているらしい。
時刻は十八時を過ぎていて、高校生が友人の家を訪れる時間にしては少し遅い。それも、初めて訪れる家庭である。
「羽鳥さん、案内は私がしますから……」
和服の女性は羽鳥というらしい。羽鳥はそうですか……と答えると、ではお茶を持って伺いますと言い残し、台所と思われる方向へ向かおうとする。客人に挨拶することを忘れずに。
三人は音子に連れられて、広々とした長い廊下を歩いていくと、これまた広々とした居間に通される。音子の住む家は、歴史を感じられる旧い木造建築の平屋だった。先程、音子と三人を出迎えた羽鳥は、おそらく親族ではないのだろう。
「音子ちゃん、お嬢様だったのねえ」
座椅子に着席したところで、まゆが楽しそうに呟いた。
暫くして、羽鳥が訪れ、お茶とお菓子の用意を進めてくれる。和室には少し不釣り合いのティーセットに切り口の美しい抹茶のパウンドケーキと素朴なクッキーが綺麗に並べられる。ダージリンの香りが部屋に立ち込める。
羽鳥がお茶を用意している間に、三人の帰りについて音子は尋ねていた。
音子の家は、学校の最寄りのバス停からバスで二十分、到着したバス停からさらに徒歩で十五分ほどの場所に位置している。どうやら、最寄りの駅までは徒歩で四十分ほどかかるらしい。加えて、夜二十時以降になると、バスの本数は一時間に一本となってしまうらしい。羽鳥から、まずは家の人に連絡するようにと促される。夕美は既に自身の母親にメールをしていたらしく、まゆはゆのの家に泊まることにしたようだ。
お茶の用意が終わり、三人がそれぞれ家の人に連絡した確認が取れると、羽鳥はごゆっくり、と言い残してすぐに立ち去った。
「それにしても、まさか本当に音子ちゃんのお家に来られるとは思わなかったわ」
ゆのは紅茶を一口ほど飲み、ティーカップをソーサーへと戻す。一息ついたところで、そんな感想を口にした。




