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独と薬  作者: R.藤間
学芸会まで
11/84

2-04

 なるほどね、とゆのは返答していた。隣のまゆは、夕美が王子役を務めることに興味津々のようで、随分とはしゃいでいる。確かに、身長が高く線の細い彼女なら王子役は映えるであろう、とゆのも納得していた。

「それにしても、よく音子ちゃんが人魚姫役を引き受けたわね」

 まゆは夕美をじっと見つめてそう呟いた。あの無口で自己主張の薄い音子が、進んで役を取るとは思えない。であれば、それは十中八九、目の前の夕美が何か関与しているのだろう……というところまで、まゆはお見通しのようである。

 まゆとゆのが音子を特別な目で見ていることは間違いない。夕美の入学初日に、彼女たちから確かに不穏な言葉を夕美は聞いたのだ。

 音子に気を付けろ、とはいったいどういう意味なのか。夕美は彼女たちと日常的に接するようになったものの、未だにそれは分からないし、問い質すのも野暮だと思っていた。おそらく、尋ねたところで彼女たちは答えないだろうから。

 ただ、夕美は彼女たちから忠告を受けたところで、音子と距離を置くこともなく、相も変わらず音子と親密になろうと努力しているところだ。

 ――あたしたちの忠告も、あなたには何の意味もなかったようね。

 以前、ゆのから言われた言葉だ。夕美の様子を見かねてか、珍しく彼女たちから音子の話題が出たのだった。

 夕美には夕美の事情がある。第三者の忠告をばか正直に受けとるほど、夕美は純粋ではなかった。

 そう伝えれば、まゆはふふと笑った。彼女たちにも事情はあるのだろう。

 とはいえ、彼女たちは夕美が忠告に耳を貸さないからといって、強制的に何かを執行するということはなかった。無用なことは言わないが、それ以上口を挟むわけでもない。彼女たちは忠告をするだけして、その後の夕美の判断は至極どうでもよい……といったことなのかもしれない。

 だから、今回も夕美は学芸会の事情について、彼女たちに丁寧に説明することもなかった。音子が何故人魚姫役を受けることになったのかも。

 それに、二人のことだ。役決めの詳細など、とっくに筒抜けなのであろう。わざわざ夕美が説明する必要もない。

「予鈴だわ」

 昼休み終了の五分前を告げる鐘が鳴った。

 廊下にいた生徒たちはその鐘の音に一斉に反応した。ゆのとまゆも例外ではない。特に、第三学年のフロアは第二学年とは異なるから、後五分で自身の教室まで戻る必要がある。

 別れの挨拶代わりに、二人から「学芸会、頑張ってね」と受けた。

 彼女たちの言うところの()()()というものは、複雑にいろいろとあるように夕美は感じていた。

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