閑話:ルシファーとの会話~生徒会室にて~①
ロロが嬉々としてスイーツに取り掛かっている様子を見ながら、ユーリは今日の昼のルシファーとの会話を思い出していた。
ルシファーはユーリとロロが通う学園の生徒会長である。間もなく彼は学園を卒業し、その後は文官として王宮務めをするという。
「ユーリ、やっぱり次期生徒会長になる気はないかい?」
ルシファーはユーリにもう何度目になるかわからない質問をする。
「ありません」
もう何度も繰り返されたことなので、ユーリも淡々と受け答えする。
「大半の生徒が貴族であるこの学園で、その最高位集団である生徒会の生徒会長になんてなれるわけがありません。僕は平民ですよ?」
「でも魔力ランクSだ。優秀だし、見た目もかっこいい」
「魔力ランクSの生徒は数は少ないけれど他にもいるでしょう。第一、見た目は関係ありません」
「そんなことはないぞ」
ルシファーは楽しそうに否定する。
「見た目もその人間の魅力の一端を担っているのは間違いない。ならば、大切な要素だ」
(…それはそうかもしれない)
ルシファーは貴族の中でも最高位のこの国の三大公爵の一つグラフィス家の長男だ。
生徒会長をするくらいなので身分だけでなく頭脳明晰、人からの人望もある。
燃えるような赤髪は意志の強さを表しているようで、威風堂々とした佇まいは貫禄すら感じる。
何よりも彼は美丈夫であった。
婚約者もいなく、特定の彼女も作らない彼は学園の中でもとびきり人気があった。
身分や性格を抜きにしても、ルシファーならその見た目だけでもかなり有利に事を運べるだろう。
「仕方ない。生徒会長は他の奴に頼むとするか」
「よろしくお願いします」
「じゃあ、ユーリは卒業したら俺の側近にならないか?」
「そちらもお断りします」
これも何度目の誘いかわからない。ユーリは内心ため息をつきながら断る。
「グラフィス家の嫡男なんですから、平民の僕ではなく、貴族のご子息から優秀な方を選んでくださいよ」
「俺は身分よりもその人物の優秀さで側近は選びたい。ユーリなら合格だよ」
「お断りします」
「グラフィス家は嫌い?」
「そういうことではありません」
淡々と断っていたら、ルシファーは「ああ、そうか」と呟いた。
「ユーリはグラフィス家が嫌いなんじゃなくて、ドラフォンが嫌いなのだな」
と爆弾を投げてくる。
いきなりの予想していなかった方面からの言葉を投げつけられて、ユーリは返答に詰まった。
それをさも面白そうにみているルシファー。
「…そんなことはありません」
「返答が遅いぞ、ユーリ」
クスクスと笑いだしてしまう。
「ドラフォンはユーリの大切なロロ嬢の恋人だからな。仕方ないか」
ニヤリと人の悪い笑顔を浮かべる。
「だからといって、ずっと恋人でいれるかはまた別の問題だ」