カフェ
学園帰りに町の外れにある大きな公園へと向かう。
(そういえば最近、学園帰りに寄り道をしていなかった)
ロロがドラフォンと付き合いだし、学園帰りにドラフォン達と帰るようになり別々となってからユーリは寄り道をしなくなった。
もともとは王都に住んだこともなかったロロがあれこれ興味をもち、それに付き合うという形だったのだ。
カフェは公園の中にあるということなので、散歩しながら歩く。
「ケーキが出来上がるまで30分?」
散歩してようやく目当てのカフェにたどり着き席についた。
ロロが目当ての今日まで限定のケーキは人気があって今は在庫がなく、慌てて作っているところだという。
申し訳なさそうにそう告げる店員を前に、しかしロロは嬉し気だ。
「良かったね、ユーリ」
ニコニコとユーリの顔を見る。
何が言いたいのか大体予想ついているユーリは面白そうに微笑み返す。
「30分たてば出来立てのケーキが食べられるのよ! ラッキーだわ!!」
(ああ、もう、ロロのこういう考え方が好きだ)
「そうだね。30分楽しみに待つ時間も増える」
「そうよ、ユーリ。ケーキがどんなものか、味はどうなのか予想したりすれば楽しいわ」
ロロは上機嫌でワクワクと話している。
待つから残念ではないのだ。30分待つ、イコール、30分で出来立てに出会える幸運と捕らえるのだ。
ユーリは彼女の前向きに物事を捕えようとするところがとても好きだった。
ちょっと気落ちしそうなことがあっても、彼女の明るい物の見方が気持ちを救ってくれる。
待つ時間の30分も彼女といればあっという間に過ぎた。
「素敵!!」
30分待って持ってこられたケーキは見事だった。
見た目はチョコレートのドームだ。チョコレートのドームの周りは細かな飴細工で覆われていた。
そのドームに溶けた熱々のホワイトチョコレートソースをかけると、ドームのチョコレートの壁が壊れ、中からは綺麗な黄金色のフレンチトーストとチーズケーキ、バニラアイスが出てきた。
その演出にロロはうっとりとしていた。
「綺麗ね、ユーリ!」
大興奮だ。
しかもロロの好きなチョコレートが主役級のスイーツだ。
「食べすぎ注意、だからね。夕食食べられなかったらまたルーク様がうるさいから」
「もう、わかってるわ。せっかくのスイーツなんだから、余計なこと言わないで」
やんわりと釘をさすと、ロロは不満げに口を尖らせた。
ユーリにもフォークとスプーンを渡す。
「だから気を付けて、これは二人で食べようって決めたんだから」
そう言い、ロロは目を輝かせながら皿を覗き込むのだった。
二人で一緒に食べると話して一皿を頼んだが、ユーリは先に手を出さずにロロを観察する。
(どれから手をつける? フレンチトーストか? いや、ロロはまずチョコレートを楽しみたいからソースをたっぷりつけてアイスを一口か?)
スイーツを楽しむ前に目の前の少女が何から食べるのか想像するのを楽しんでいた。
「やっぱり、溶ける前にまず食べてしまわないとね」
やがてそうつぶやいたロロがそおっとチョコレートソースをアイスにかけてバニラを最初に口に入れた時、ユーリは人知れず満足だった。
(ほら、僕の思ったとおり。ロロの考え方なんて手に取るようにわかる)