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いしづみの園

「ここは、訪れる子にとって天国にも地獄にもなる託児所。いしづみの園」


 保育士だと名乗るこの男は、初めて会った賽の河原で私にそう言った。


 17歳の誕生日に私は自ら命を絶った。死んだら何も無いと思っていたのに私は今、いしづみの園に居る。もしかしたら自殺に失敗して病室で悪夢でも見ているのかもしれない。

 小さな子供達ばかりのこの託児所で私は窓の外ばかり見て過ごす。河原では哀れなえい児や胎児が石を積んでいる。


「可愛そうに」


 石が崩れては積んで、崩れては積んで……


「瑠璃ちゃんはそう思うの?もしかしたらただの暇潰しかもしれないよ。外には遊具も無いし出来る遊びなんて限られているから」


 保育士はおやつのクッキーを子供達に配り終えるとそう言って微笑んだ。

 ここは、親より先に亡くなった子供達が集う賽の河原のいしづみの園。毎日沢山の子供達が訪れては去って行く。

 保育士の話しによると、いしづみの園は賽の河原に数多ある託児所の一つにすぎないらしい。殆どの子供達は1ヶ月あまりでこの園を巣立つ。私はここに来てもう1年が経とうとしていた。


「お姉ちゃんクッキー食べないの?」


 翔ちゃんは私より少し前にいしづみのメンバーに加わった。ブランド物の子供服に襟足の伸びた髪型、エクボの可愛い4歳の男の子だ。


「またお姉ちゃんのおやつを狙ってるなー」


 私はこの園で一番翔ちゃんが大好きだ。長く居る子供達の中でこの子は一番人懐っこくて唯一同じ時代に生まれた親友。この子の事は園に来る前から知っている。


 1年以上この園に居るのは翔ちゃんの他に後6人。


 大好きな翔ちゃんとは対称的で取っ付きにくいイガグリ坊主昭和9年生まれの軍国少年の(ヒロシ)


 一度喋り始めると止まらない自称大和撫子の大正ロマンガール雪子とその妹で金魚の糞の秋枝。


 食べ物を見ると目の色が変わる糞餓鬼、生まれた時代が悪かった太助。


 無口で一言も喋らない弥生。


 後はずっとベビーベッドで寝ている1歳前後の大人しい赤ちゃん。

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