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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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89話 旅立てない一日

 リツミやサナリィ達はマリーと一緒に行動する事になり、一度、王都へ戻ることにした。

 何故なら、アオや亮太の後を追うのは馬車がなければ難しいからであり、シイナやリツミ等を守りきれる力が自分に不足している事を理解しているからである。

 この場にアオだけでも残っていたのなら、亮太の後を追う事は可能だったかも知れないが、そのアオは、全速力で亮太の後を追いかけて行き、自分達の足では追い付くことも出来ないからであった。

 もしかしたら、自分だけでも追い掛ければどうにかなったかも知れないが、そのような事をした場合、アオはおろか、亮太の怒りに触れる可能性も示唆される。


 マリーはリツミとサナリィ、シイナの三人に状況を改めて説明し、王都へ戻り、奴隷解放の話をすると、三人は現状を踏まえ、仕方がなさそうに了承し、来た道を戻るのだった。


――――――――――


 その頃、俺たちは町のギルドへ足を運び、情報収集していた。


「じゃあ、この町も魔物の襲撃があったという事ですか?」


『あぁ。だが、運が良く、元王国騎士団のとか言っていた二人がいてな、その二人が殆ど倒してくれたんだよ。あの二人が居なかったら、この町は滅んでいたかも知れないな』


 俺が聞いたところで、自分より格下ランクの冒険者だから相手にしてもらえなさそうなので、代わりに女性のアオが、色仕掛けして冒険者に聴いており、その間に俺は仕留めた魔物を換金して、資金を得ることにして、オーガの死骸をスマホから取り出しギルド職員を驚かせていたのだった。


 情報を収集し、アオは俺の元へと戻り、仕入れた情報を報告すると、俺は苦笑いしながら話の意味を理解するのだった。


「あの2人が逃避行した町がここで、そのタイミングで魔物が襲撃してきたんだな。まぁ、運が良かった。相手にとっては運が悪かった……と言う事だな」


 ギルドは酒場と一緒になっており、空いているテーブルの椅子に腰掛けながら、アオが聞いてきた話をまとめ、俺がまとめた内容を口にする。

 アオは俺の前の席に座り、顔色を窺う。

 再び怒られるのか、少しだけ緊張した顔をしていた。


「それで……この後はどうするんですか?」


「そうだな、装備品を揃えて……お前の依頼を終わらせちまおう。そんで、勇者って奴を見に行かないか?」


 依頼……アオは、王に依頼された書状を届ける命令を受けており、俺はそれを片付けると言っているのである。

 それを聞いて、アオは嬉しそうに返事をし、2人はギルドをあとにするのだった。

 道具屋でポーション等を購入し、武具屋でアオの防具を購入。

 防具は邪魔くさいという理由で、アオが何度も促しても俺は購入することはなかった。

 だが、本当の理由は、購入する金が勿体無いからであり、いざという時のために、王都を出る前に購入していた鉄の盾だけは持っていた。

 スマホで近隣に敵がいないか確認するが、あの二人が襲ってきた魔物を排除してくれたお陰で、周辺に魔物の存在は無かったである。

 町に辿り着く前に出会ったオーガは、二人が撃ち漏らした物と推測し、アオと俺はくだらない話をしながら町を後にしようとしたのだが、門番にあと一日だけ留まるよう言われてしまう。


『と、言うことなんだ。済まないが、魔物がいつ襲ってくるか分からない今、ランクが低いお前達でも、貴重な戦力……あと一日だけ留まってくれないか』


 門番に王からの命を承けている事をアオが説明するのだが、逆に門番は喜び引き止めてしまう。王の命を承けているという事は、それなりの実力を秘めているという事だから……。

 俺は溜め息を吐き、明日ならば町から出してくれるのかと確認し、確約を得て、仕方がなくもう一日だけ町に留まることにするのだった。

 安い宿屋で理由を説明するのだが、タダで泊めてくれることはなく、昨日支払ったGを再び請求され、渋々俺は支払い、アオは申し訳なさそうな顔をしながら俺の後ろを着いていく。

 部屋に入り、俺は椅子に腰掛け溜め息を吐いて天井を眺め、アオは少し離れた場所の椅子に腰掛けて身体を小さくし、怯えた目をして床を見つめる。


「クッソーッ。そっちの都合なのに、金は俺ら持ちかよ! 納得できねー」


 俺は天井に向かって悔しさを露わにすると、アオはそれに怯えた素振りを見せる。

 だが、俺の視野にアオの顔が入っていなかったため、怯えている事に気が付くことはなく、アオは再び顔を青褪めさせるのだった。


「でも……まぁ、仕方がないか。一度襲われているんだもんなぁ」


 襲われた町の事を思い出したのか、俺が諦めたような声を出すと、アオはホッと息を吐き、胸を撫で下ろす。

 俺の機嫌を損ねて、再び置いて行かれるのは嫌だから。

 

「あ、あのぉ……。リョータ様……」


「ん?」


「わ、私の責任で……」


 その言葉に俺は深く溜め息を吐き、アオの側に寄る。


「お前、何か勘違いしていないか?」


「か、勘違い……ですか?」


「あぁ。ここで足止めを食らっているのはお前の責任じゃないだろ」


「ですが……」


 改めて俺は深く溜め息を吐き、アオに言う。


「全ての原因は魔王って奴に有る。そして、国王が勝手にお前へ命令した事だ。お前は俺の『所有物』だろ? なのに、勝手に命令しやがって……。あん畜生が〜!!」


 苦笑いをしながらアオの頭を撫でると、アオはホッと息を撫で下ろし、顔を綻ばせた。

 宿屋に留まっていても仕方がないので、2人は町を探索する事にして受け付けに説明をし、再びギルドへ向かった。

 ギルドは酒場と一緒になっているため賑わっており、屈強そうな戦士や魔法使い等が昼間から酒を食らっていた。


「さっきも思ったが、相変わらずだな……ここは」


 苦笑いをしながら俺が言うと、アオはその言葉に同意し、辺りを見渡す。


「リョータ様、あの女は何処へ行かれたのでしょうか?」


 ふと、疑問に思ったのか、アオが質問をする。


「分からん。だが、馬車の中には食料や金がかなり有ったからな……。何処か別の町へ行って、優雅な暮らしをしているのかも知れないな」


「しかし、Gは無限ではありませんよ?」


「その日暮らしの生活はできるだろ? あいつは魔法使いだったんだから、仕事に困る事はない。何処かで家を購入し、自分に身あった仲間と小遣い稼ぎしているだろうさ。でも、王の指令に関しては放っておくことが出来ないだろうがね」


 その言葉に納得し、アオは空いている席を確保して俺を呼び、飲み物をオーダーする。

 できれば無駄な出費を避けたいが、町で一番情報が集まる場所はここであり、時間を潰すにも最適な場所でもある。

 ギルドの酒場では、俺たちよりランクが上の冒険者が自分の凄さを競い合うかの様に話ていた。

 皆が武勇伝を話している中、俺は片肘を突きながらスマホを弄っており、周囲の話を全く聞いておらず、アオは俺の行動を見逃さないよう注意を払っていると、酒を飲み過ぎたのか、ランクE5の冒険者がバランスを崩して俺に酒をかけてしまう。


『ウィィ……。悪いな、にいちゃん。だが、そんなランクの奴が、こんな場所に座っているのが悪いんだぜ』


 ニヤニヤ笑いながら酔っ払った冒険者が言う。眠たそうな顔をしていた俺だったが、弄っていたスマホを仕舞い、立ち上がる。

 ランクE5の冒険者は背が高いだけではなく、かなり筋肉があり、二人が並んでいると、大人と子供のように見える。


「……おいおい、オッサン……。ただ座っていた俺が悪いって言うのは、ちょーっとおかしくねーか? それに、俺の服がオメーの酒で汚れちまったじゃねーか……。どうしてくれるんだ?」


『――あぁん? 何を言って……』


 顔は笑っているように思えるが、頬は引き攣っており、アオは被害を受けないため、ゆっくりと俺の側から離れて避難をする。

 冒険者は軽い言葉で謝罪をしたが、『若造、命が欲しけりゃ……』と、余計な一言を発し、笑顔で冒険者の顔面をぶっ飛ばす。

 これでも手加減をしているのだが、力の差が激しく、冒険者は思いっきり吹っ飛び、他のテーブルを次々と破壊してしまう。

 何が起きたのか……皆が俺を見つめ、驚き戸惑う。


「取り敢えず、服の洗濯代を払ってもらおうか。おら、立てよ。オッサン」


 そう言いながらゆっくりと、先ほど殴った冒険者の側へ歩いて行く。

 アオは『ご愁傷様』と、頭の中で思いながらその光景を端っこの席で眺めていた。

 冒険者は顔を左右に振りながら、殴られた場所を押さえながら怒り心頭で立ち上がり、俺を睨みつけた。

 それを見て、周りがリング場のように囲み、煽り立てる。しかし、アオは呆れた表情をしながら隅っこで様子を窺う。


「オッサン、謝罪と賠償を要求するぜ。迷惑料は100Gで勘弁してやるよ」


 俺は無表情で言うと、その仲間達が敵意をむき出しにして立ち上がる。

 これはヤバイと思い、アオは冒険者達を止めようとし、囲んでいる人混みを掻き分けながら、俺の側へ行こうとしていた。

 だが、アオが辿り着いた時には既に、仲間の冒険者達は床に倒れ込んでおり、アオは難しい顔をして天を仰ぐ。


「おい、俺の服を弁償しろよ……」


 酒をかけた冒険者の頭を踏み付け、まるで悪人のような顔をしながら言う。そして、足を退けて冒険者の頭を左手で掴み、右手でアイアンクローして再びGを要求した。

 慌ててアオが止めようとするが、冒険者は許しを乞いながらGの入った袋を差し出すと、俺はそれを奪う様に受け取るのだった。


「や、やり過ぎですよ〜〜」


 俺の裾を掴みながら困った顔をするアオ。


「馬鹿を言うな。こっちは服を汚されたんだぞ。クリーニング代は貰わんと納得できないだろ……魔法だって魔力を消費するんだし」


「そ、そうかも知れませんが……」


 そう言ってアオは周囲に目をやると、俺は皆に注目されていることに気が付く。


「なに見てやがる!」


 椅子を蹴っ飛ばして威嚇すると、皆は慌てて目をそらした。

 だが、踏ん反り返って椅子に座る俺だったが、皆がヒソヒソと自分の話をしているため、居心地が悪くなり、ギルドの酒場を後にして、宿屋へ戻る。

 アオはギルドの酒場で勘定をしてから俺の後を追いかけるのだった。

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