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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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80話 襲撃

 城を後にして宿屋へ戻るとアオが旅の支度を始めていた。


「荷物は全て買い揃えたか?」


「はい。基本は食料ですが、剣を数本購入しました。基本的に半ミスリルの武器になりますけど、洞窟内での戦闘を考えてショートソードを二本と、ダガーも三本ほど購入しております。後はお姉さん達の装備類を整えて馬車を購入しました。お姉さんが二頭馬車なら大丈夫とのことだったので……。ですが、本当に旅立って構わないのですか? いきなり連絡をもらった時は驚きましたが……」


「構わねーよ。さっさと行かねーと面倒に巻き込まれちまう。俺はのんびりとした生活を送りたいんだよ」


「それは知っておりますが……。判りました、アオはリョータ様のご指示に従います!」


 まるで気合いを入れるように返事をするアオ。

 城での出来事があった後、直ぐに城を出てアオのスマホに連絡した。

 そしてアオに最低限購入する物を選定させ、旅の支度をさせたのだ。

 お城での出来事は後で説明すると言い残し……。


 宿の会計を済ませ、マリーに黙って王都の出口へ向かうのだが、出口付近にラスクがニヤつきながら俺達を待ち構えていた。


「あら……私を置いて何処へ行こうとしているのかしら?」


「お前も王の親書を届ける役目があるんじゃないのか」


「別に期限を切られている訳じゃないわ。だから近くへ寄った時にでも行けば良いんじゃないの?」


 俺と同じ事を言うラスク。本当に何を考えているのか分からない。そして、面倒毎は尽きる事なくやって来る。

 ラスクを含め、六人で旅をするのかとうんざりしていると、王都の出入り口に腕を組んで怒った顔をしているマリーを見つけ、更にうんざりさせられた。


「私を置いて行かないで下さいよ!!」


 プンスカ怒りながら勝手に馬車へ乗り込み始め、結局のところ七人で行動する事になってしまうのだった。


 御者役を行っている「お姉さん」ことリツミ。

 目指す場所は無いのだが取り敢えず先へ進むことにし王都を出る。

 遠ざかっていく王都を見ながら干渉にふけているマリー。なにか思う事があるのだろう。自分が生活をしていた城を、見えなくなるまで見つめていたのだった。


 あての無い旅が再び始まる。

 だが、自分と奴隷の三人を除く他の三人は王の親書を届ける役目を担っており、それを片付ける必要が有る。

 だが、俺には関係ない話。

 しかし、アオの依頼だけは遂行させる必要があるので、先ずは辺境の地にあると言われているボスレシクスへと向かう事にした。


「アオ、お前が依頼されたボスレシクスって、どんなところだ?」


「……申し訳ありません。名前は聞いた事があるのですが、場所が遠い程度にしか分からず、何一つ詳しい事は全く判りません。役に立てないアオをお許し下さい」


「誰にだってそういう事はあるさ。だから気にする必要はない。マリーは何か知っているか?」


「ん〜……寒いと言う話を聞いた事がある程度で、それ以上は分かりません。遠い国なので交流が少なすぎるんですよね」


 少しだけ残念そうな顔して全員がマリーを見る。「王族で情報が少ないってどう言う事だよ!」と、ツッコミたい気持ちを抑えながら荷台に寝転がる。


 天井は幌で隠れているので荷台は日陰となっており、かなり過ごしやすい。

 しかし、リツミ一人に馬車を任せる訳にはいかないのでサナリィとシイナの二人にも練習させ、交代で馬車を走らせる。

 俺も人に任せてばかりでは駄目だと思い、馬車の動かし方をリツミから教わる。そういう事は奴隷に任せておけば良いとアオは言うのだが、この三人がいつまでも一緒にいる訳でもない。

 アオが目指す場所はスマホで検索したら直ぐに分かり、デコボコした道を走らせて行くのだが、自分は厄介ごとに愛されているのか……リツミが馬車を急停車させる。

 馬車の中で寝そべっていた俺は吹っ飛ばされるように転がり、頭を思いっきりぶつける。

 頭を摩りながら周りを見渡すと、リツミを除く皆が同じように頭を摩りながら状況確認をしていた。


「どうしたのですか? リツミさん」


 流石ドワーフのサナリィである。身体がそれなりに頑丈らしく、ダメージが少なかったようで、直ぐに何が起きたのか確認を始めていた。


「か、囲まれてる!」


 恐怖に怯えるリツミの声。

 一体、何に囲まれているというのだろう。そんな事を思いながら幌の外を見る。すると、数十匹のゴブリンの集団に囲まれていた。

 しかもゴブリンの目は通常よりもギラついており、凶暴化しているように見える。だが、所詮はゴブリン。俺の敵では無い。

 勢いよくアオが飛び出し、持っていた剣でゴブリンを薙ぎ払って行く。

 ゴブリンの数に三人は荷台の中で身を寄せ合いながら怯えており、出遅れた俺とマリーも、アオの後に続いてゴブリンを倒していく。

 ゴブリンと俺達の戦力差は圧倒的で、ものの数分でゴブリン達は死骸となり、スマホに収納される。


「――思っていたより呆気なく終わったわね……」


 今までこれ程の魔物を相手にしたことが無かったマリー。自分が強くなっている事を実感しているのか、そう呟きながらも自分の手を見つめていたのだった。


「リョータ様、少し違和感を抱いたのですが……」


 耳をピクピク動かしながらアオが言う。


「ん? どうした?」


「いえ、本来であればアオの耳に魔物や動物の足音が聞こえて来るのですが、今回は聞こえなかったんです」


「――え?」


「あれだけのゴブリンであれば、アオの耳が聞き逃すはずがありません。ですが、今さっきのゴブリン達は全く聞こえなかった……」


「馬車の中にいて、聞き逃したんじゃないのか?」


「無い……とは、言い切れませんが、あの数ですよ? ちょっと考え難い気が……」


「…………」


 アオの言いたい事は理解できる。今までアオが何物かの存在に聞き逃した事はない。

 アオには頭の片隅に入れておくと言い、再び馬車を走らせるのだが……納得が出来ていないアオは瞑想をするかのように黙り、目を瞑っていた。

 それから一時間ほど馬車を走らせたところで休憩のため馬車を止め、リツミ達は馬を休ませる。

 俺は馬車からおり、暇潰し程度にスマホで魔物がいないか確認すると、俺達の周りは赤く染まっており、慌てて武器を取り出した。

 俺の動きに違和感を抱いたのか、瞑想していたはずのアオも立ち上がって武器を取り出し、急いで装備して外に出る。


「敵ですか! リョータ様」


 俺よりも速く外に出たアオ。右手には剣を持ち、左手には銃を握っていた。

 続けて俺も外に出て周りを見渡すが、敵の姿を確認する事ができず、再びスマホの画面を見る。画面上には目標に対し、魔物が周りを包んでいる状態で、道だけは魔物の印が無いだけであった。


「……確かに……前後の通りにいないが、周りは森林地帯……。マリー! 警戒を怠るな! リツミにシイナは馬車に戻れ! サナリィは二人を守るんだ」


 突然の指示に驚きをみせる四人。

 マリーは慌てて腰に下げていた剣を抜き周りを警戒し、何が起きているのか理解出来ていない三人は馬車の方へ戻っていく。

 馬は緊迫した空気に気が付いているらしく少し荒ぶり、俺はアオの言葉を思い出す。


「耳に音の反応が無い……か……。待ち伏せをしていれば音は聞こえないよな」


 剣の柄を握りながら辺りを警戒するアオ。アオがいればそんなに恐れる必要はない。

 敵も警戒しているのか、それとも日が暮れてから襲ってくるのか分からない状態で、神経だけが擦り減ってくる状態であり、精神的に疲れてくる。

 寝込みに襲われるほど面倒な事はない。

 ならばこちらから先に動くしかない。

 そう決めて、スマホから手榴弾を取り出してピン抜き、敵が隠れていそうな場所へ投げ、アオに耳を塞ぐよう指示をする。

 手榴弾の爆発音はそれなりに大きく、アオが持っている最大の武器である耳が使い物になっては困るためだ。

 投げた先で爆発する手榴弾。

 このような武器を見た事もない魔物が風圧で吹っ飛ばされ姿を現す。


「さて、お客さんのおでましだ……」


 もはや隠れている必要がなくなった魔物達。一斉に俺達を囲む様に動き出す。が、相手が悪い。

 襲い掛かってくる魔物は俺が油断していると思っているのか、手に持っている武器で攻撃を仕掛けるが、目にも止まらない速さで吹っ飛ばされ、冷めた目で倒れている魔物の頭を踏み潰して息の根を止める。

 この程度の相手であれば、武器を使う必要すらないのが俺である。

 アオも武器を使わず格闘でなるべく相手を仕留めていき、二人だけで魔物を殲滅する。


「ハァハァ、思っていた以上に魔物がいましたね……」


 少し肩で息をしているアオが呟く。


「もしかしたら魔王が復活した事も関係性があるかも知れないな」


「魔王が……ですか?」


「あぁ、前にリザネオークが現れた事を覚えてるか?」


「リザネ……オークですか? 沢山の魔物を見たので何とも……」


 セリカが一緒にいた頃の話であり、アオがまだ弱かったときの話である。忘れていたとしても仕方が無いだろう。


「攻撃をしても直ぐに傷が治るオークが現れたことがあったんだよ。後でギルドのオッサンに聞いたら、そいつはあの辺りでは現れないらしい」


 少し考える素振りを見せるアオだったが、考えても仕方がないと思ったらしく、少し困った顔して「お姉さん達の所へ行ってきます」と言い、リツミやサナリィ達の所へと行くのであった。


「おい、何で仕事をしないんだよ。魔法使い」


 馬車の中で座りながら俺とアオの会話を聞いていたラスクに言うと、「だって、数が多いんだもん。私が手伝ったら足手まといになっちゃうでしょ?」と笑いながら返してくる。

 多分、アオもこの会話が聞こえていると思うが、何の反応も示さないのでそう思っているのだろう。

 何を言っても無駄な気がして、馬の様子をみに行くことし、深い溜め息と共に、日が暮れ始めている空を見上げたのだった。

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