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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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76話 新たな敵

 全ては想定通りに事は運んで行き、俺は三人のチームを全滅させてやるのだった。

 そして、地面を這いつくばっていたイースの背中に足を乗せ踏みつけると、イースは「グェッ!!」と声を上げ力尽きるように武器を手放して横たわる。


「これで理解したか? この間は威勢の良い事を言ってくれたが、地面に這いつくばっているのはどっちだ? そんで、地面を舐めさせられて美味しいのか? 俺なら嫌だけどな」


 仲間の冒険者は「く、クソッ!」と、悔しがりながら地面を叩く。

 俺は更に言葉で追い討ちをかけた。


「俺が魔物だったらお前らは死んでいるって事だよな。俺は降参したら? って、せっかく忠告してやったのに、それでも実力差も解らずに襲い掛かってくる。ハッキリ言って馬鹿の極みだね。それに、アンデットは敵意を剥き出しにすることは一部を除いてあり得ない。基本的には多少の雰囲気を出してくる程度だ。それでキリト達は油断したんだろうな。それに、他の場所で同じような奴が出てきたらお前らどうするのさ? 俺はたった一人なのに、全員が這いつくばってるんだぜ? もう、全滅じゃん。三人に対して師匠らしい事は全くすることはなかったが、もう一度だけ言ってやる。仲間が逃げろと言ったのなら、起死回生の策があっても逃げるんだ。できうる限り、全員が生き残れる方法を考えながら逃げろ。そのことを守れないなのら、今すぐにでも死ね。あそこで殺意をむき出しにしている奴が直ぐに殺ってくれるぜ?」


 見学席で目を細めながら殺意を全開にして、何時でも襲える準備ができているアオ。

 うっすら笑みを見せているが、アオは俺の言う事しか聞かないことをしっているため、誰も何も言わない。

 自分の身体をジャンプ台に使われたくないらしく、アオの周りに少しだけスペースを空けて座ってみていた。


 一応、城の兵士が俺の勝利を宣言し、マリーの見ている前で恥ずかしい姿を見せた冒険者達は、城の治癒術士に連れて行かれ別室へと向かう。

 俺は皆の元へ戻ると、「相変わらず情け容赦が無いやつだな」と、ニタニタと笑いながらアルフォンスが言い、俺の頭をワシャワシャと撫でるというよりぐちゃぐちゃにする。

 しかし、俺は嫌がる素振りを見せる事はせず揉みくちゃにされていると、アルフォンスの動きが止まった。


「ヨワッチ、アオの主人に無礼を働くのですか? そうなら今すぐに死ぬと良いですよ。アオがこの場で処分してあげます」


 満面の笑みでアオが腰に装備していたスミス&ウェッソンM500を取り出し、アルフォンスに銃口を向けようとする。

 その威力は強大で、アルフォンスの頭を破裂させるほどの威力がある。

 慌ててアルフォンスは手を離し万歳のポーズをして顔を引き攣らせるのであった。


「で、これからどうするの?」


 冒険者達をボコボコにしてそれで終わりという訳ではない。

 これから兵法と言うのを教えなければならないのであり、それを理解させる必要がある。特に、強い敵と遭遇する時はとても大事な事である。


 暫くして謁見の間に集められる俺達と、その他の冒険者達。あの親善試合だが、王も観覧していたしていたらしく、冒険者達の連携を褒めていたらしいのだが、それを全て躱し、しかも一人で冒険者達全員を全滅させた俺に驚愕していたらしい。


 大臣に『奴は化け物か!』と、改めて確認していたらしいが、大臣が答えられるはずがない。

 まさか大人数の冒険者を息も切らさず、殆ど動く事もなく冒険者たちをボコボコにしてしまったのだから、驚くに決まっている。

 これがリーグやアル、そしてアオでも時間が掛かるというのに、俺の場合は時間もかけずに疲れた様子も見せていない。

 それどころか実力を隠したままだとはアオ達以外は誰も知るよしはなかった。

 この親善試合、マリーの兄である皇子たちも観ていたらしく、アオ曰く良からぬ事を考えている話をしていたようで、この土地から離れた方が良いかもしれないと進言してくる。

 アオがこのような事を言うのは珍しく、少しだけ考えて今は頭の片隅にでも置いておくことにしておいた。

 翌朝、アオと何もせずに寄り添いながらゆっくりと寝ていると、ドアが叩かれる音がしてアオと俺は目を覚ます。

 アオがパジャマ姿でドアを開けると、そこには侍女が立っておりアオに一礼をした。


「ムニャ……。どうしたのですか侍女様……」


 昔のくせが抜けていないのか、アオは誰にでも「様」をつける。

 侍女は少し恥ずかしそうに微笑み、用件を述べた。


「おはようございます。お二方を陛下がお呼びになっております。早く準備を……」


「……え? 陛下がですか……。あ、はい! 承知しました。リョータ様、陛下が我々を呼んでいるそうですよ! 起きてください」


 寝ているところを起こされるのは好きな奴はおらず「……う、う〜ん……うるさい。ブチ殺すぞ! と言っておけ……俺は眠いんだ」と言い、再び布団の中へ潜り込もうとしたら、先ほどまでアオに優しい笑みを見せていた侍女がズカズカ部屋に入り、鬼の形相をして「起きろって言ってるでしょ! 駄目亭主!!」と、言い放ち、布団を捲りあげてしまう。

 言い返そうとしたが、まるで親が怒っているように感じてしまい、「はい……」と、一言返事をして、俺は陥落して起きてしまうのだった……。


 無理矢理叩き起こされて連れてこられた俺。

 それをアオから聞いて、機嫌が悪いことに気が付いている全員。

 触らぬ神に祟り無しといった気持ちで、誰も俺に話しかける事なく謁見の間まで通される。

 謁見の間では、王が王座に座って何かを喋っているが、興味の無いことに対して聞く気になれない俺。

 欠伸をしながらスマホを取り出しこれからの予定を考える事にした。

 全く話を聞いていない事に気が付いている王は、頬をヒクヒクさせながらも話を続けていく。

 アオは少し可哀想に思ったのか、「リョータ様、お行儀が……」と、困った顔をしながら小さい声で窘めてきたのだが、直ぐに険しい表情へ変わり周りを見渡し始める。

 俺の【危険察知】能力にも反応があり、ただ事ではないことを教えてくれるが、足下からの警戒反応あり、この場から逃げた方が良いと誰かが囁く声が聞こえた気がする。

 しかし、逃げるにも時間的に遅く、どうする事も出来ない状態で床を見つめ、その時が来るのを待つしかなかった。


 周りが不審がって俺達を見ていると、アオが「皆さん動かないで!! 動くと危険です!」と、突如叫びだす。

 すると地面が揺れ始め、色々なものが崩れ始める。


「やっぱりね……」


 グラリとしたので直ぐに地震だと気が付いたのだが、地震大国で生まれ育った俺でも経験したことのない揺れ。

 だが、危険が迫っている事を先に知らせているので意外にも慌てるようなことはなく、皆はアオに少しだけ感謝しているようだった。

 アオの動物的直感と、スキルで大他所の見当はついており、地震大国で育った経験がここで活きる。


「地震か……。兵士の皆は慌てることなく状況確認をして陛下に報告! これから第二波がやってくるので町の人にもそう指示を出すように! 先ずは火の元を確認し、安全な場所へ誘導するように!」


 珍しく俺がまともな事を言い、大きな声で指示を出す。

 だが、皆はポカーンとしてそんな俺を見つめている。

 俺が冷静なのがそんなに不思議なのか? いやいや、そんな事よりも、やらねばならない事を優先させねばならない。


「何をボサッとしている! 早く指示通りに動くんだ。次がやってくるぞ!」


 再び叫ぶと、全員が「ハッ」とした顔をして動き始める。俺は震源地がどこなのか、スマホで調べられないか確認を始めると、王が頭を抱え叫び「ま、魔王が復活したのじゃ! これは魔王の仕業に違いない!! 魔王が……!!」等と叫び始める。

 はっきり言って老害はウザい。

 俺は逃げ道を作るために窓を開け、テラスに出られるようにしたのだが……。


「そ、空が……暗い?」


 スマホに表示されている時間は午前11時を過ぎた辺りだ。それに、今日は晴天だったはず。

 まるでゲリラ豪雨でもやって来たかのように空は真っ暗になっており、台風前のように風が強く吹き荒れていた。


「リョ、リョータ様!」


 アオが声を上げ、空に指を差す。

 指が示す先には先日の武闘会に現れた奴に似ており、慌ててスマホを取り出し魔法アプリをタッチした。

 俺の魔力は普通の人とは桁違いだから、弱い初期魔法でも強い力を発揮する。なので、初期魔法の【アイスーボール】を課金し、残高数百万のうち100Gが引かれ、更に強めの【メガアイスア】を課金した。

 これは15,000もするのでもったいなく感じるが、現状では聖剣が手元に有るわけではないため仕方がない事だった。

 次いでに【無詠唱】のスキルを10万Gで課金し、言葉一つで魔法を放つことが出来るようになる。

 本来であれば魔法は詠唱が必要であり、魔力を込め魔法を解き放つのだ。ラスクは詠唱を短くし、威力を弱めながらも連発できるようにしていたが、【無詠唱】があれば威力は自分で調整でき、魔法を放つことができるのだ。

 何故、氷魔法にしたかというと、大抵は炎系を覚えるやつが多い。だが、常識に囚われたくない俺は、氷魔法を覚える事にした。


 空に浮かんでいた奴は、俺達の方へ向かって来るので俺達はスマホから剣を取り出して構える。

 突風と共に中へ入ってきた奴は、胸に傷を負っており、少し苛ついた顔をしていた。


「ま、魔族!! や、やはり魔王が復活したということか!」


 剣を構えているアルフォンスが、少し怯えながら説明するかの如く教えてくれる。スマホで魔族について調べると、数千年前から人と争っていたらしく、魔族の強さは桁違いに強い。

 それに抗うために冒険者が誕生したらしい。

 室内に入ってきた魔族に対して険しい顔しながら皆は剣を構えたり、槍や杖を構えしたりしていた。


「陛下を安全な所へ!!」


 近衛兵の誰かが叫び王は運び出されていく。


『クックック……。この城の連中はこの程度の強さか……』


 魔族が笑いながら空に浮かんでおり、魔王が復活した事を自慢気に叫びながら言う。

 しかし、胸にある切り傷。

 これは先日、俺が聖剣で魔法による攻撃を斬り裂いた時にできたものだろう。

 その状態からみて、戦闘が出来るような身体ではなく、ただ報告するためだけにやって来たようにしかみえないし、魔族と言うだけで皆は恐れ戦くようだ。

 兵士は王を守るのに必死に前を固め、大臣達は逃げ惑う。

 イース達もこの場にいるため、陣形を固めて攻撃に備えている。

 そんな姿を見ていると、魔族って強い奴ばかりなのか? と、勘違いしそうになるのだが……。俺の仲間達は全く恐怖という物を感じている様子はなかった。

 何故なら、一番怖いのは可愛い顔をした天使様(アオ)だからである。

 その天使様は普段は優しく、誰に対しても敬語で喋り、他人思いで優しいのだが……主人に対して無礼を働く輩には天罰を与えようとする。

 その天使様が呆れた顔をして腰に装備していたスミス&ウェッソンM500で羽根を撃ち、魔族は喋っている最中に落下していく。

 そして、魔族はテラスへ不時着して態勢を整え立ち上がろうとしたのだが、突然頭を蹴りつけられ地面に叩き付けられる。

 起き上がろうとした瞬間には頭を踏みつけられ「ガタガタ煩いんですよ。リョータ様がお怪我をしたらどうするおつもりなんですか」と、可愛い声で言い、胸元に数発の弾丸を浴びせる。


 それを見ていた兵士達はポカーンと口を開いており、何が起きたのか理解するのに時間が掛かっていたのだったが、俺は呆れて物も言えなかったのあった。

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