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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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61話 愛と結晶

 シイナを連れて皆の元へ戻ると、アオとサナリィはホッとした顔をする。


「練習は真面目にやる事! リョータ様のご厚意に感謝しなさい!」


「はい! アオ様、愚かだった私にもう一度だけ機会を与えてくれまして感謝いたします!」


 シイナの変わりように二人は目を丸くして驚いた顔をしアオは俺の顔を見て「スマホ?」と口パクで言う。

 俺は顔を引き攣らせながら頷くと、アオは難しい顔をして何かを考える素振りを見せたが、直ぐに元に戻り「では、行動で示しなさい。リョータ様はお疲れなのです」と言う。


「かしこまりました……」


 アオの言葉でシイナは立ち上がり、急いで宿屋へ向かって行く。何が何だかさっぱり解らないサナリィ。「人って変わるものなんだ……」と呟き、その言葉を聞いたアオは「全てはリョータ様のお優しさがシイナを変えたのですよ」と、まるでどこぞの宗教団体が言いそうな言葉を吐くのだった。


 シイナが戻り宿屋を用意したと言う。俺達はその宿屋へ案内され、部屋へ案内される。アオは中に入るなり、【洗浄】の魔法を唱え俺の身体を綺麗にする。

 その後、自分にも唱えて椅子に座り、スマホを手にして何かを考える素振りを見せる。


「私のスマホにはリョータ様のような機能が付いていないのですよね?」


(付いていたら厄介だろう)と、思いながら「そうだよ」と答え、アオはホッとした顔をする。


「これはそれ程恐ろしい神器という訳だったのですね……」


 スマホを手にしながらアオが言うので、頭を撫でて「理解してくれたのなら、無くさないようにしてくれよ」というと、一瞬だけアオは脅えた顔をする。


「あ、アオのこの気持ちは本物……なのでしょうか……」


「どういう意味だ?」


「あ、アオは……奴隷という立場なのに、リョータ様を愛してしまっております……ですが、リョータ様のスマホは、人の感情を操ってしまう事が出来てしまうほどの神器……」


「大丈夫だよ。アオの気持ちは本物だ。この機能が付いたのはつい先ほどだ。アップデートしたから付いた機能なんだよ。アオが俺と一緒に居た時間と、愛し合った時間は本物だよ。だから余りこの機能を使いたくないんだよ。アオが前に言ったことが有るだろ? 金があるのだから能力を上げてしまえばって……。そう言うのも危険だから、なるべく地図アプリなどしか使わないんだよ」


 そう言うと、アオはホッとした顔をし、嬉しそうな表情に変わる。


「この気持ちは本物……アオとリョータ様の過ごした時間は本物の時間なのですね……。リョータ様が良心的な方で、アオ達は幸せな奴隷です! ……ところでリョータ様、今は二人きりですが……」


 顔を赤くしながらアオは言う。


「そうだな。二人きりだな。随分と長い間、邪魔者がいたな」


 アオは立ち上がり、俺の隣に座って身体を預ける。


「だが、邪魔って言うのは、本当にいつやって来るのか分かったものではない。それを排除したら、本当に二人きりなんだけどな」


 そう言うと、アオは目を見開き急いで部屋から出て行く。それからどれ程時間が流れたのか分からない。ほんの数分だったかも知れないし、数秒だったのかも知れない。息を切らせたアオが獣の目をしてこちらを見つめる姿は、獲物を見つけたときの目に見え、自分はその獲物なのだと悟る。

 後はアオが俺の顔をペロペロと舐め、身体をベッドに押し倒し、服をゆっくりと脱がせていく。

 生まれたままの姿は少しだけ肌寒く、俺の鳥肌が立ち始める事に気が付いたアオは、シーツを俺の身体に被せ「寒くはありませんか?」と質問してきた。


「暖めてくれるのだろ?」


 恥ずかしそうな顔してアオは頷き、獲物を襲い始めたのだった。


 俺を満足させ、アオは隣で寝息を立てている……が、俺の身体を冷やさないよう身体の上に乗っかっており、トイレに行くことも出来ない。

 しかし、起こす訳には可哀想なので、どうしようか考えているとアオが目を覚ます。


「……催したのですか?」


「まぁね」


「アオが全てお飲み致します……」


 恥ずかしそうな顔して態勢を変えアオは先程までアオの中に入っていた物を咥える。別にそのような事をする必要は無い。


 だが「アオ、そこまで……」と言うが、アオは離そうとせず早くして欲しいのか舌でペロペロし始める。仕方無くゆっくり出していくと、アオはゴクゴクと飲み干し、最後の一滴迄飲んだのだった。


「アオ、そこまでしなくて良いんだぞ」


「リョータ様の物すべてがアオにはご馳走なのです。それが排泄物であろうとも、アオはそれを食べ、飲み干す事ができます……」


「奴隷を止めて一緒に暮らすというのは?」


 唐突に聞いてみると、アオは「え?」と一言だけ発し動かなくなる。


「俺の嫁になる気はないかと聞いているだけど?」


「あ、アオが……お嫁様? ご、御冗談でございますよね? だって、アオは奴隷で、獣人……それに、それに……本当の名前も解らないのですよ!」


「だから? 獣人で奴隷だった。本当の名前がわからないと言うが、呼び名なんてどうでも良くないか? 一緒に愛を語らい、一緒に生活するのに何の意味が有る? その内、『おい』とか、『アンタ』なんて呼び合うかもしれないんだぞ? それなのに呼び名に拘る意味が解らない。それに、俺はアオと剣を交えてみたい」


 そこまで言うと、アオはポロポロと涙を流し始め、俺に飛び付いた。


「なりたいです! リョータ様のお嫁様になりたいです! 成れたら死んでも構いません!!」


 いやいや、新婚早々死なれたら困る。


「じゃあ、朝になったら契約解除しよう。やり方は知っているか?」


「い、一応……。奴隷商館へ行けば解除出来ると聞いておりますが……で、でも、アオはリョータ様と一緒に要られるだけで幸せなのに……」


 ポロポロと泣きながら嬉しそうに涙を流すのだった。

 翌朝、俺達は出かけてくると一言だけ残し、宿屋から奴隷商館へ向かう。サナリィとシイナはアルフォンスにでも訓練を受けるよう命じ、邪魔が入らないうちにと、そさくさと出掛けたのだ。

 一番厄介そうなのはマリーであり、この町では有名人と化している。側に要られると、色々な人から拝まれるようなポーズで頭を下げる次第であり、通行の邪魔になってしまうのだ。


 奴隷商館に入り、奴隷解除して結婚すると話す。アオは恥ずかしそうな顔をしており、全ての説明は俺がやる羽目となったが、そんな事はどうでも良く、金さえ払えば解除し、解放される説明を受けた。5,000Gも支払い、アオの奴隷と言う名の呪いは解除され、晴れて自由の身となった。

 他の奴隷を売りつけられる前に商館から出ようとすると、アオの目に一人の女声が飛び込んで来たらしく、俺に縋るようにお願いをしてきた。


「リョータ様! お姉さんです!! お姉さんがここにおります!」


「お姉さんて……アオの恩人だった?」


「はい!」


 その目は真剣そのもの。アオが初めて俺にお願いをした事を思い出し、仕方無くその奴隷を見せて貰うことにした。


「この奴隷は?」


「ギャリゾンですか? 貴族に売られたらしいですが、大切な皿を割ったとかで再び売り出されたばかりです。昨日仕入れました」


 アオの目が怒りに震えているのが解り、頭を撫でる。


「じゃあ、そのお姉さんを買うよ」


 前から約束していた事だったから、別に悔いはない。それにドラゴンを倒した時のお金が半分近く残っており、生活するにも全然問題はない。


 鎖を解かれ、俺の前に連れて来られたギャリゾン。その目は憔悴しきっており、何故、自分がこの場所にいるのか分かっていないようだった。そして、相変わらずダサい名前なので、もう少しまともな名前を考えなければと考えていると、アオがギャリゾンに抱き着き声を上げて泣き始めてしまった。

 仕方が無いのでさっさと契約を済ませ、俺達は商館から出ていく。もちろん、名前変更するための金も支払い、新しい名前を与えたのは言うまでもない。


 商館から出て、アオは「お姉さん! アオです!! 覚えていらっしゃいますか!」と、声を掛ける……だが、お姉さんは首を立てに振ることも横に振ることもなく、冷めた目でアオを見つめていたのだった。


「取り敢えず、先ずは服を選ぼう。えっと、動きやすそうな服を選んでくれて構いませんよ。アオ、手伝ってあげて」


「もちろんです!」


 全てに裏切られたという表情をしている『リツミ』。あの時のアオを思い出すのは難しいのか、それとも待遇が違うからなのか、一瞬だけアオに憎悪を向けた。


「気のせいじゃ……ないな。相当な仕打ちを受けたのだろう……」


 店の前で座りながら二人を待っていると、暇を持て余しているラスクがやってきた。


「お前も服を観に来たのか?」


「そういうリョータはお気に入りの奴隷に服を与えるの?」


「……アオは奴隷じゃなくなったよ」


 するとラスクは「まぁ!」と、驚いた顔をする。店に入るのを止め俺の隣に座った。


「なんだよ」


「理由を教えてもらおうかと思って」


「好きだから嫁になれって言ったんだ。それだけだよ。で、奴隷を解放し、俺達は新婚生活を始めるという訳さ」


「へ〜。それはおめでとう。でも、パーティは解散するとかしないのでしょ?」


「今のところはね。奴隷が三人もいるし、面倒臭い仕事もある。簡単にどこかで暮らすと言うのは今のところ難しいだろう」


「新しい奴隷を買ったんだ? あの子がよく許したわね」


「アオが望んだからだ。じゃなきゃ買う必要がないだろ」


 スマホは既にアップデートされており、リツミのステータスを確認すると、少しばかりスキルが付いていたが、全て家庭用スキルであり、戦闘に向かない子だということが分かる。年齢は17歳で、知力がそれなりに高い。

 だが、見た限りでは食事を満足に与えられている様には思えず、痩せ干せていて、いつ倒れてもおかしくなさそうな気配を醸し出しているのと、先程も見せた目である。

 自分に対する忠誠心が0と言うのは頂けないが、これは信頼を勝ち取るしかなさそうだと言う事で今は我慢する。


「けど、姫様が知ったら発狂しちゃうかもよ? リョータは姫様に愛されているのだから」


 実はそうなのである。マリーのステータスを見たら、恋愛感情が80近くあり、俺は「流行病だと良いな」で、片付けてしまったのだ。

 アオに関しては実際に愛しているし、俺のマイエンジェルだから問題はない。それに、アオがそこらの雑魚に負けることは絶対ありえないので、心配はしていない。

 だが、発狂した奴程面倒な輩はいない。別にマリーの事は嫌いではないが、相手はまだ14歳お子様だ。


 一応言っておかねばと思い「14歳の少女に手を出すほど俺は落ちぶれてないよ」と、ラスクに言うと、ラスクは驚いた顔をする。


「リョータ、貴方は本当に知らないの? それとも相手が姫様だから言っているわけ?」


「はぁ? 何を言っているんだ。お前は……」


「本当に知らないのね。良いわ教えてあげる……。この世界では、12歳から大人なのよ。だから、12歳から結婚ができてしまうの。と、言う事は、私は行き遅れの魔法使いという訳……だから貴方のような凄腕冒険者と一緒に行動を共にしているのよ」


 リョータが離してくれないから魔法使いを続けているという体裁を保つため、一緒にいる……と、言う訳であるとラスクは言う。

 普通の男なら放って置かないと思うバディをしていると思うのだけれどね……。ラスク身体って。


 店から出てきた二人。リツミはボン・キュッ・ボンな格好をしております。何故でしょう……アオは物凄く嬉しそうな顔をして出てきた。


「アオ? なんだよ、その服装は……目立つだろ」


「お姉さんはこれくらいじゃないといけないんですよ! リョータ様、アオの見立ては変ですか?」


 首を横にコテンと傾げ、不思議そうな顔してこちらを見る。俺の嫁は何を考えているのか不安という言葉を覚えさせる。

 横に座っていたラスクも顔を引き攣らせながら立ち上がり、逃げる様に立ち去っていく。

 俺は深い溜め息と共にもう一度店の中に入って行き、新しく服を選び直したのだった。

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