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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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6話 魔物にやられたら

 夕方になりギルドへ換金しに戻ると、何やらギルドの中が騒がしい。


「何かあったんですか?」


 通りかかった女性の店員に話しかけて確認する。別に女性だから話しかけたのじゃないのだからね!


 女性店員は「あぁ、ここ最近、オークが増えたようなの。それで新しい討伐依頼が掲示されてあの騒ぎよ」と、少し呆れた声で女性店員さんが説明してくれる。

 ここのギルドには男性店員が少なく、殆ど女性の店員しかいない。

 お気に入りの店員さんは休みなのか、今日は朝から見かけていないため残念。その店員とは一度も話したことがないので、出来るだけ早く話しかけてお近づきになりたい。


 本日の換金を終えて、皆が群がっている掲示板がある方へ向かうと、イルスとカルキダが近くに居たので声をかける事にした。

 一度会話しているし、イルスに至っては助けてあげたくらいだから印象は悪くないだろう。


「よう、イルスにカルキダ。そっちの調子はどうだ?」


 同い年という事もあるし、敬語を使って話すと他人行儀みたいなので気さくに話しかけてみる。


「あ、リョータ! こっちはまずまずだよ。リョータはどうなの?」


 知り合いに会えて嬉しいのか、イケメンスマイルで応対してくるイルス。

 先ほど換金して受け取った報酬の袋を見せると、イルスは少し驚いた顔をした。

 今日はゴブリンだけを集中的に狙い、15匹ほど仕留め1,950Gを稼いだのだ。

 だが、本来ならばもう少し稼げたのだろうが、焦りは禁物なのでペース配分を考えながら戦ったのだ。


「流石リョータだね。僕らは二人でやっているけれど、リョータ一人に敵わないよ」


 イルスは少し恥ずかしそうにして頭を掻きながら言うが、カルキダはこちらの話に興味の無さそうな顔をしてそっぽを向いている。どうもカルキダは自分に対して良い印象が無いようだ。何か悪いことをしたわけでもないのに……。


「で、新しく掲示された依頼ってどんな内容だ?」


 カルキダに聞いても答えてくれなさそうなのでイルスに新しい依頼内容の詳細を質問してみると、「森の方にオークの群れが出没したとの報告があったようだね。

 たぶん新しくオークの集落でもできたんじゃないかな。それでオークの討伐が新しく発行されたようだ。

 でも、僕達ではオークと戦うには経験不足だ。なるべく森の方へ近寄らないようにしないといかないね」と、笑いながら詳細を説明してくれた。

 基本的にオークは森に生息しているらしく、林までは来ないらしい。

 なので、林から先へ行かなければオークと出くわす事が殆どと言って良いほど少ない……と、イルスは補足説明もしてくれる。


「ふ~ん。なるほどね……。まぁ、今日はそれなりに稼いだから奢ってやるよ。この間、奢ってもらったし」


 折角イルスと仲良くなった事だし、親睦を深めるため食事くらい奢っても良いだろうと、二人を誘う。

 しかし、イルスは申し訳なさそうな顔をして謝罪してくる。


「ごめん、リョータ。今日の誘いは遠慮させて貰うよ。本当だったらリョータと色々話をしたかったのだけれど、これから馬車の護衛を行うことになっているんだ」


 両手を合わせて「ごめんなさい」のポーズをするイルス。カルキダは冷たい視線を自分に向けていた。


「そうか……それじゃあ、仕方がないな。あまり無理をするなよ」


「あぁ。ありがとう。リョータも頑張ってね!」


 イケメンスマイルで言い、イルスとカルキダはその場から立ち去って行くのだが、カルキダは一言も言葉を発する事は無かった。とにかく自分を避けている事は明白で、汚い物を見るかのような目をしているのは納得が出来ないが、イルスが良い奴なので我慢する事にておこう。

 しかし、イルスは馬車の護衛と言っていた。馬車の護衛がどういう内容なのか分からないため確認してみると、複数の冒険者で輸送馬車を護衛する仕事のようだ。金額は一人頭1,000Gは貰えるらしい。

 だが、隣町まで行く事となれば、それなりに日数が掛かるのではないだろうか。

 護衛任務にも金額の幅があるようで、イルス達は自分の実力に見合った内容の仕事だと思って受けたのだと思うが、その仕事が本当に割に合う仕事なのかは微妙なところだろう。他に何か旨い話があれば別だろうが……。

 イルス達が行ってしまい、話し相手になる人がいないためカウンター席に座ってエールを注文する。どうしてなのだろうか……女性店員にお願いをしているはずなのに、バルバスがエールを運んでくる。むさいオッサンより、女性店員の方が断然良い。

 だが、そのような事は口が裂けても言えない。

 言えるはずがない。


「なぁ、リョータ。ちょっとばかりお願いが有あるんだが……」


 エールを口に含んでいる途中にバルバスが眉間に皺を寄せて話し掛けてくる。

 正直、何か変な事でもしたのかと思ってしまうが、別に変なことはしていない……はず。


「どうしたんです? 改まって……」


 口に含んだエールを飲み込んで言うと、バルバスは光っている頭をボリボリ掻きながら困った声を出す。


「いやーな、最近ビッグヴェルが出没したって言う話が入ってきてんだ……。悪いんだが、討伐に行ってくれないか?」


「ヴェル……ですよね? 掲示板にはそんな依頼は無かったけど……それに、個人的に依頼するような奴じゃないですよね? 俺以外にも駆け出しの冒険者がいるじゃないですか」


 ヴェル如きに何故困っているのだろうか。謎である。


「いやな、本当はイルスとカルキダの二人に依頼をしようか迷っていたんだが、あの二人では少し荷が重い相手なんだよ。これはリョータが適任だと思っての依頼だ」


「う~ん……。まぁ……仕方が無いですね。バルバスさんのお願いを断るわけにもいかないし」


 話からすると、ただのヴェルではないらしい。そして、バルバスは人の実力をちゃんと見極めているようだ。


「本当に悪いな。場所は後で渡すよ」


 仕事を受けるとバルバスは嬉しそうな顔して新しいエールを持ってくる。どうやらこれはバルバスの奢りらしい。


「それはそうと、少し教えて貰いたいことがあるんですけど」


「なんだ?」


「魔法って教えて貰うことは可能なんですか?」


「う~ん、可能って言えば可能だが……ギルドでは魔法を教えてはいない。教えるのは基礎となる武器の扱い方だけだ」


 腕を組みながらバルバスが言う。このあたりに出てくる魔物では、魔法などあまり必要ないのかもしれない。


「じゃあ、魔法を教えて貰うにはどうしたら良いんですか?」


「そうだな……基本的に魔法は魔法使いに教えて貰うしかないな。いや……待てよ、少しGが掛かるが神殿で習うことが可能だったはずだ。まぁ、手っ取り早く魔法を覚えたいのなら、魔法使いに習った方が早いと思うぞ」


 魔法使いに教えてもらえと言うが、そのような輩がいたのなら既に教えてもらっている。一応、町にある神殿で教えてもらえるらしいので、後で確認すれば良いだろう。

 奢ってもらったエールを一気に飲み干し、お金を払ってギルドから出て行く。もちろんバルバスから討伐用のビッグヴェルの出没したと言われている場所の地図を用意してもらったのは言うまでもない。


 アスミカ亭へ戻り、女将さんのライフリに宿の延長をお願いした。

 先日、食事をしながら聞いたのだが、リッツさんとライフリは夫婦らしく、二人でアスミカ亭を切り盛りしている。そして、ライフリはドワーフという種族らしく、幼い容姿はドワーフの特有らしい。

 しかも、年齢は自分よりも上で本気で驚いた。

 もし外見で惚れたとなれば、リッツはロリコン確定なのだが、ライフリの方が惚れてしまい、押しかけて結婚をしたらしい。

 なんとも裏山死刑な話だが幼女趣味はない。


「延長料は175Gだよ。――はい、丁度だね。食事は今食べるかい?」


「あぁ、お願いします。今日は食堂でお願いできますか?」


 アスミカ亭は、食堂と一緒に宿屋がある作りとなっており、サービスの一環として部屋まで持ってきてくれる。食堂は思っていたよりも空いていたため適当な席に座った。

 食事を待っている間、暇だったので周囲を見渡す。

 食事している奴は皆、肉をメインとした料理を食べていた。

 ライフリさんにこの店の食事について聞くと、どうやらこの店は肉料理がメインらしい。だから朝から肉料理が出てくるわけだ。

 ちなみにお願いをすれば違うものを出してくれるのだが、しない限りは肉をメインとした料理になるらしい。

 夕方は冒険者の利用客が多く、それなりに繁盛していて、宿屋は副業のように扱っているようだ。


「お待ちどおさん。どうだい、冒険者稼業の方は」


「それなりですよ。こうしてアスミカ亭の食事が食べられるだけで幸せです」


 もう一度言う、別に幼女趣味などない。

 ライフリの見た目は、小学生と勘違いしてもおかしくはない。

 幾らドワーフだからとしても、皆がライフリみたいに幼い容姿ではないらしいが、それでも中学生から高校生へ入学するか、しないかまでの容姿らしい。(この情報は小林がメールで教えてくれた)


「嬉しいこと言ってくれるねぇ。だけど、リョータは誰かとパーティを組まないのかい?」


 どうやらライフリは暇らしく、前の席に座り話を続ける。喋り方は大人なのに、見た目が幼女(アレ)なので大人ぶっている小学生だけにしか見えない。

 本人には言えないけれど……。


「いたら良いなって思うんですけど……モグモグ……。この町に来たのはこの間で、知り合いなんて居ませんからね」


「え? ギルドの掲示板に仲間の募集とか貼られて無かったのかい? 依頼のとこに貼られているだろうに?」


「――そうなんですか? それは知らなかったなぁ……モグモグ」


「まぁ、1人でやるのも良いけど、仲間が居た方が楽だし楽しいだろ? それに、生存率も高くなる。アタシとしても、リョータみたいな客に死なれたくないからね。せめてアシスターか奴隷の一人でも連れて歩きなよ」


 ん? 何かとんでもない事を言ったように聞こえ、聞き返す。


「――え? 今、何て言いました?」


「はぁ? アシスターか奴隷って言ったんだけど?」


 奴隷が居るというのはスマホのwikiに書かれていたので知っていたが、アシスターと言う言葉は初めて聞く言葉である。

 そいつは一体何者なのだろう。


「あの、アシスターっていったい何ですか?」


 その質問にライフリは呆れた顔をした。

 そんなにおかしな質問をしたのだろうか……。


「リョータ、アンタ……本当に冒険者なんだよね? 本当にアシスターも知らないのかい?」


「あはは、田舎者なんで面目ない……」


 笑いながら言うと、ライフリは小さく溜め息を吐いてから丁寧に教えてくれる。

 アシスターとは冒険者登録なのだが、戦闘に不向きな人の事を言い、戦闘ができる冒険者の荷物持ちや、サポート等をしてくれる職業だそうだ。

 そして、奴隷についてもライフリは教えてくれる。

 奴隷とは、wikiに書いてあった通りだが、この国では奴隷の扱いはかなり寛大らしく、そこまで差別を受けることは無いらしい。

 後は主人の扱いや、法律で扱い方が変わるとの事だった。因みに冒険者登録も可能だ。


「ハァ……。まぁ、死なないように気を付けなよ。宿の方は期間が過ぎたら荷物とか捨ててしまうからね!」


 呆れた顔をしてライフリは仕事に戻っていく。アシスターについて細かく知るには、ギルドで聞いてみた方が良さそうだ。


 翌日になり、バルバスに言われた依頼を片付けるため、バルバスから受け取った地図に示されている場所へと向かう。

 昨晩、スマホと地図の生合成を確認したが、バルバスから貰った地図は、随分と大雑把過ぎて殆ど当てにならない。

 仕方がないので地図に記載されている場所に近い場所へスマホを観ながら、ヴェルを探す事にして町の外へ向かう。


 地図に記された場所は1時間ほど歩いた所にあり、スマホで辺りにいる猛獣や魔物の存在を確認すると、複数の赤い獣印が一つの青い人型を追い掛けていた。


「おいおい、イルスみたいな奴がこの辺りにいるのかよ……」


 呆れながら青い人型が向かっている場所へ向かうと、女性が必死の形相で走っており、その後ろにはゴブリンが数匹追い掛けている状態だった。

 こちらに気が付いた女性は、こちらへ方向転換して自分の後ろへ回り込むと、ゴブリン達は女性に追いついた事で笑みを浮かべ、武器を構えて襲い掛かる準備をしていた。後ろで自分を盾にしている女性は、魔法使いと言うには軽装に見え、冒険者と言うには到底感じられない。

 また、彼女はナイフ等の武器すら持っておらず、何故このような危険な場所にいるのか不思議に思ってしまう。


「た、助けて!」


 この様な状態で助けるなと言うのは難しい話であり、ゴブリン達(こいつら)はどう考えても彼女を襲うつもりであり、自分にも刃を向けるつもりだ。

 しかし、人を前面に押し出すのは止めて欲しい。

 彼女にはもう少し後ろへ下がるように指示すると、ゴブリンは自分に向かって襲い掛かってくる。

 この間からゴブリンと戦闘をしているため、この程度の数なら倒すのは楽勝だ。

 ゴブリンの攻撃を躱すと同時に剣でゴブリンの胴を切り裂き、ゴブリンの集団を片付ける事に成功する。

 剣に付いたゴブリンの血を払い、鞘に収めて振り返る。後ろへ下がる様に指示したのだが、逃げろとは一言も言っていない。

 だが、後ろに居るはずの女性を探すのだが、その姿はない。他に魔物が居たのかと思い、スマホで周囲を確認してみると、青い人型は町のある方へ移動しているのだが、別に他の魔物に追われているとかそういう訳ではなく、自分を囮にして逃げたのではないだろうか。

 普通であれば、この様な出会いでロマンスが発展するものではないだろうか。

 その様な事を考えながら、倒したゴブリンの死骸をスマホの中へ収納し、女性が逃げて来た方へ向かってみると、どうして女性が逃げたのか理解する事ができた。


「こりゃ……酷いな……」


 少し離れた場所から見えるその光景。

 数匹のゴブリンが冒険者だったらしき死体に群がっており、多分……死体を食べているのではないだろうか。

 そのまま放置して立ち去る事は簡単だが、夢見が悪くなるのは嫌なので、死体に群がっているゴブリン達を退治して冒険者だった死体に目をやる。

 腕などは喰い千切られ、身体から離れた場所にあった。直接触るのは気持ちが悪く、スマホの中へ収納出来るのか確認してみると、スマホの中へ収納する事ができた。

 初めて見る死体。

 ライフリや、バルバスが言っていたのはこう言う事であり、自分達冒険者の末路を示しているかの様に思える。

 普通であれば死体を目の前にして動揺するのだろうが、何故だか冷静だった。この冒険者の末路を自分と置き換える事が出来ず、どこか他人事のように思えてしまう。

 イルスと飲んでいる時、町からそんなに離れていない場所で、この様な出来事には滅多な事がない限り出くわす事は無いだろうと言っていたが、その話をして数日も経っていないのに出くわしてしまった。

 その様な話は全く当てにならないという事だろう。

 腕が収納できたという事は、『彼』も収納できるはずだろう。

 そう思いながら試してみると、やはり収納する事が出来、『彼』の名前が表示されている。が、『彼』の名を覚える必要はないため、目を背けようとしたが、『彼』の項目に『装備を剥ぎ取る』と書かれた欄があり、これがこの世界で生きると言う事なのだろう。けれど、『彼』の装備品を剥ぎ取るようなことなんてをしない。

 真面目な話、死んだ人の武具を使うのは気が引ける。


 一度街へ戻ろうか迷ったが、このまま依頼を遂行する事にして、スマホの探知でヴェルを探すことにした。

 幾つか黄色の獣印を発見して近いところから探すことにし、移動を始めた。

 バルバスが言っていた猛獣ではないが、取り敢えず始末し生活の糧となってもらう。

 夕方になるまで探したのだが、目的のヴェルを発見する事は出来ず、今日は町へ戻り出直す事にした。

 日が落ちた頃に町へ到着し、ギルドへ向かう。

 先ほどであった『彼』の事をギルドに報告した方が良いだろうと思ったからだ。

 ギルドに到着すると、何処かで見た事のある女性がカウンターの椅子に腰掛けていたが、今はそんな事よりも報告が大事だと思い、店員に話しかけると、座っていた女性が自分に向けて指をさしながら叫んで注目を浴びる。

 そんな彼女に文句の一言でも言ってやろうかと思ったが、相手にしても時間の無駄だと思い、そのまま店員と話す事にした。

 女性は逃げた事を言われるのか気にしている様で、不安そうな顔でこちらを見つめている。

 店員にバルバスから受けた依頼の内容を説明すると、店員はバルバスの方へ顔を向けたが、バルバスは他の人を相手にしているため、小さな溜め息を吐いてから、話を聞く姿勢になった。

 ようやく冒険者が魔物(ゴブリン)に殺された事を説明すると、場所を変えて話を聞くと言われ、別室へ案内される。


「先程の話では亡くなった冒険者を運んで来たと言うことですが……」


「はい、ここに出しても良いですか?」


 店員は難しい顔をしながら頷き、スマホへ収納した『彼』の死体を取り出す。死体は収納したときと同じ状態で床に現れ、店員は眉間に皺を寄せ状態を確認する。


「確かに……魔物に殺られたようですね。道具などは……そのままにしてあるのですか?」


「まぁ、その……どうして良いのか分からなかったのと、ここまで運ぶ事が出来るのでそのままにしてありますよ」


「……かしこまりました。では、『彼』はこちらで全て処理致します。今回は運べたと言う事ですが、今後は首を斬り落とし埋葬して下さい。できたら冒険者カードを回収して下さい」


「首を……斬り落とすんですか?」


「えぇ、そのまま放置していたら、アンデットになる可能性があります。そうすると非常に厄介なので、その処理と言う事です。気持ちは分かりますが、被害を最小限にするにはそれしかありません」


 そういう事なら仕方がないと思い、「わかりました」と返事をして部屋から出て行こうとしたら、店員に呼び止められた。


「道具は如何致しますか?」


「はい? どういう事ですか?」


 基本的に死んだ人の道具やお金は、発見した人の物になるそうだ。だが、今回は遠慮する事にして『彼』の死体を処理してもらい、ホールへ戻り換金を行う事にした。

 ようやく換金を終わらせ、お金を袋にしまう。

 カウンターにはバルバスがコップを拭いていたので、発見することができなかった事を報告しようと話しかけると、バルバスはこちらに気が付き「奢りだ……」と言って、エールを出してくれた。

 どうやら他の店員から話を聞いていたようだ。


「じゃあ、遠慮なく貰います」


 そう言って席に座りバルバスが注いでくれたエールを受け取り、口にする。


「で、リョータ……その子はいったい誰なんだ?」


 バルバスの言葉に「はぁ?」と言って横を見ると、隣にはゴブリンを自分に押し付け逃げ去った女性が座っており、頬を膨らましながら睨むようにこちらを見ていた。


「貴方、私の事……憎んでいるんでしょ」


 そう思うのなら、先ずは謝ったらどうなのだろう。


「別に……。状況的に仕方がないんじゃないか? 丸腰でゴブリン達に追われていたんだから」


「あ、あっそう……。なら、良いわ」


 これ以上話す事もないので一気にエールを飲み干し、バルバスにヴェルの事を説明してアスミカ亭へ戻るのだった。

 もちろん女性が逃げて来た事は話はしない。あの状況では仕方がないのは本当だから……。

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