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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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58話 追跡者

「町に向かって歩くぞ〜」


 俺の号令に「迎えが来るのを待つんじゃないの?」と、シイナが愚痴るような声を出し、慌てて手で口を押さえるサナリィ。だが、アオは何も言わずに俯きながら一番後ろを歩いており、シイナを叱ることはなかった。


 何故なら、俺は一睡もせずに不寝番をして、アオは眠ってしまったからである。二人に何かを言える立場ではなかったのだ。しかも、土下座して許しを乞うのだが、俺は一言も喋ることもせずに食事の準備をして、テントを片付けたりと移動の準備をしていた。


 何度も許しを請うが、一言も喋らず全部一人で終わらせてしまい、自分たち三人は食事をすると町へ移動を開始する。その後を追い掛けるようにアオが付いてきているのだ。


 俺は入れ違いにならないよう、スマホで周囲を確認しながら歩いていると、シイナが「ずっと気になっていたんだけど……『スマホ(それ)』ってなんなの?」と、言葉を選ばず言ってくる。


「ちょ! 申し訳ありません! ご主人様。言葉遣いや言動には何遍も注意しているのですが……」


 慌てるサナリィ。シイナの口を押さえ頭を無理矢理下げさせていた。それに気が付いていないアオに対し、俺は深い溜め息を吐いた。


「アオ! 遅れてるし躾がなってないぞ! こりゃお前の責任だろ」


 ガバッと顔を上げ、物凄い速さで俺の前にやって来て土下座をするアオ。


「アオ〜。俺は疲れてるんだけど……怒らせたいのか? 躾がなってないって言ったんだけど」


「そうです! 躾がなっておりません! 全てアオが原因でございます! 何でも罰は受けますのでお許し下さいませ!」


「許すも何も、アオが何か悪い事をしたのか? したなら仕方がないから次は気を付けろよ。でも、してないのなら……いい加減にしろよぉ」


「だって、アオは眠ってしまったんですよ! リョータ様は二人で不寝番をと言ったのに、アオは一人でグースカ寝てしまったのです! これは許されない事です!」


「一緒に星を観ただろ……。それに、二人に示しが付かないからいい加減にしろ。お前は何処を歩いているんだ? 殿(しんがり)を任せたつもりはないし、いの一番に戦闘をするのが俺で良いのか? なら勝手にすれば良いさ。後は俺がやっておくから」


「アオ様、リョータ様は怒ってなどいないと仰有っておりますよ。それどころか側に居ないことに苛立ちを覚えているのです。アオ様のお仕事を思い出して下さい」


 サナリィがアオにしか聞こえない声で言うのだが、アオがサナリィを見ているので大体の予想がつく。別に苛立ってなど無いし。


 サナリィを見ていたアオが、こちらを見て立ち上がる。


「サナリィ、その馬鹿の頭を一発殴っておきなさい! ささ、リョータ様……先へ進みましょう!」


 なんて現金な奴なのだ。と、思わせる俺の天使。


「シイナ、これについては質問を禁ずる。サナリィもだ。分かったか」


 元気よく「はい!」と返事をするサナリィだが、「何でよ! 教えてくれても……モガモガ……」と口を押さえつけられるシイナ。本当に理解力が足りない奴だ。


 取り敢えずアオに頭を叩かれ、先に進む事になったのだが、自分たちの後を付いてくる奴がいることを、アオがどうするのか耳打ちしてくる。

 それはこそばゆく、下半身が反応しそうになるが我慢するしかない。宿屋まで……。


「確かにスマホでも確認しているが、昨晩もいたからな……」


 これはお互い理解していることで、相手が何かをしたら行動をするつもりだった。しかし、相手はこちらの様子を探っているのか、一定の距離を保ち続ける。その気持ち悪さは蛇のような感覚である。


「狙えるか?」


「どこの場所を狙いますか?」


「両足だな。逃げられないようにするにはそれしかないだろう。多分、王国の間者だと思うんだけど……」


「かしこまりました。両足を狙いますね」


 そう言って銃を取り出し物陰に隠れるアオ。こちらはスマホを見ながら相手の動きを観察する。

 相手が双眼鏡のような物を持っていたら、距離を取るはずであり、こちらの動きは筒抜け状態となっているはずだ。

 少しして「チッ!」と、舌打ちが聞こえ、アオが物陰から姿を現す。


「バレてる?」


「多分。私が物陰に隠れたら、相手も物陰に潜むかのよう隠れました。こちらの武器を知っている可能性が高いですね」


「なるほど……。なら、殺って良し。死人に口はないからな」


「ですが、どうやって……」


「アオが持っている武器はそれだけか? あと2つ渡した筈だけどな。俺達はここを動かないからアオは先行しろ。これなら分かるだろ?」


「ですが、使ったことの無い武器ですよ?」


「使い方は説明しただろ? 外しても構わないさ。こっちはいつでも殺れるぞと脅しになる」


「流石リョータ様です。10分ほどお待ち頂けますか?」


「もちろんだ。俺はアオが居ないと何もできないのだから、さっさと仕事を済ませて来いよ。えっと、サナリィとシイナは休憩……と言っても、俺が寝ている間に何かあったら起こせ。側を離れるなよ。特にシイナ」


 二人に指示を出すと「何様のつもり」と、言った瞬間にサナリィに殴られるシイナ。アオが単独で動くという事は、危険が迫っている可能性を理解しているのだろう。そして、いい加減にしろと言う意味を込めて殴ったのだろう。ご愁傷様です。


 アオが物凄い速さで先行する。だが、こちらは全く動かないことで追跡者もアオを追跡することができないのか、位置に変化はない。

 大体、1Kmほど離れた場所にアオが辿り着きらしく、アオのアイコンが動きを止める。多分、ダネルNTW-20の準備をしているのだろう。

 一撃必殺の武器で攻撃されたらどうなってしまうのだろう。

 しかも、弾丸は戦闘機に使われている物だから岩をも砕く。


 暫くして、銃声が鳴り響く。そして、スマホで追跡者を確認すると、マーカーが消えているので始末した事を告げていた。

 取り敢えず狙撃したアオに電話して戻る様に言うと、全速力で戻ってきたのだろう……肩で息をしており、嬉しそうに尻尾が揺れている。

 先に確認をしたかったが満面の笑みを見せている天使をどうにかしなければ、先へ進む事が出来ない事を知っているので、取り敢えず腕を引っ張り抱きしめて頭を撫でた。

 ……のだが、アオはそれだけでは許してくれずに唇を要求する。シイナとサナリィには刺激が強過ぎるのか、両手で目を隠すようにしていたのだが、指の隙間から覗いている。


「言い忘れてましたが、リョータ様の下の世話はアオの仕事です! リョータ様が望まない限り、お前達がする必要はないのですからね!」


 顔を赤らめながら二人に言う。ホッとした顔をするシイナと、少し唇を尖らせる仕草を一瞬だけ見せたサナリィだった。


「アオ、お疲れ様。初めてにしては十分だし、使い心地はどうだった?」


「……音ですかね。あれだけが邪魔です。どうにかできないものでしょうか?」


 歩きながら教えてくれるダネルNTW-20の弱点。スナイパーは一撃必中で、攻撃したら直ぐに移動をして新たに攻撃をする。

 アオはスナイパーの意味を知らない。説明するにもスマホの使い方を理解させる必要が有り、苦笑いさせられる。


 アオが狙撃した場所に到着して、スマホを確認する。


「アオ、俺ってば運が悪いの?」


「アオはリョータ様と一緒にいられることが幸せなので、その質問には愚問としか言えませんよ」


 俺とアオの会話についていけない二人。首を傾げるしかないが、眼の前の状況には啞然とするしかなかった。

 アオが狙撃した場所には血溜まりがあり、肉片も散らばっている。確実に殺った事を教えてくれているのだが、その死体が目の前にない。何者かに焼かれたような跡があり、証拠は隠滅されていた。……はずであるが、自分がそのような油断をするはずが無い。

 アオが確実に狙撃したのならば、その姿を少しでも見ているはずである。


「アオ、状況報告」


「姫様の兵ではありませんでしたね。と言うか、この国の兵士ではありません。そして……」


 アオが銃を早撃ちし、血溜まりが出来上がる。そこには死体を抱き抱えている魔道士のローブを着た者が蹲っており、サナリィが慌ててそいつの口元にアックスを押し付け、魔法を唱えられないようにしていた。


「リョータ様には私がおりますから彼から話を聞きましょうか……」


 天使が悪魔に変わる瞬間を二人が目撃する瞬間であり、慣れてしまった俺にはスマホに映らなかった事に対して疑問を抱く。

 だが、一つ理解できるのは、自分が世界中で人気者になってしまったと言う事であり、マリーの側から離れたい気分に襲われていると言う事だ。


「アオ、エアガンをシイナとマリーに渡して使い方を教えて。シイナが武器を使えないのは痛すぎるし、マリーには自分の身を守る術を身につけて貰う。そして、ステータスを少しだけ弄らなきゃいけなさそうだな」


「かしこまりました。ですが、先ずは……」


 捕まえた奴から話を聞く……と、アオが言いたそうな顔をしていたが、眉間にシワを寄せているサナリィが遮った。


「アオ様、既に手遅れです……」


 魔道士の首は地面を転がっており、サナリィが持つアックスから血が溜まり落ちる。そして、小刻みに震えるサナリィに対して、アオは溜め息を吐いた。


「リョータ様と共にすると言う事は、それくらいの覚悟を持ちなさい。シイナもそうよ。貴女達は自分で売り込んだんでしょ」


 サナリィの『何でもしますから……』と、言った言葉が頭を誤るが、自分が本来求めていた『何でも』ではない。

 理由を聞くと魔法を唱えようとしたので殺ったとの事らしい。それはアオも認めていて、自分だったら唱え終わる前に黙らせられると思ったらしいが、そう上手くはいかなかった。と、言うのがアオの答えだった。

 アオはサナリィに報告する事を教えようとしたが、それを制してサナリィを褒める。相変わらず優しいとアオが頬を膨らませながら言うが、サナリィの実力でそれを実践させるには酷な事だと思い死骸に目を向ける。

 できれば二人……と、言うか、アオにも人を(あや)めて欲しくは無かった。けれど、状況はそう言っていられないらしい。


「アオ、サナリィ……ごめん」


 一応、謝罪をするが、サナリィは首を傾げ、アオは「リョータ様を守るということはこういう事もあると覚悟しております」と、答える。


 一緒にいる時間や、愛を育んでいる回数が多いのだから理解が早いのか? それとも……。言葉遣いや言動もかなり変わっているし、ステータスを弄った事が影響しているのかも知れない。

 アオには本当に悪い事をしたかも知れない。


 そして、死骸をスマホに仕舞い、シイナが何か言いたそうな顔をするのだが、命令があるため聞くことすら出来ずに苛立ちを見せていた。

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