49話 その時マリー達は
マリー達は亮太と別れ、ギルドへ向かう。その途中、マリーは不機嫌な顔をしながらアルフォンスに言う。
「アル……。アンタ、私の師匠を馬鹿にしてるでしょ」
「してねーッスよ」
「じゃあ、何で師匠に対して喧嘩腰なのよ……」
「姫様にゃぁ分からないッスよ」
「じゃあ、城に帰りなさいよ。他の護衛の方がまだマシよ。と言うか、師匠とアオさんが居ればアンタなんか必要ないっていうのに……」
溜め息を吐きながらマリーが言うと、少しだけムッとした表情でアルフォンスが言い返す。
「と言うかですね、あの様な武器、俺達は見た事ありませんよ! あの様な物を持っていると知っていれば、対策もありました!」
「そう言ってリョータさんに全く敵わなかったじゃん」
「まさか格闘家だとは思わんでしょ! 分かっていれば距離を取り、相手の間合いに入ったりしないッス!」
亮太は剣士であるが、武器無しで魔剣士と戦うなんて普通はありえない話だし、格闘家でも魔剣士に勝てるはずがない。
魔剣を持つという事は、その剣に選ばれた者という意味であり、実力もトップレベルなのである。しかし、マリーは知っている。亮太が全く本気を出していない事を……。
騎士団長のリーグにはそこそこ善戦するが勝つ事はできない。だが、亮太に関してはそれ以前の負け方をしたのだ。善戦ではなく完敗でもない。
屈辱……ただそれだけだった。
アオに関しても同じである。あの身体に対してあの動き……そして、あの武器である。見た事もない武器で攻撃され、床をのたうち回された屈辱。
それに、いくら獣人だからといって、あの若さでその力は異常過ぎるのであり、ベテランの獣人冒険者以上の強さを持ち合わせているのだ。
アルフォンスがその全てに納得出来ないのも当たり前である。
「言い訳なんて聞きたくないわ。あれに懲りたら師匠達に逆らわない事ね」
マリーの言葉にアルフォンスは唇を尖らせながらそっぽを向いた。
ギルドに到着し、アルフォンスは冒険者の登録を済ませて、何か面白い依頼がないかと掲示板に目をやる。
すると、王都から離れた洞窟で「ウィル・オ・ウィスプの悪魔討伐」という依頼があり、アルフォンスは口元を緩めながらマリーに説明する。自分の力を証明する場所はそこしかないという事を……。
「魔石……確かに魅力的ね。だけど、魔剣使いの貴方がウィル・オ・ウィスプと戦えるの? 騎士団長であるリーグの聖剣だったら話は別だけど……」
「教会で武器を清めれば問題ありませんよ。とは言っても、俺の魔剣は使用出来ませんけどね。ですけど、これ以上の被害は避けるしか無いと思いますよ。それに、アレを始末したとなれば、ボーズの事を陛下も認めてくれると思いますし」
「確かに……これ以上の被害が出れば、騎士団が動く必要があるわね。だけど……」
「姫の師匠はウィル・オ・ウィスプの悪魔に勝てない……と?」
「そ、そんな事はない! 師匠達が負けるはずが無い! 対策さえしっかりしていれば……」
自信無さげにマリーが言う。ウィル・オ・ウィスプの悪魔は人の生気を食材にしており、冒険者はその餌食となってしまう事がある。そうすると、ウィル・オ・ウィスプの悪魔は強くなり、並の冒険者では退治が出来なくなり、騎士団が動くのだ。
アルフォンスはそれを狙っている。
今の状態では、並の冒険者はウィル・オ・ウィスプの悪魔を倒せない。騎士団の自分が活躍すれば、失った騎士団の名誉を……自分の威厳を取り戻せると考えたのである。
「まぁ、師匠達に話してみましょ。受けるかどうかはそれからよ」
「え? もう、受けちゃいましたよ」
その言葉を聞いて、マリーは絶句し、項垂れたのであった。
その後、アルフォンスが「さぁ! 武器を清めに行きましょう」と、しつこく言うので、先に武器を清め、亮太達がいつ来ても問題ないようギルドで待つことにしたのだった。
「だけどさぁ……」
「何スカ? 姫様」
「魔石を手に入れてどうするの?」
「手に入れてッスか? それはボーズがどうかするんじゃないんスか?」
「どうにかって……。アンタって最低ね。本当に騎士団の一員なの?」
「騎士団にも色んな奴がいるって事ッスよ」
そう言って誤魔化しながら、亮太達を楽しみにしていた……。
それから暫くして亮太達がやってくると、マリーは嬉しそうに立ち上がり亮太達のところへ向かっていく。
アルフォンスは気怠そうにしながら側により、マリーがギルドでの状況を説明すると、亮太は「あぁ、アレか……。まだ退治されてなかったんだ」と言い、少しばかり話を知っていると言う事が分かる。
「ご存知だったんですか? 師匠」
「一度挑戦してみたけど、断念したからな」
「し、失敗……したんですか?」
それ以上の事については話さず、「断念した」という言葉に対して嬉しそうな顔をするアルフォンスに対し、茫然とするマリー。
「まぁ、魔石に興味があるし、アルもいないから今回は討伐しても構わんだろう。なぁ、アオ」
「ですが、マリー様やラスクさんが居られるのが少しばかり心配ですが……」
そう言ってチラリとアルフォンスを見るアオ。その眼は冷ややかなもので、完全に見下しているように見える。その目に気が付いたアルフォンス。(その依頼を断念したくせに……)と、思いながら舌打ちをするのだった。
「じゃあ、次の行き先は決まったな。ラスク、お前は身を隠す様にフードをしとけよ」
「分かってる。命を狙われるのは御免だからね」
そう言ってフードを深くかぶり、ラスクは顔が見えないかどうかアオに確認するのだった。




