5話 装備を揃えるのも一苦労
アスミカ亭へ戻りスマホで所持金の確認をすると、イルスと一緒に居たとしても、2,000Gオーバーも稼げたのはかなり美味しい。
次いでにスマホでステータス画面を確認すると、自分のレベルが2に上がっておりステータスの数値も一緒に上がっていた。
今のところステータスを上げる必要は無いように思え、スマホを台上に置いて眠りにつく事にした。
翌朝、スマホのアラームが鳴り響き、寝ぼけ眼で※台に置いたスマホを手にしてアラームを止め、身体を伸ばしてから着替えを始め、浄化の魔法で顔や歯などを綺麗にしてから朝食を頂き、街の武具屋向かう事にした。
何故武器屋に行くのかと言うと、自分よりも弱かったイルスがショート・ソードを装備していたのでは無く、ブロード・ソードを装備しており羨ましく思ったのだ。
格好だけでも冒険者らしくなりたいし、ショート・ソードでは戦闘するのに限界があるので装備品を新調することにしたのだ。
以前、ギルドのバルバスに教えてもらった武器屋へ行こうと歩いていると、『武器屋アルサレッド』と小さく書かれた看板を発見し、近場にも武器屋があるじゃないかと思いながら店の中へ足を踏み入れる。
店内には武器が陳列されていたが、人がいる気配はなくやる気が感じられない背の小さな男が椅子に腰かけており、暇そうに顎髭を弄っているだけだった。
アスミカ亭やギルドでは「いらっしゃい」と、挨拶されるのだが、この店は挨拶の一言もない。
だが、デパート等の店員みたいに挨拶した後、余計な接客されるよりもましだと思い、店に陳列されている武器をゆっくりと物色することが出来る。
店の壁には見本の武器が展示されているかのように掛けられており、その下に値段が張られていて、いちいち値段を聞かなくても分かるのが良い。
どうやらミスリルの素材を使用した武器もあるようだが、手持ちの金では購入することは出来ない。
というか、ミスリル系の武器って高すぎる。
今見る限りではブロード・ソードよりも良さそうな武器と言えば、ロングソードになる。だが、持ち難そうなのと、やや長すぎるところが欠点と言えるだろうか。
その上の武器となるとバスターソードやスチールソードになるが、どちらも値段が高く、防具まで手が届かなくなってしまいそうだ。仕方ないのでここはロングソードよりも安いアイアンソードで手を打つことにし、暇そうにしている顎髭を弄っている店員に話しかける事にした。
「なぁ、アイアンソードを買いたいんだけど」
こちらをジロッと見た後に、「800Gだよ」と、一言呟いて欠伸をする店員。
全くやる気が感じられない奴だと思いながら、スマホから800Gを取り出してカウンターての上に置く。
ふと疑問に感じてスマホを見つめる。
スマホからお金を取り出すとき、必ず袋に入った状態で目の前に現れる。スマホには袋を収納している訳ではないのに、この袋はどこから出てくるのだろうか。
いや、考えてはいけない……このような事は考えたら負けだと思う。
きっと、小林の親切心であろうと思う事にし、顎髭を弄っている店員からアイアンソードを受け取り、装備していたショート・ソードをスマホの中へ収納する。
基本的に武器は売らないことにしている。武器はいつ必要になるか分からないからだ。
アイアンソードを購入したので店から出ようと出入り口へ向かう。
その際、チラッと顎髭を弄っている店員を観てみるのだが、全く自分に興味を示さないというか、挨拶すらない。
サービス精神のない店は、いつか潰れてしまうが、この様な店は何故かしぶとく続いているような気がする。
これも気にしたら負けだと思いつつ店から出て、今度は防具屋へと足を運ばせた。
バルバスに聞いた防具屋の一つ『防具屋アルマ』へ入ると、可愛い女性店員が「いらっしゃいませ!」と元気よく挨拶してくる。
先ほどの店員にこれだけは見習わせたい物だと思いつつ、店内に陳列されている防具を確認しようとしたのだが、1枚のチラシが目に留まり、気になる内容が書かれていたので読んでみる。
『ぼったくり店に注意しましょう!! 最近、武器のぼったくり屋が増えております。以下の店に入らないよう注意!! ギルドより』
そのチラシに書かれていた店の一覧を見てみると、先ほど俺が購入した武器屋アルサレッドの名も書かれてあり、顔を引き攣らせながらチラシの前で立ち尽くす。
そして自分が購入したアイアンソードの信用性が無くなり、本当にこの武器は大丈夫なのかと心配になってしまい、おろおろとし始めてしまった。
すると、チラシの前でおろおろとしている自分に気が付いた可愛い女性店員が、心配そうに声を掛けてきた。
「あのぉ~。どうかされましたか?」
「あ、いや……。こ、これに書かれているお店で……先程剣を買ったばっかなんだよね……」
顔を引き攣らせつつも苦笑いして答えると、店員の女性も状況を察してくれたらしく苦笑いで返す。
「もし、貴方がよろしければ……鑑定したしますか? 鑑定は無料ですから……」
バッタ物を掴まされているかも知れない状況だからなのか、女性は優しい言葉を掛けてくれる。持ち論断るはずが無い!
「是非お願いします!!」
そう言って腰から剣が納められている鞘ごと渡すと、女性店員さんは鑑定を始めたのだが、その姿はまさに職人と言った表情で剣を細かく調べ始める。
その可愛さに似合わない鋭い眼光に息を飲み込んで回答を待つ。
「この剣は本物ですね。粗悪品ではありません。販売価格としては500Gが妥当で、買い取り額は200Gとなります」
流石、ギルドが紹介するだけはある。販売額と買い取り額まで教えてくれた。取り敢えずお礼を言う次いでに自己紹介をすると、彼女も自己紹介をしてくれた。彼女はアルケミ=エレ=サナタリと言う名前らしく、愛称はアルと言うらしい。
「ですので、リョータさんも気軽にアルと呼んで下さいね」
その優しい微笑みはまさに天使。子の笑顔でメロメロにされる男性は多いだろう。因みに歳は自分と変わらず18歳。
そう言っても、自分はこの世界で18歳なのだが、元いた世界では24歳である。
なんだかサバをよんでいるみたいで気持ちが悪いけど仕方がない。
「じゃあアル、良かったら防具を見繕ってくれないか? あ、値段は安めで。先程ぼったくりにあったばかりだから」
ハッキリ言って防具を選ぶ基準なんか分からない。なら、その道のプロにお願いした方が良いだろう。ギルドのお墨付きの店なのだから。
「そうですね~……。少し身体を触らせて頂きますね」
そう言って腕や腰、太腿などを触り、身体つき等を確認していて、自分に合う防具を選んでくれている……はず、なのだが、なんと言うか恥ずかしい。
「鎧よりも胸当てや、籠手などの方が良さそうですね。コボルトの皮で作られた物で用意いたしますね」
よさげな物があるのか、裏へパタパタと走って行く姿は小動物のようにおもえた。それから暫くして、籠に入った防具を持ってくるが、彼女が持つには少し重そうに感じる。
「少しジッとして頂けますか? 今から試着の方を致しますから」
試着させてくれると言うので、お言葉に甘えて試着させてもらう事にし、アルの言う通りにジッと立っていると、「動かないで下さいね?」と言い、腕や身体に防具を着けていく。
胸に胸当てを装着させる時、かなり身体が密着してしまうのでドキドキしてしまう。だらしがない。
俺は本来24歳のはずだろ……。
「これで如何ですか? キツくはないと思うのですが……」
防具の装着が終わったようで、アルは身体から離れてしまう。少し残念だと思いながら身体を動かして、違和感がないか確かめてみる。
アルの見立て通りサイズの様で、全く違和感がない。流石プロの見立てだと感心してしまう。
「これ、良いですね……幾らになりますか?」
値段を聞くとアルは満面の笑みを浮かべ「800Gになります!」と、元気な声で言う。この笑顔だけでも50Gを払う価値があるかも知れない。
ポケットからスマホを取り出し、財布のアイコンをタップして800Gをアルに渡す。だが、アルはお金を気にするよりもスマホの方が気になるらしく、手にしているスマホををジッと見つているため、直ぐにポケットの中へ仕舞い込む。
「それ、アーティファクト……ですか?」
やはり気になるらしくスマホの事を聞いてきた。
「あ、あぁ……。そ、そう……だけど」
この世界の古代文明がどの程度だったのか知らないが、実際にはこの世界に存在しないチートなアイテム。普段から使用している物だったから気にしないで使ってしまっていた。
「そのような物……あまり人に見せない方が良いですよ」
少し困惑した顔をしながらアルがアーティファクトについて教えてくれた。どうやらアーティファクトはとても貴重な物らしく、古代文明が生み出した物だと言われているらしい。だが、こんな物が古代にあったのなら、魔物のいない世界になっているはずだと思ってしまう。
「ですから、なるべくそのような貴重な物を、他人に見せない方が良いですよ」
いつ、街の人が強盗に変わるか分からない。アルは心底心配そうに教えてくれる。本当に良い子だと思いながらお礼を言って店を後にすると、どこかで聞いたことのある音が直ぐ近くで鳴った。
「ん? この音って確か……」
ポケットに仕舞ってあったスマホを取り出すと、何か着信したらしく、ランプが点滅しており、画面を開いてみるとメールを受信したようだった。
送信主は小林で、メールの内容はスマホの紛失についてだった。まるで、先ほどの会話を聞いていたかのようなタイミングでメールをしてくるところは流石だと思う。
『Dear亮太』
まるで、親しい間柄のような出だしである。いつの間に自分は小林と親しくなったのだろうかと頭を痛める……。
『そちらの生活は如何ですか? 先程お話していた件ですが、このスマホは盗まれるという事はありません。それに、説明書に書かれてありましたように、自動ロック機能が搭載されているため石橋さん以外が使用できるような事は絶対にありませんし、ありえません。ですので気になさらず使用して下さい。貴方を陰ながら見守る小林より……』
何が「貴方を陰ながら」だよ! 豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ! と言いたいが、自分流し読みで説明書を適当に読んでいた事がバレていた様だ。
しかしながら、お店で金を取り出す際、毎回驚かれるのも面倒な話である。不本意だが小林が送って来たメールには感謝しなければならない。
だが、アルが言っていた事も一理ある。幾らこれが盗まれる心配がないからとしても、用心に越したことはない。
これを目当てに何時襲われるか分かったものでもない。これからはお金を二つに分散する事にして、スマホはサブにして、もう一つは魔法の袋をメインにしよう。
防具屋アルマから少し離れた場所に『道具屋カレッカ』と言う名の道具屋があり、そこへ立ち寄る。すると、店員のオバサンが獲物を見つけたかの如く、アグレッシブに必要が無い道具を勧めてくる。
正直な話、このようなアグレッシブに物を勧めて来るオバサンが大の苦手だ。なので素っ気ない態度で「あ、結構です。魔法の袋は幾らになりますか」と、棒読みで話を進める。
道具屋のオバサンは『魔法の袋をお求めですか! それなら大きさが色々袋があってね……』と説明を初めた。店員のオバサンは、必死の形相で容量の大きい袋を強引に勧めてくる。お金だけを収納するのだからそれほど大きなものでなくても良い。正直、一番小さい袋で構わないのだ。
一番小さい袋で90リットル程収納する事が可能らしく、値段は500Gと思ったより安い。イルス達が持っていた袋は、それよりも容量が多い袋を購入したようだ。多分、子供の頃からお金を貯めていたのだろう。
そうでないと、四畳半程の袋を購入する事は出来ない。残りのお金で武器を購入し、冒険者登録をして二人で頑張って稼ぎ、武具を新調したのだろう。
一番安い袋を選ぶと店員のオバサンは小さく舌打ちをしたようにみえた。何故、この店がぼったくりや登録されていないのか不思議だ。
取り敢えず安い袋を購入するためにスマホをポケットから取り出して、お金をスマホから取り出す。そこでようやくアルが言っていた言葉の意味を思い知らされる事となった。金を取り出したのを見ていた店員のオバサン。
スマホの事を根掘り葉掘り聞きだそうと必死になってきたのでアーティファクトだと説明すると、物凄い勢いよく幾らで売ってくれるのかと迫って来やがった。
一先ず「急いでるから」と嘘を吐き、金をカウンターの上に置いて逃げる様に店から脱出して安全な場所を求めて走り去る。
店員は店の外まで出てきて何やら叫んでいたのだが、振り向くことなどせずに逃げ去ったのだった。
ようやくひと目に付かない場所を見つけ、スマホに収納していたお金の半分を袋へ移してから路上に出て身体を大きく伸ばして深呼吸をして冷静さを取り戻す。
これで一通り装備も調え、寂しくなった財布の中を温かくするために街の外へ出る事にし、夕方まで猛獣狩りの仕事を熟してからアスミカ亭へ戻り長い一日を終えた。
翌日、目を覚まして装備を調え、食事をしてからギルドへ向かい換金を行う。昨日は武具を購入してから狩りへ行ったので、思うように猛獣共を狩ることができず、予定していた額よりも稼ぐことができなくて顔を渋らせていると、奥から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「よう! 今日は来るのが早いなリョータ。どうだ調子は? 一人は大変だろ?」
聞き慣れた声の主はバルバスだ。相変わらず彼の頭は光り輝いている。磨いているのだろうか……。
「やぁ、バルバスさん。おはようございます。少しずつ慣れてきた感はありますけど、まだ仲間が必要かと言われたら……分かりません。できれば、もう少しだけ独りで気軽に動きたいかな」
「そうか、でも一人には限界って奴が必ずやって来るぞ。誰か良さげな奴はいないのか?」
「えぇ、まぁ……。そうですね。でも俺、この町へ来て日が浅いので知り合いが少ないんですよ」
「そうか……。まぁ、余り無理はするなよ」
バルバスは少しだけ心配してくれているらしく、親身になって話をしてくれる。
所持金:572G
少しだけバルバスと話をしてから町の外へ向かう。今日は一日中猛獣狩りを行い、宿屋の延長を行わなければならない。
町から少し離れた場所に到着し、スマホを取り出して周囲を捜索する。
すると、地図アプリの探索結果に魔物や猛獣の印が現れ、昨日の事を思い出して魔物の印があった場所へ向かってみると、そこにはゴブリンが一匹だけでうろついており、こちらには気が付いていない様子だった。
油断して奴が悪いと思いながら忍び足でゴブリンに近寄り、背後からアイアンソードを横一閃に斬り払って、ゴブリンを一撃で仕留める。
ギルドの掲示板には一匹辺り100Gと素材として30Gと書かれていた。これはかなり美味しい話だ。
しかし、改めて死骸の斬り口を確認してみると、まさかここまでスパッと斬れるものだとは思えない。
やはり剣技を覚えただけの事はあるだろう。
前の世界では剣道などやった事がないのに、誰かに剣術を教わったかのような動きができている。
そうは言っても、レベル1だから基礎中の基礎だけなのだが……。
ゴブリンをスマホの中に入れ、次の獲物を探し移動を始める。
昼頃にはゴブリンを5匹も倒すことができ、少し休憩することにして安全そうな場所で腰を下ろす。
喉が渇いたので何か飲み物をと考えたのだが、水筒などを購入していないので水が有るはずが無い。
何か良い方法がないかとスマホで調べると、生活魔法という項目があった事を思い出す。
だが、その中に目当ての物があるか分からないので検索バーで入力してみると、『飲料水』という魔法があり、指先から水が出てくるようだ。
魔法アプリを開き、生活魔法の『飲料水』を取得して唱えてみると、人差し指から水がチョロチョロと出てくるのだが、その光景はなんともシュールなものだった。
蛇口を開け閉めするイメージで水量を調整でき、ようやく喉の渇きを潤してから身体を休め、自分のステータスを確認する。
昨日の朝に確認して以来、自分のステータスを確認していなかったのを思い出したからだ。
名前:石橋亮太
年齢:18
Lv:2
HP:34
MP:22
STR:28
AGI:28
DEX:30
VIT:30
INT:24
魔法:【浄化】【飲料水】
スキル:剣技1
昨日の朝と変わりはない。
しかし、魔法欄に『飲料水』が増えており、着実に自分が成長していることを実感したのだった。