表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
49/105

48話 躊躇いなど必要なし!

 仕方がないため、このメンツでこれからについて話し合いを行い、結論としてマリーの成長を最優先と言うことでマリー、アルフォンスとラスクの三人に押し切られてしまった。

 こちらとしては出来る限りゆっくりとした生活をしたいし、アオとの二人で楽しい毎日を繰り広げたいという気持ちでいっぱいだったのだが、仕方がないだろう。アオが戦姫に仕立て上げてしまえばと言ったのだから……それだけの責任はあると言うものだろう。

 しかしアオは、三人の言う事など聞かなくても良いと言ってくれたが、自分たちの安息を考えた場合、邪魔な奴らを排除するためには、マリーを育てた方が手っ取り早いのかも知れない。

 だが、ラスクの考えだけが読むことができない。彼女は一体何を考えているのだろうか……。

 しかし、そのような事を考えても仕方がないため、これから先について自分の考えを言うと、アオのみが賛成してくれた。

 アオが自分の言うことについてNOとは言わないはずであるし、アオも自分の事を好いてくれている……はずである。

 近いうちにでもアオにこっそりと聴いてみることにしよう。だが、本当のことを言うのかは分からないが……。


 自分の住む家を買いたいと強く主張するのだが、こういう時は何故か理論攻めして来るマリー。流石、腐っても鯛というやつだ。

 王女の独特の圧力というやつを持っているのか、言葉に対して責任等、所々説得力を持った言葉が出てくる。

 しかし、それを台無しにするのがアルフォンスである。

 コイツはチャラい。言葉が軽過ぎるのである。アルフォンスが口を開こうとする度にマリーが「アンタは黙ってなさい!」と喋らせないように黙らる。こちらの態度が気に入らないのか、それともただ単に気に入らないだけなのか、何か言いたそうな顔を向ける。


「因みにアルフォンスさんは騎士団の中ではどれ程のレベルなんですか?」


「レベル?」


 知らない単語に対し、怪訝な顔をするアルフォンス。「序列って思ってくれれば良いですよ」と、言葉を選び直して説明すると、アルフォンスはニヤリと笑い、自慢気に説明を始める。

 だが、真面目に話を聞いているのは自分一人だけで、アオは全く興味が無いのかスマホの使い方を調べており、ラスクは爪の手入れ、マリーは地図を見ながらこれからについて考えていた。


「俺ッチは騎士団の中で上位に値する力の持ち主だ。約1,000人ほどいる騎士団の中で、上位から20番目だと思ってくれれば良い。だから、この魔剣ブラッドソードを与えてもらっているんだぜ!」


 上機嫌に言うアルフォンス。この面子で考えるのであれば三番目に強いという事になるが、自分とアオが飛び抜けて強いため自慢にもならない。

 先日の通り自分とアルフォンスが戦った場合、アルフォンスはあっという間に倒されてしまったため、アオだと秒殺でアルフォンスを倒してしまうだろう。騎士団という組織の程度がしれてしまう。

 そんな下らない話をしていると、食堂の空気が一変する。

 先程までスマホを弄っていたアオが手を止めてその気配の方に目を向ける。自分はアオとは逆にスマホの機能を調べることにした。

 新しいスマホはフル画面で今までと勝手が違くて使い難さがあり、慣れるまで少し時間が必要がある。それに、アオのメルアドなど登録する必要や、使い方や意味も教えないといけないだろう。


 そんな事を考えていると、食堂の扉が開いて爽やかな笑みを浮かべた青年が入ってくる。だが、その格好はパーティーで見たことのある顔だった。

 アオはその青年から漏れ出ている殺気に対して、対抗するかのように殺意を解放していく。


「おやおや、怖い空気が食堂を漂っているようだね。私は敵ではないよ、獣人のお嬢さん」


 イケメンスマイルで爽やかに答えるが、お互いが殺意に満ちている状態でそう言われても説得力は無い。


「リ、リーグ騎士団長殿! ど、どうしてここへ……」


 先程までチャラい男だったアルフォンスが立ち上がり、騎士のポーズを取る。この様な事ができるなら、初めからそうしてくれよと思うのは言うまでもないだろう。


「様子を見に来たんだよ。噂の英雄殿と一言も挨拶していなかったからね」


 そう言って爽やかな笑顔で握手を求めて来る。断る必要はないので立ち上がり自己紹介をして握手に応じると、それなりに力を込めてくるが、ハッキリ言って子供と大人の差がある力関係。この力の強さはアオやアルと同じくらい? そう思いながらにこやかに微笑み手を離す。


「私は騎士団長のリーグ=ホウ=テイラーと言います。この度は我が国の戦姫がお世話になるという事でご挨拶にお伺い致しました」


 爽やかに言うリーグ騎士団長。それを見てアルフォンスは自慢げな顔をしてこちらを見る。


「それで、その騎士団長様が冒険者である俺に、何か御用ですか? もしかして、そこにいる役にも立たない魔剣使いの騎士団員でも引き取ってくれるのですかね?」


 その言葉にイラッとした顔を浮かべるアルフォンス。だが、リーグの爽やかな笑みは変わる事はない。


「まぁ、そう邪険にしないで下さい。我々としても、姫様お一人にさせる訳にはいかないのですよ。それに、彼はこの国でも指折りの魔剣士なのです。そこらの冒険者よりも実力は有りますし、最低でも一人は護衛を付けなければ、私達が陛下から怒られてしまいます。目障りかもしれませんが、私達の顔を立てて下さい」


 爽やかな笑顔をしながら申し訳なさそうな口調で騎士団長のリーグは言う。

 リーグの言い分が理解できてしまう自分が情けなくなってしまうが、リーグが言っていることはもっともな話であり、この国の王女様とあらば、誰かしらマリーのお目付役は必要である。だが、この程度の騎士がお目付役で大丈夫なのか……それだけが心配の種である。

 まぁ、いざとなればアオがマリーを守るから問題ないし、もしもの時は自分もいる。

 自分がそこまで強いとは思ってはいないが、この騎士団長と握手をした際、こちらを試すかのように握力を確認してきたのは確かだ。仲間を信用していない訳ではないが、相手の実力も測っておこうと考えているのだろう。


 言いたいことを言って一礼する騎士団長のリーグ。そしてこの場から去っていくと、アルフォンスは一息ついて椅子に座り込んだ。


「あれがうちの騎士団長……。爽やかな笑みの向こうに恐ろしい程の実力を隠してる。騎士団に入隊して、一度たりとも負けた事がないって話だ。いくらお前が強くても、団長に勝つ事は無理だろうぜ。なんせ、世界に数本しか無いと言われている聖剣の持ち主だからな」


「聖剣の持ち主?」


「あぁ、聖剣【輪舞曲の鈴(ロンド・ベル)】に選ばれた人だ」


 疲れた表情をしながらアルフォンスが答えるのだが、アオは「実力からして私と同等か、少し下? なのではないでしょうか」と、耳打ちをしてきた。

 その意見に対しては同意だが、アルフォンスの言っていた聖剣という武器の名が気になる。


「そうかも知れないが、何はともあれ……面倒だけど、今はマリーを強くする方が面倒が少なくって簡単なのかもな」


 そう言って深い溜め息を吐き、天を仰ぐかのように天井を見つめる。マリーは嬉しそうな顔をしながらこちらを見ており、アルフォンスはこれから先どうなるのだと憂いていた……が、この中で弱い部類の奴が憂いたってしょうもない話なのだ。


「仕方がない。先ずはギルドで仕事を探し、マリーとアルフォンス……さんの二人で頑張ってもらうか……」


 一連の出来事に再び溜め息を吐きながら言うと、マリーとアルフォンスがテーブルを叩きながら詰め寄ろうとし、いち早くアオが二人の頭に銃口を押し付け動きを制止させる。

 銃の威力を知っているマリーは固まった様に動きを止めるが、威力を知らないアルフォンスは銃口を握りしめたため、アオはもう一丁の銃をアルフォンスの足に向けて一発撃ち放つと、弾丸はアルフォンスの太腿を貫通して、その激痛に太腿を押さえながら床を転げ回る。


「リョータ様が決めた事に逆らうんじゃない。一緒に要られるだけでも光栄なのに……」


 冷たい眼でアルフォンスを見下ろすアオ。躊躇などしないで銃を撃ち放ったことに対して恐怖に怯えるマリーは、何度も頷いて理解を示すが、アルフォンスは痛みが激しいのか煩く騒ぎ転げ回る。

 痛みに騒ぐアルフォンスに回復魔法をかけて怪我を治す。魔力のステータスが高いことが原因なのか、最弱の回復魔法を使ったはずなのに、あっという間に傷が回復してしまう。魔力のステータスが高いと弱い魔法でも威力が高くなるということが分かったのだが、ラスクは「アンタ、まさか物凄い治癒術士なの?」と、驚いた顔をしながら言ってくる。

 まぁ、ステータスの事を知らないのであれば当たり前なのだろうが、その言葉遣いが気に入らないのか、アオが銃口をラスクの頭に押し付け、「呼び方に気を付けて下さい。主に対しては『リョータ様!』と、呼んで下さい」と、怖い顔して脅迫する。


「アオ、流石にそれ以上はやり過ぎだ。俺の事を想ってくれるのはありがたいが、人に強要する必要はない。好きに呼ばせりゃ良いよ」


「ですが、リョータ様!!」


 銃口を押し付けられているラスクはたまったもんではない気分だろう。両手を上げ、怯えた顔をしてこちらに助けを乞うような目で見ている。先程、目の前でアルフォンスが撃たれたのを目の当たりにしているから余計に怖いのだろう。


「アオ、俺の言う事が聞けないのなら……」


「か、かしこまりました……」


 別にお仕置きが嫌というわけではなく、嫌われるというのが嫌だというふうに見えるアオの態度。けれども、下した判断に納得していない者が二人ほどおり、説明するのに時間を割くのが面倒臭かった。


「リョータさん! 何故、私とアルの二人だけでギルドへ行くのですか! こういう場合、師匠等も来て頂けるものだと思いますよ!」


 少し興奮気味に言うマリー。


「別に二人で町の外へ行けとはとは言っていないだろ……。俺達の武器は、先日のドラゴン騒ぎでボロボロなの! アオが持っている武器だけでは不安だし、ラスクの装備も調えなきゃならん。どこぞの騎士様のように魔剣なんて持ってもいなきゃ、聖剣だって持っていない。せめて変わりになる武具を買い揃える必要があるんだ。その間にお前等が何か依頼や情報を仕入れて来いというわけだ。まさか、騎士様にはそのような事が出来ないとか、私は姫だからそのような事ができないとか抜かすのなら、さっさとあの世に行ってもらい、俺達は違う国を目指すことにでもするよ」


 突き放すかのように言うと、「それは素敵な話です!」と、アオは嬉しそうに言二人二人きりで生活がしたいという現れなのだろうか……。

 こちらの話を聞いて、マリーはあまり納得が出来ないといった表情をしていたが、渋々頷き、仕方なく意見に賛同し、アルフォンスと共に食堂を後にするのだった。


 宿屋から出てマリー達とようやく別れ、どうやらいまだに納得がいっていないマリーはアルフォンスに文句を言いながらギルドがある方へ向かっていく。こちらはスマホで武具屋を調べており、何処でどの様な武具が売っているのか調べはついている。

 店に到着して、中に入る。ラスクは魔法が得意なため杖やロッドがある方へと足を運ぶ。

 自分は手頃な剣が売っていないか確認していると、アオがバトルアックスのような物を手にして握り心地を確認していた。


「アオはアックスにするのか?」


「いえ、別にそういう訳ではないのですが、どういった物か確認をしておこうかと……」


「どのような物が良いのさ?」


 少し考えるそぶりを見せながら「それは……リョータ様と同じ物が良いに決まってますよぉ〜」と、甘えるような声を出しながらアオは言う。

 どうせここで買えるのは半ミスリルの剣だけであり、これ以上性能が良い武器を探すのは難しい。と、言うかこの国で売っている武器で、それ以上強い物はないようだ。

 その理由は騎士団の存在である。

 反乱が起きた際、強い武器が売られていたら、それを使われるのを防ぐためである。と、スマホに書かれていた。

 では、騎士団どのようにして武器を手に入れているのかというと、騎士団は近くにいるドワーフに武具を作らせているらしい。その技術は門外不出らしく、ドワーフ以外の者たちが作れるのは半ミスリル系の武具が最高であった。


「しっかし……これでドラゴンと戦ったりすると、一戦噛ますだけで使い物にならなくなっちまう。どうにかしないとな……」


 あの様な化け物が改めて現れたら面倒だと思い、もう少しマシな武器が手に入らないかと考えるのだった。


 結局、アオと自分は半ミスリルの武具を購入し、ラスクは魔道士の杖らしきものを購入し、魔法使いらしくマントを羽織り「どお?」とポーズを作る。

 もちろん、ラスクの台詞なんてシカトし、これからの事を話しながら店を出た。


 暫くしてマリーとアルフォンスの二人と合流し、何か面白い依頼でもあったのかと聞いてみると、再びあの言葉を耳にする事になったのである……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ