33話 マリー=タランタ=ブルフォント
魔物の群れを撃退して数日が過ぎ、ようやく家の周りに人がいなくなって、普段の生活に戻りつつあったのだが、『英雄』という称号が付きまとうため、これ以上の平穏はやってこないだろう。
人が集まっているだけなら放っておけばそのうち解散してくれるが、そうでもない奴もおり、隙をみて家の中へ侵入してくる輩もおり、アルとアオの二人は気が気でなかったはずだ。
場合によっては寝込みを襲ってくる奴もいるかもしれないため、侵入してきた奴を発見したときは、二度と侵入する奴が出てこないよう、半殺しにして街中を晒し者のように引きずって警備兵に突き出した。
家の警備システムを強化すればこのような出来事は起きないだろうが、普通に街中を歩いていると、全く知らない人から握手を求められたり、自分の名を轟かせるために勝負を挑んでくる奴もいたりと、平穏な生活とは程遠いものとなってしまった。
この現状を打破するためには、最悪この町を離れなければならない。そのことを二人に相談してみると、「仕方が無い」の一言が返ってきたが、一度、ギルドに相談してみてから考えることとなった。
そして、このことをギルドヘ相談しに行くと、ギルドとしては先日のような魔物の群れが、いつ襲撃を再開されるか分からないため、自分たちがこの町から離れられるのは困るらしく、冒険者たちに対して対応してくれると約束してくれた……のだが、所詮は冒険者。ギルドの依頼を受けることがあっても、名を持った『英雄』に対しては態度を変えることはなかったのであった。
しかし、いつ魔物の群れが再びやってくるのか分からないというのは事実であり、仕方がなくしばらくの間は様子を見ることにしたのだが、壊れてしまった武器を買い替えるために武器屋へ訪れると、店内に入った瞬間、店員の態度はコロッと変わり、まるでゴマをするかのように擦り寄ってきて、まるでセレブに付き添う店員の如く寄り添ってくる。
そして、武器を購入して店を出ると、大きな声でお礼の言葉を言い、「英雄様が我が店で武器を購入なされたぞ!」と、店の前を通り過ぎる人々に対して言いふらす始末。
「アル、普通はあそこまでやるのか?」
疲れた表情でアルに質問をすると、アルは苦笑いをしながら応える。
「やりませんよ……。多分、リョータさんとアオちゃんが有名人だからよ。もしかしたら、何かしら購入すれば『英雄の御贔屓店』と、でも貼り紙を出すのかもしれないわね」
本当にそんなことをやるのか気になり、建物の物陰に隠れて先程の店を見ていると、アルが言っていたように、何かの紙を店先に張り出す。
三人で観に行くと目立つため、アルにお願いして張り紙に書かれている内容を確認してもらいに行かせると、アルは苦笑しながら戻ってきた。
「どうだった?」
「『リヒテンブルクの町を救った英雄が来店した店』だって」
冗談のつもりで言ったはずのアルもドン引きしながら答える。まさか本当にそのようなことを貼り出すとは思いもよらなかった。この先、どの店に入ったとしても、同じことをされそうな気がして店の中へ入るのを躊躇ってしまう。
それからしばらく普段通りに生活を続けていたが、ついに拒否反応がで始めてしまう。その症状とは、普段は笑顔を絶やさない素直で良いアオなのだが、精神的に病み始めたようで、街の中を歩いていると、人目が気になるらしく露骨に嫌そうな顔をして歩いていた。そして、アルも家に戻るなり、深い溜め息を吐くようになっていったのであった。
魔物の襲撃事件が起きてからしばらくの間、町の外へは出ることはなかった。その理由は、冒険者カードを預けたままになっていたからである。本来であれば、直ぐに返却してくれるのであるが、今回は魔物討伐数が桁違いに多く、報酬の勘定に時間がかかってしまっているからである。
一応、毎日のようにギルドへ行き、状況を確認しているのだが、返ってくる言葉は決まっており、なかなか返却してもらうことはできないでいたが、アルはほとんど魔物を仕留めていないため、二日とかからずに返却されていた。
いい加減にしてもらいたく、苛立ちを見せながらギルドヘ向かい、店内へ入って行くと、冒険者たちは相変わらず盗み見るような目でみており、ヒソヒソとこちらに聞こえない声で話をしているが、アオは獣人のため、人よりも耳が良いのと、【聴覚】のスキルがあるため、否が応でも話し声が聞こえてしまう。
周囲の言葉が自分たちに集まっていることを明白に聞き取れてしまうため、アオは普段見せない顔をするため、アオを抱き寄せ、我慢させながらギルド職員のお姉さんに話しかけた。
すると、ようやくと言っていいほどまたされたギルドカードを返却してもらうことができるらしく、アオと共にホッと息を撫で下ろした。だが、ギルドの職員は「まだ冒険者登録をして一年も経っていませんので、冒険者ランクはH1以上上げることができません」と、言われたが、正直に言うと冒険者ランクには全く興味が無い。なので、その件については問題ないと言い、奪い取るかのように素早く冒険者カードを返却してもらった。
生活ができるだけの報酬が貰えれば問題はないと思いながら、待たされた報酬を出されると、アルは「冗談でしょ?」と、顔を引き攣らせながら言う。その額はなんと、50万Gもあり、今までこれほどの報酬を貰ったやつがいるのだろうかと思ってしまう。
すると、ギルドの職員は本当に申し訳ないと言った表情で「我々が出せる最高金額がこれだけなんです。ご勘弁していただけないでしょうか」と、アルの言葉に対して勘違いしたらしく言い、アルが何か引っ掛かったらしく、職員に対し詰め寄るような口調で「どういう事ですか?」と、聞き返す。
別にこの額が少ないなんて少しも思っていない。かなりの額だと思っているため文句はない。だが、職員の態度が少しおかしいので、アルが聞き返しただけである……が、職員は報酬が少ないと言われているらしく、頭を抱えるようにして蹲って怯えてしまう。
「ヒィィィ!! お許し下さい!」
別に何かする訳ではない。言われた意味を確認したいだけである。
「ちょ、ちょっと、どうしたんですか! 俺たちは何もしませんよ」
側から見ると、まるで脅迫しているかのように見えるため、慌てて否定をする。
「ほ、本当は150万Gなんですが、今用意できるのがそれだけで……。本当にお許し下さい!」
「いや、本当に怒っていませんよ……。それに、そういう事なら仕方のない話ですし、こちらとしては十分なくらいの報酬だとおもってますから」
柔らかい口調で言うが、信用してもらえているようには見えない。
「い、一応……これは手形になります。こ、これを見せれば……他の町にあるギルドで換金して貰う事ができます……」
このように怯えられてしまっては、この町で活動することなど出来やしないと判断し、この町を離れる事を心に決めた。これほど怯えられたり、街中を歩いていると見世物のように扱われてしまうのだから、やって行くことはできないだろう。ならば、違う町へと向かい、新たな生活を期待した方がまだマシである。心残りがあるとすれば、イルスやセリカたちに別れの挨拶できない事だけだ。
報酬を受け取ルト、直ぐにギルドから出て行き家へ帰る。そして、アオとアルにこの状況について話し合いを行った。
その結果、直ぐにこの家を引き払って町を離れることとなったが、町を離れるにしても街の道具屋で旅に必要な物が買い難いため、スマホで旅の必需品を買えないか検索すると、ロングソードは頼めば直ぐに届けてくれるとのことで、アオの分を含めてロングソードを注文し、一日ほど納品に時間がかかるが、弾丸も購入することにしたのだった。
本当であれば追加で銃も買おうと思ったのだが、今は一刻も早くこの町とおさらばしたいため、買うのを見送ることにした。
家の解約についてはアルにお願いし、自分たちはギルドへ向かい別れの挨拶をおこなう。案の定、副ギルドマスターが現れ、自分たちをこの町に留まるよう引き止めてきたが、今のままでは生活をすることができないとキッパリと言い放ち、明日の夕方には町を離れることとなった。
良くも悪くもそれなりの生活をしたリヒテンブルク。それほど長くいた町では無いが、離れるとなると感傷深くなってしまうのは、多少なりとも色々な出来事があったからだろう……。
部屋の荷物をスマホの中へ収納したのち、昨日注文した弾丸などを受け取ってから街の出入り口へと向かい、警備兵たちに惜しまれつつリヒテンブルクの町を後にした。
「ハァ〜……。これから私、どうなっちゃうんでしょうか……」
町を離れ、しばらく歩いていくと、だいぶ日が暮れ始めてきたため、次の町へたどり着くまでは野営を」する必要があり、取り敢えず今日はこれ以上先へと進むことをやめて野営の準備を始めると、アルが泣きそうな声を出しながら呟いた。
アオと目を合わせると、アオはどのように返せば良いのか考えるのだが、何を言っても無駄なような気がして、アルの言葉は聞かなかったことにして作業を続けた。
何かしら答えてくれると思っていたアルは、少しだけ拗ねたような素振りを見せるのだが、今さら自分たちに文句を言っても仕方がないと理解したらしく、それ以上、何も言わずに準備を進めていく。
日が落ちきり、食事をする……と、言っても、ウサギの肉を焼き、塩コショウを塗した物だけなのだが、食べないよりはマシだと思いながら食べ、椅子がわりにしている丸太に座ってゆっくりしていると、アオの身体が腕に寄りかかってくる。これはアオが甘えたい時の仕草であり、そっと身体を抱き寄せるように腕を背中へ回し、頭を撫でてあげた。
「リョータ様、今日は隣で休んでも宜しいでしょうか……」
少し顔を赤くしながら頬を腕に擦り寄せるアオ。もちろん断る訳はない。アルは先にテントの中へ入り、今日の疲れを癒すために眠りについている。アオは顔をこちらに向けて目を瞑るので、甘い口づけをする。焚き火の薪は『パチパチッ』と、音を鳴らしながら燃えていたのだった。
翌朝、スマホのアラームが鳴り響き目を覚ます。アオと交代しながら不寝番をしていたため、少しだけアオは眠たそうにしていたので、食事ができるまでの間は休ませることにし、軽めの朝食を作り始めた。できればアルにも不寝番をしてもらいたかったのだが、まあだ初日ということもあり、アオと二人ですることにしたのだ。
テントで寝ているアルを起こすと、昨日の疲れが取れていなかったのか、それとも緊張して眠りが浅かったのかは分からないが、眠たそうにしながらテントから出て、自分たちに見えないように大きい欠伸をして体を伸ばしていた。今後、このような野営が続く可能性があるため、できる限るアルにも慣れもらうことにして、先へと進むことにした。
スマホの地図アプリを観ながら進んでいくと、この先で魔物と人らしき反応が現れる。アプリを拡大してみると、猛獣が1つに人が5、魔物が7と記されており、どうやらこの先で戦闘が行われているようだったが、次の町へ向かうには、避けては通れない道だ。
この先の状況についてアルとアオの二人にも説明をして、現在行われている戦闘現場へと向かった。
スマホで見る限り、人数的には不利だろうが、倒せない数でもない。だけど、相手の方が実力が上だった場合も考えられるため、急いで現場へ駆けつけると、狼タイプの魔物が馬車の周りを取り囲んでおり、魔物七匹は未だ健在で、応戦している冒険者たちは苦戦しているようだった。
だが、急に割り込んで魔物を仕留めたら、後で文句を言われても敵わない。一瞬だけ躊躇して様子を伺うことにしようとしたが、見覚えのある顔が目に映り込み、文句を言われる筋合いはないと判断してアオに指示を出す。
「アオ、あの魔物たちを始末しろ」
「承知いたしました」
返事をして直ぐに銃を取り出したアオは、走るスピードを緩めることなく魔物に目掛けてトリガーを引く。音の数だけ魔物が倒れていき、あっという間に魔物の群れを片付けてしまい、交戦していた冒険者たちは何が起きたのか理解するまで立ち尽くしていた。
「よう、マリー。久しぶりだな、無事か? 怪我をしているのなら、治してやるぞ」
見覚えのある顔というのは、オークの集落で助けた人物。そして、その後はリヒテンブルクの町までともに冒険をした『マリー=タランタ=ブルフォント』だった。
「リョ、リョータさんにアオさん! 何でここに……」
「たまたま近くにいたんだよ。それよりも怪我人が何人かいるようだな。アル、治療の方を頼めるか?」
急いで駆けつけたのにアルは息一つも切らせておらず、周りの状況を確認してケガの程度がひどい人から治療を始めた。周囲をスマホで確認したが、魔物などの反応はなかったので、警戒する必要もないと判断してマリーの側による。すると、マリーは突然飛びついて抱き締めてきた。
「うわぁ! なんだよ、いきなり……」
戸惑いの声をあげると、マリーは笑いながら嬉しそうな表情を浮かべており、何が何だかさっぱり理解ができないので、引き剥がそうとしたら、アオが膨れっ面でマリーを強引に引き剥がした。
「その様子なら怪我などはしてなさそうだな。しっかし、犬っころ如きにピンチになってるんじゃねーよ」
憎まれ口のような言葉を吐くが、マリーは気にした様子はなく、「何でこんな場所にいるんですか! まさか私を追いかけて来たんですか!」などと、意味不明な言葉を発していた。
「そんな訳あるはず無いじゃないですか! たまたまこの道を通る予定だったんです。私達はリヒテンブルクの町を離れ、次の町へと向かっている最中なんです! 別にマリー様を追いかけてきたわけではありませんし、マリー様がこのような場所にいたことすら知りませんでしたよ!」
自分とマリーの間に立ちはだかるようにしてアオが言うと、マリーはアオを退けるかのようにして再び飛び付こうとして、アオに遮られる。何がしたいのだろうか、この二人は……。そもそも、マリーはこのような性格だったか?
「マリー様……大っ変申し上げ難いのですが、今はそのような事をしている状況ではないのではないでしょうか。お仲間の皆さんを大事にされた方がよろしいのでは?」
二人はまるでコントをしているかのように、ジリジリと左右に動きつつ、何かをしようとするマリーに対し、アオはそれを阻止しようと牽制しあっていた。
「リョータさん、皆さん取り敢えず動けるまで回復させました。これで直ぐにこの場から移動するくらいは出来そうですし、馬の方も怪我は無いようです」
怪我人の治療をしていたアル。一通り作業が終わったらしく状況を報告してくれる。
「了解、分かった。それで、マリー。お前は馬車の護衛をしていたのか?」
何故マリーがこの場所にいたのか確認すると、マリーはアオを避けながら答える。
「は、はい……。ちょっとアオさん! そこを退いて下さい!」
二人は左右に動き、まるでカバディでもしているかのようで、少し笑いがこみ上げてきたのだが、何とか我慢することができた。
「嫌です! リョータ様はアオのご主人様です!」
アオはアオで何か必死に阻止をしようとしており、マリーの行く手を拒む。先ほどからこの状況が続いており、話が全く進む気配がない。仕方がないので他の冒険者に話を聞く事にして、何がしたいのか分からないが、牽制しあっている二人を放っておくことにした。
マリーがメンバーに加わっている冒険者に状況を確認すると、どうやらリヒテンブルクの町で荷馬車の護衛を依頼されたらしく、その道中、先ほどの魔物たちに襲われてしまい交戦していたようだ。
狼のような魔物の名は『バウンドドッグ』という名らしく、通常ではこの辺りに出現することのない魔物らしく、油断をしてしまったようだ。
先日あった町の襲撃事件なども滅多なことではないと起きないらしく、バウンドドッグのような魔物も出没するようになっており、何やらよからぬ事が起きる前触れではないかと思ってしまう。
もしくは、この辺りの生態系に少しばかり何か変化が起きているのかもしれないが、もう少し気を引き締めた方が良いのかもしれない。
この冒険者たちは、リヒテンブルクの町で起きた魔物の群れ襲撃事件を知っているらしく、町を救った英雄と言われている人を目の前にして、少しばかり緊張しているようにも感じ取れる。
「い、いやぁ……。マリーから聞いていたが……本当に知り合いだったんだな」
笑いながら仲間の冒険者がマリーに言うと、「嘘なんて言いませんよ! もぉ!!」と、マリーは頬を膨らませながら言う。マリーの怒りっぷりが皆の笑いを誘ったらしく、他の冒険者たちも緊張が解れたかのように笑うのであった。
見た限りマリーはこの冒険者たちとは随分と打ち解けあっているようで、少しだけ安心した気持ちになる。何せ、初めは全くのダメダメ冒険者だったのだから、そう思っても仕方がない。
しかし、マリーの他に四人いたはずで、特にイースとはそれなりに気があっていたように思え、一緒に組んでいると思っていたのだが、イースの姿はなかった。
「あれ? お前、イースと共に行動していたんじゃないのか?」
イースのことをマリーに質問すると、マリーは少しだけ困ったような顔をして答える。
「イースは他のパーティに入りました。私達だけだと効率が悪いことが分かり、お互いに別の道を……」
マリー曰く、喧嘩別れをしたような訳ではないらしく、一緒にやっていくにはお互い馴れ合い過ぎてしまい、冒険者として上達しないのではないかという話となって、お互いに別の道を歩むことにしたようだった。
アオが仕留めた魔物をスマホへ収納すると、マリーのパーティリーダーらしき冒険者から、次の町まで共に同行してくれないかと言われ、断る理由がないため了承する。すると、噂の人物と共に行動できることが嬉しいらしく、冒険者一行はかなりはしゃいでいるように見受けられた。だが、先ほどまで大変な思いをしていたのだからそれくらいは良しとしておこう。
「彼らはマリーのパーティメンバーに加わったのか?」
歩きながら質問すると、マリーは苦笑いする。
「いや〜、とても残念な話なのですが、まだ私は冒険者と言っても新米なので、正式なメンバーではありません。今回、荷馬車の護衛をする面子を集めていたため、リョータさんやアオさんの名前を使わせて頂き、一緒に同行することを許可して頂きました。まぁ、簡単に言えばお試し期間のようなものです」
少し恥ずかしそうな顔して教えてくれる。どうやらイースと別れた後、1人で行動しているようだ。
「新米同士でパーティを組んだほうが良くないか? ランクが上の連中と一緒にいて足手まとい扱いされるより、お互いが助け合って経験を積む方が効率が良いとおもけど」
「確かにパーティを組みたいのですが……私が入りたいところは……えっと、そのぉ……難しいところなんですよねぇ」
マリーのは言い方からすると、どこか入りたいところがあるようだ。だが、そのパーティはかなり気難しいところのようで、簡単には入れないようだ
「へぇ〜。でも、聞くだけ聞いてみたらどうだ? もしかしたら、入れてくれるかも知れないだろ?」
気難しいと言っても、所詮は新米冒険者の集まり。選り好みしているようなバカはそれほどいないはずである。聞くだけ聞いてみなければ分からないものだ。
そんなことを思いながら言うと、マリーの表情は一変する。
「ほ、本当ですか!!」
顔を近くに寄せながら声を大きく上げてマリーは言う。それを見たアオが、慌ててマリーを引き離した。
「リョータ様に近寄り過ぎです! マリー様!!」
まるでリスのように頬を膨らませながらアオが間に入ると、マリーも同じように頬を膨らませながらアオを見つめる。いったい何が起きているかさっぱり理解できず首を捻ると、アルは「随分とリョータさんはおモテになるんですね」と、笑みを浮かべながら言うが、目が笑っているように見えない。
女性の考え方に理解ができず、もう……苦笑いをする事しかできないのであった。




