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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
32/105

31話 懐かしき冒険者?

 アルが家に住みついて1ヶ月が過ぎたころ、ようやくアルは一人でゴブリンを仕留めることができるようなった……とは言っても、剣の扱い方をアオが何度も教えても、アルは才能がないのか、上手(じょうず)に剣を扱うことができず、遠距離支援武器の弓と銃をメインとした戦い方となる。近接戦闘では、ナイフを駆使して戦うことはできると思うが、今の状態では、身を守れる……とまではいかないだろう。


名前:アルケミ=エレ=サナタリ

年齢:19

Lv:3

HP:8

MP:10

STR():4

AGI(敏捷):3

DEX(器用):14

VIT(生命):5

INT(知性):10

スキル:【鑑定1】【家庭技術2】【弓1】【射撃1】

生活魔法:【浄化】

回復魔法:【リカバ】


 アルは魔法の流れを掴むまでは時間がかかったが、そこから先はセリカよりも早く覚えることができたため、セリカよりも魔法に関してセンスがあるのかも知れない。

 もしくは、基本的にアルは努力家なので、何が何でも自分のものにしたいという気持ちが形に現れたのかも知れないが、魔力さえあれば誰でも覚えることは可能なのだろう。

 一番感心したのは、「魔力の流れが分かれば、何にでも応用が利く」という言葉だ。

 その言葉の通り、アルは【浄化】の魔法を覚えたあと直ぐに【リカバ】の魔法を習得してしまった。そして、今は時間が空いたときがあれば、木の棒を的にして【ファイア】の攻撃魔法を練習しており、非常に頼もしい存在となった。

 どこかの寄生虫とは大違いで、アオの言葉を素直に耳を傾けて冒険者として一人前になれるよう努力している。本当に寄生虫とは大違いだ……が、その寄生虫が何故か家に来ており、アオとアルが顔を引き攣らせながら椅子に座っていた。


「へぇ~。あんた、それなりに良い家に住んでるじゃない」


 野宿ばかりしていた奴がどの口で言いやがるのだろうか……。


「――黙れ、この寄生虫野郎!」


 他の人に聞こえない声で呟きながらセリカを睨みつける。

 何故、寄生虫ことセリカがこの家に来ているかというと、時間をさかのぼること3時間前……。アルの訓練を終わらせて町のギルドへ戻り、換金を行おうとしていたところ、後ろから声をかけられたので振り返ると、エリエートの町で知り合った冒険者のイルスが立っており、嬉しそうな顔をして手を振っていた。

 どうやらイルス達もエリエートの町から離れ、この町で活動するすることを選んだらしいが、相変わらずカルキダもおり、まるで虫でも見るかのような目でこちらをみていた。こちらが何かをした訳でもないのに、どうしてカルキダ(こいつ)はこのような態度をとるのかさっぱり理解ができないし、いい加減腹が立つのを通り越して、あきれ返ってしまう。

 それに、寄生虫ことセリカも一緒にいるということは、取り敢えずイルス達の役にはたっているという事なのだろう。もしくは、何か弱みでも握っているのかも知れず、離れたくとも離れられない事情があるのかも知れない。


「リョータも元気そうでなによりだよ」


 嬉しそうな顔をしてイルスが駆け寄ってくる。


「イルスこそ元気そうじゃんか。それにカルキダやセリカ……さんも」


 危うく呼び捨てで呼んでしまいそうになり、一瞬だけどもってしまった。セリカも親し気な態度はとらず、他人行儀に軽く会釈をするだけで留めていた。

 それからしばらくの間、ギルド内で立ち話をしていたのだが、「リョータは何処の宿屋に泊まってるんだ? もし良かったら一緒に食事でもしないか?」と、イルスが言うものだから、つい、家を借りたことを話してしまうと、イルスは目を輝かせていたため、「家で食事でもどうだ?」と、社交辞令で言ってみると、イルスは断るということは知らないらしく、家に来ることになってしまった。

 しかし、カルキダは「俺は遠慮しておく」と、不愛想な返事を返し、その場から立ち去っていくのだが、セリカはイルスの後ろで目を輝かせながらこちらを見ており、アオと共に小さく溜め息を吐いたのだった。

 家に招きいれ、イルスに近況を聞くと、活動拠点をエリエートからリヒテンブルクに移し替えたらしく、最近この町へとやってきたらしい。

 どうやらイルス達は同時期に冒険者となった自分たちに触発されたらしく、色々な町などを訪れ、見分を深めたくなったらしいのと、エリエートよりもリヒテンブルクの方が稼ぎが良いからとのことだった。

 それにセリカの奴が、最近になってようやく【ファイア】の魔法を覚えたらしく、戦いの幅も増えたという事も要因の一つらしい。


 そして、イルスがトイレへ行くと言って席を立って、今に至るわけである。


「何よ、久し振りに会ってその言い草は……」


自分が今までしたことを忘れているかのような口ぶりでセリカは言う。それがまた、深く苛立たせる。


「黙れ。この穀潰しが! あのなぁ、お前は何か勘違いをしてないか? イルスは良い奴だし友達だ。だけど、お前は友達でも何でも無い! ただ人に寄生するしかできない虫だ!」


 少し強めに言うが、セリカは全く動じた様子はない。その様子を見ていたアルが、セリカに聞こえないよう、小さい声でアオに質問をする。


「ね、ねぇ……アオちゃん、この方はリョータさんとどのような関係なの?」


 アオは苦笑いをしながら返答する言葉を選んで、アルに耳打ちをする。


「この方は……そのぉ……セリカ様というお名前で、エリエートの町にいた頃、リョータ様のアシスターをやっていたのですが……そのぉ……アル様もご存じかと思いますが、リョータ様にアシスターは必要ないので……」


 アルにはスマホの機能について説明をしていないが、魔物や猛獣を索敵できる道具を持っているということだけは理解しており、アオの話を聞き「なるほど……そういうことか」と、何かを悟った様な顔をして、アオと共に台所へと向かった。


「随分立派な家を借りたんだね、流石リョータだね」


 トイレから戻るなり、イルスは家を褒めてくれる。


「それ程でもないよ。イルス達も直ぐに借りれるようになるさ」


 別に謙遜しているわけではない。この町へ来ることができるだけの力があるのだから、イルス達でも借りることはできるだろう。


「僕達には当分無理だよ、リョータ程の実力は無いからね」


 少し恥ずかしそうな顔をして、笑いながらイルスは言う。隣に座っているセリカだが、イルスがいるため黙って座っており、寡黙な魔法使いのふりをしているようにみえる。

 昨日の残り物を使ってアオとアルが簡単な料理を作り、席へと運んでイルス達の前に並べ始めると、セリカが何やら目配せのようなしぐさをしていたが、何をしたいのか理解に苦しむ。

 料理を並べ終え、イルスが「カルキダも来ればよかったのに」と、少しだけ残念そうな声で言ったところでアルを紹介していなかったことに気が付き、イルスに向かってアルを紹介した。


「イルス、紹介するよ。俺達の仲間で、名はアルケミ=エレ=サナタリさんというんだ。後衛を担当してもらっている」


 そう言ってアルを紹介すると、セリカはジト目でアルを見つめているが、イルスは爽やかな笑みをうかべながら「初めまして。僕はイルス=デル=アリアリで、彼女はセリカ=ミラ=イライザさん」と、自己紹介をしてくれた。だが、今更ながらセリカのフルネームを知る。


「は、初めましてアルケミ=エレ=サナタリです。『アル』って、呼んで下さい!」


 爽やか青年で礼儀が正しいイルス。アルは慌てて立ち上がり頭を下げると、イルスも立ち上がり「こちらこそよろしく」と、爽やかな笑顔で手を差し出し、アルは手汗をかいたのか、手を服にこすりつけた後、差し出されたイルスの手を握る。その顔は少し赤らめていた。

 もちろん、セリカもそれに習うよう自己紹介をして握手を交わした……が、アルは一瞬だけ何か痛みを感じたような表情をみせたが、直ぐに表情を戻して苦笑いするかのようにほほ笑んだ。

 それからしばらくの間、イルス達と再会するまでの話をしたり、イルス達の冒険譚を聞いたりして時を過ごし、二人はカルキダの待つ宿へと戻って行った。

 二人を見送る際、アルが「私、セリカさんに嫌われてるのかな?」と呟き、二人の姿が見えなくなったところで何故そう思ったのか聞いてみると、握手を交わした際、セリカは力を込めて握ったらしく、アルは何か気に障るようなことしてしまったのかと思ったらしい。


「アル、別に気にすることはない。イルスがいる前だから言わなかったが、以前、セリカと一緒に行動を共にしたことがあったんだよ。思いっきり使えないやつでさ、仕方がなく魔法を使えるまで育ててやったんだけど、喧嘩別れのような形で一緒に行動をしなくなったんだ」


 セリカと一緒にいた時のことを手短に説明すると、アルは何かを察したらしく、疲れた表情をみせる。


「考えるだけ無駄だよ。あいつは隣の芝がきれいに見えるタイプらしいから、アルに嫉妬しているんだよ」


 そう言うと、アルは「そうなら良いけど……」と、アルは項垂れる。


「セリカ様はそういった所がありますからねぇ……」


 呆れた様子でアオが言うと、アルは苦笑いをするのだった。

 それからイルス達が家に訪れてから数日が経ち、何か新しい依頼が入っていないか確認するためギルドへ向かうと、ちょうど出入り口からイルス達が誰かと話しながら出てくる。

 少しだけ真剣な顔で話をしていたため、声をかけるのをためらっていると、イルスの方がこちらに気が付いたらしく、足を止めた。


「やあ、リョータ!」


 イルスがあいさつしながら駆け寄ってきた。イルスの後ろにいたカルキダは、嫌なものを見つけたかのような目で見ており、セリカの奴は他人のふりをしているかのような態度だった。


「よぉ、イルス。これから仕事へ行くのか?」


 仕事と言えば聞こえは良いが、やることと言えば魔物や猛獣討伐である。


「うん、そうなんだ。僕たちはこれからカイザーテルスっていう町へ行くことになったんだよ」


「カイザーテルス?」


 初めて聞いた場所だったので聞き返す。


「あぁ。ちょっとしたお使いのような依頼だよ」


 お使いの依頼ということは、ギルドか貴族の荷物を誰かに渡す仕事であるが、自分たちは何故だか一度もそのような仕事を斡旋してもらったことがないため、人伝にそのような仕事があるのを教えてもらっただけであるが、特別難しい依頼ではないらしいく、それなりの冒険者であれば簡単な依頼で、報酬もそれなりに良いらしい……が、何故か一度も斡旋してもらったことはない。 


「へぇ~。まぁ、あまり無理するなよ。お前の肩には2人の命が掛かっているんだからな」


 イルスの実力を知っているためそれほど気にはしていないのだが、お供についている奴らは信用ができない。


「分かってるって。リョータも頑張ってね」


 爽やかな笑顔で答えるイルス。その爽やかな顔で言われたら、大抵の女性はメロメロになってしまうだろう。セリカが良い例である。


「あぁ。お互いに頑張ろうな」


 負けじと爽やかに言ってみるが、自分の目つきの悪さを知っているだけに、悔しさが込み上げてくるのは仕方がないだろう。

 イルスはアルとアオに挨拶をすると、何故かカルキダは自分を無視してアルとアオだけに挨拶をして立ち去っていく。何故、カルキダは自分のことを目の敵のようにしているのだろうか……。

 しかし、カイザーテルスの町へ行くとイルスは言っていたが、ギルドでどの様な依頼を受けたのだろうか。依頼内容は気になるが、今更彼らのあとを追いかけて、依頼内容を教えてくれと聞くわけにはいかないだろう。まずは自分達の仕事をこなすことに専念することにした。

 それから数日が経ち、アルはアオと射撃の練習をしている。意外とこの2人は気が合うらしく、仲は良い。できれば二人が「キャッキャ、ウフフッ」を、しているところを見て見たいのだが、決してそのような事はしてくれない。

 遠まきに練習している二人を見ながらお茶をしていると、遠くの方から鐘を叩く音が聞こえてきた。何事だろうと音のする方に目をやるが、家の中からでは様子を知ることができない。

 大した事はないだろう思っていると、アルはともかくとして、アオが慌て家の中へ入り装備を整え始めた。


「ん? どうしたんだ? 二人共……」


 なにが起きているのかさっぱり理解できず、慌てている二人に問いかけると、アオが立ち止まった。


「リョ、リョータ様! この鐘は緊急招集の音です! ギルドが、ギルドがこの街にいる冒険者たちを緊急招集しているんです!」


 そう説明をしてアオは家の戸締まりを始める。冒険者ギルドヘ何度も通っているため、このようなことに関しては随分と詳しくなっているし、この世界の住人であれば、緊急招集の音くらい知っていて当然なのかも知れない。


「緊急招集……ねぇ」


 そうひと言呟きつつ戸締まりを始めているのを見つめていたところ、アオにギルドへ向かわなければならないと急かされたため、のそのそと準備を始める。二人は「急いで!」と、言いながらギルドへ向かって行く。アオは自分が冒険者として育てたので当たり前かもしれないが、アルは元々町娘で戦いとは全く無縁だったのに、今ではすっかり冒険者として板に付いている。しかも、最近ではギルドへ行くたびにアルだけ声を掛けられる事が多く、そのほとんどんが自分のパーティに入らないかというスカウトだった。

 現状、アルは後衛としては申し分のない能力を身に付けているし、回復魔法だって習得したため立派な戦力として頭数に入れることができる。しかも、鑑定能力だってあるのだから、旅のお供としては最適だろう。

 それに、アルの顔立ちはよく胸もそれなりに大きい。だけど、アオがもアルに負けないほど可愛いし、なんでもいうことを聞いてくれる。それは奴隷だからかも知れないが、嫌なものに関してはしっかりと断ることだってある。

 あまり緊急招集に関して関心がないが、急げと二人が()かすため仕方がなくギルドヘ向かうと、ギルドの入り口前は冒険者たちで埋め尽くされており、なにが起きているのかわからず呆気にとられてしまう。


「おいおい、なんだか随分と物々しい雰囲気だな……。なにが起きているんだ?」


 入り口前にたまっている冒険者を観て呟やくと、こちらに気がついた冒険者が声をかけてくる。


「よぉ、リョータ! 相変わらず可愛い仲間を引き連れているじゃないか」


 この町で暮らすようになり、それなりに知り合いの冒険者は増えてきた。だが、それはやっかみに近い奴が多く、会うたびに同じことを言ってくる。


「アルちゃん、いい加減リョータのところじゃなく、俺達のところへ来る気はないか?」


 下心全開の顔してアルに言い寄る冒険者。アルは毎度のことだから慣れた様子でやんわりとお断りしていた。

 ギルドホール内は冒険者で溢れかえっており、室内はワイワイと騒いでいるため、中でなにが起きているのかさっぱり分からない。すると、ギルドホール内から大きな声で黙るように誰かが叫ぶと、先ほどまで騒いでいた冒険者たちは一斉に黙り込む。


「お前ら!! 今この町に危機が迫っている!!」


 少し偉そうな口調でオッサンが叫ぶと、小さな声で「危機が迫っているってどういうことだ?」と、囁く者たちがいた。


「誰? あのおっさん」


 人の隙間から覗いてみると、見たこともないチョビ髭のオッサンがカウンターの上に立っており、偉そうにふんぞり返っていた。


「んも〜……。副ギルドマスターですよ、知らないんですか? 何度かギルドで見かけたじゃないですか」


 呆れた声でアルが教えてくれたのだが、「男に興味はない」などとは言えず、「へぇ~」と、まの抜けた声で返すだけに留めた。


「魔窟の森にいる魔物が、この町へ向かっているとの情報が入った! その数は数百匹!!」


 数百という言葉にざわつき始める冒険者達。


「基本的にオークとゴブリンと大多数を占めていると報告は上がってきているが、全貌はみえてねぇ!! 奴らの数が多すぎて調べきれねぇ。だがな! お前達が逃げたらこの町はどうなる!! このリヒテンブルクはどうなっちまう!!」


 怒鳴るようにチョビ髭を生やした副ギルドマスターが言う。町が魔物に襲われるということは、当然ながら男は殺されてしまうだろうし、女は攫われて陵辱されてしまうだろう。


「お前達は冒険者である前に、勇敢なる戦士でもある!!」


 副ギルドマスターが怒鳴るように言うと、怯んでいた冒険者たちが息を吹き返したかのように威勢よく返事をして副ギルドマスターは嬉しそうに笑う。その光景を側から見ていると、非常にむさ苦しさを感じてしまい、若干引き気味になる。


「今回は街の危機ということで、報酬は通常の倍をやるつもりだ! 死んでもこのリヒテンブルクの町を死守しろぉ!!」


 副ギルドマスターの言葉に「おおぉ!!」と、冒険者たちは声を揃えて雄叫びのように気合の入った声をあげる。冷静に周りの状況を見ているのは自分だけかと思っていたら、アルもかなり冷静だったらしく、頬を引き攣らせ途方に暮れた顔をしていた。側から見ると美人が台無しだが、あえて本人には言わないでおこう。

 しかし、魔物の群れが向かってきていると聞いて、アオは不安そうな顔してしがみついてきた。


「大丈夫だよ、何があってもアオは俺が守ってやるから」


 不安そうな表情をしているアオに言うと、アオは少しだけ安心したかのような表情に変わる。だが、その隣に立っているアルはなんとも言えない表情をしており、力ない声で「私は守って貰えないんですか……」と、呟や区ため、小さくため息を吐いて「……分かってるよ。全く……」と、答えると、まるで捨てられた子犬のような目でこちらを見ており、強い脱力感に襲われたのであった。


 副ギルドマスターの説明では、魔物の群れは明日の昼頃には町の監視塔から目視で確認できるところまで迫ってくるとのこと。そのため、それまでに「戦える準備を済ませるように」と、副ギルドマスターは言い残して奥へと引っ込んでいった。

 他の冒険者たちは戦の準備をするため、町の道具屋へとゾロゾロと向かっていく。だが、準備をするにしても、町にある道具屋などの数は限られており、今更向かったところで目ぼしい道具などはほかの冒険者たちが購入してしまうため、取り敢えず家へ戻って食事の準備をすることにしたのだが、アルは不安そうな顔をしているため、「大丈夫だよ、これだけの冒険者がいるんだから心配する必要無いし、何かあったら俺がどうにかするよ」と、緊張をほぐすつもりで言ってみたのだが、あまり信用されていないのか、肩を落としながらあとをついてくるのであった。

 家に戻り、アルとアオは戦の準備をはじめる。だが、時間はすでにお昼近くになているため食事の準備を始めていると、あるが呆れたような目でこちらを見てから、どこか別の場所へ行ってしまった。常識的に考えればアルのように戦いの準備をした方が良いであろうが、腹が減っては戦はできぬと昔の人が言っており、腹を満たしてから難かしいことを考えればよい。

 最近の食材は町の外で手に入れたものばかりで、町で食材などの買い物は殆どしていない。そのため所持金は10万を超えており、魔物の襲撃に備えて、少しばかりスタータスを弄っても良いのかもしれない。


「アオ、アオは俺を守ってくれるんだよね?」


 念のため、いつかの約束を忘れていないか確認してみる。


「も、もちろんです! アオはリョータ様のためなら死ねます!!」


 死ぬとは物騒な話だが、その心意気は良しとしておき、スマホで能力を弄れることについて覚えているのか、改めて聞いてみる。


「前に説明したこれのことは覚えてるか?」


 そう言ってポケッっとに仕舞ってあったスマホを取り出してアオにみせると、アオは少しだけ目を細め、可愛く首を傾げてはに噛んでみせる。もぉ、本当にこの生き物はなんでこんなに可愛いのだろうか……。


「えっと……それ、何でしたっけ?」


 どうやら本当に忘れているらしく、再び説明をすることになった。スマホについて説明を終えると、アオは「流石リョータ様です!」と、本当に理解をしているのか疑問に思う言葉を発し、魔法を覚えたことについては何かしらの技を使った……と、勝手に思い込んでいたようだ。

 スマホにはアルのステータスも表示されているため、アルのステータスを弄ることが可能な状態である。この町に魔物の集団が押し寄せており、かなり危険な状態に陥っているため、アルにも同席してもらいスマホの能力について説明すると、元々商売を行なっていたことが幸いし、アルは直ぐにスマホの能力について理解を示す。

 しかし、自分たちのステータスについては数値化されていることを説明しすると、アルは自分がどれくらいなのかと質問してきたため、正直に話した。すると、アルは自分のステータスが低いことにかなりショックを受けたらしく、椅子の背もたれに寄っ掛かり、天を見つめる。その姿は言葉で言い表すこともできないほど落ち込んでいるように思えてしまう。

 少しの間、誰も声を発せずに黙っていると、ようやくアルが現実を受け入れたのか、深い溜め息をしてアオのレベルとステータスについて質問をしてくる。だが、本当に答えて良いのかほんの少しだけ迷ったが、隠し事をしていても始まらないため、正直に教えてあげると、アルは再びショックを受けたらしく、今度は項垂れてしまうのであった。

 何故、アルがショックを受けたのかと言うと、アオと同レベルなのに、ステータスはアオの方が上だった事が非常にショックだったらしい。


「ーーで、皆が生き残るために少しばかりステータスを上げようかと思うんだけど、どうだろう?」


 一通り説明を終え、本題に入る。魔物の襲撃に備えろと言われ、焦ったってしょうがない。今は自分たちがどうやったら生き残れるのか、それを話し合うべきである。


「その……『すてえたす』とやらを上げることで、アオがリョータ様をお守りすることができるのですか?」


 コイツ、人の話を聞いていたのか? と、言いたくなって、深く息を吸い込んだところでアルが優しくアオにスマホの機能について、自分なりに理解した内容で説明を始める。別にアオの頭が悪いと言う訳ではないが、この世界にスマホなんて物がある訳ではないため分からないのが当たり前であり、そもそもの話、このスマホの機能が常識外れなため、理解しろというのが無理な話である。

 どうやらアルはいままでの武器や言動について思うところがあったらしく、普通では理解し難い代物に対しての理解が早かった。

 そして、アオでも分かりやすく、丁寧に説明をして、ようやくアオは理解したらしく、もう少しで唇が触れる距離まで顔を近づけ、唾を飛ばしながら言い放つ。


「アオはオークを片手で捻り潰せるほど強くして欲しいです!! アオが強くなれば、リョータ様をお守りすることができますし、アル様だって守ることができますから!!」


 もの凄い剣幕で強くなりたいと言うアオ。しかし、人の顔に唾が飛ぶほど近付いて言う台詞ではない。取り敢えず顔に付いたアオの唾をハンカチで拭き取ってから、現在までのステータスを確認してみることにした。


名前:アオ

年齢:16

Lv:3

HP:43

MP:6

STR():23

AGI(敏捷):25

DEX(器用):29

VIT(生命):24

INT(知性):15

スキル:【超回復】【丈夫】【聴覚2】【嗅覚2】【剣技2】【狙撃2】【弓2】

生活魔法:【浄化】


 アオのステータスについてはエリエートの町で上げて以来なにもしていなかったため、それほど上がっている訳ではないが、アルを鍛えていた成果もあり、狙撃と弓のレベルが上がっていた。

 そう言えば、洞窟でアルタロス(牛の化け物)の蟀谷(こめかみ)を撃ち抜く程のレベルがあるのだから、狙撃のレベルが上がっていてもおかしくはない……が、正直に言って少しああかり悔しい気持ちになってしまったのは言うまでもなかった。

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