26話 新しい生活
ようやくアオと2人で過ごす生活ができる事となり、宿屋へと戻る。
すると、イースとマリーの2人と出くわし、一緒に食事を食べないかと誘われてしまう。別に断る理由もないのだが、いつまでも彼女たちにかまわられても面倒なので、別の宿を探すという理由で断りを入れた。
そして、部屋に置いていた荷物を片付け、5人が宿泊している宿屋を後にすると、アオは少しだけ寂しそうな顔をする。
「そんな顔をするなよ。今は別の町へ行くつもりはないんだから」
その言葉に少しだけ表情を緩めるアオ。
なんだかんだ言って、彼女たちのことが心配なのだろう。今までいた宿屋から離れた場所に安い宿屋があったが、雷の剣亭よりも建物が古く、エリエートの町で泊まっていたアスミカ亭よりも小さい。
取り敢えず入る事にしたのだが、中はもっと酷かった。
その夜、今後についてアオと話し合うと、アオは「リョータ様がお決めになったことに反対は致しません」と、答えるため、話し合いにすらならない。
仕方がないので幾つか案を出すが、アオは笑顔を絶やすことなく「お任せいたします」と返すので、話に結論が出なかった。
翌朝、目を覚まして朝食を食べに出かける。
いつもであれば宿屋の食堂で朝食を食べるのだが、今回泊まっている宿屋には食堂がないため、外に行くしかない。
その面倒臭さに耐えることができないと感じ、朝食を食べ終わると直ぐに不動産屋へ向かった。エリエートの町にいたときに確認したのだが、どこの町でも基本的に不動産屋があるらしく、皆は不動産屋で家を買ったり、借りたりするらしい。
どこの世界にも不動産屋があるのはデフォルトなのだろうか……。
少し町をぶらつき、不動産屋の看板を発見して立ち止まると、アオはポカーンとした顔で不動産屋の看板を見つめおり、何かを考えているようには見えなかった。
そんなアオを尻目に店の扉を開けて中に入る。
「いらっしゃいませ。今日はどの様なご要件でしょうか?」
店の中に足を踏み入れると、女性店員が声をかけてくる。
このように積極的に話しかけてくる接客は嫌いなのだが、普通のお店と異なっているため仕方がない。
取り敢えず宿屋の生活を止めたいと話、席へ案内され、座って待って待つこと数分……。笑顔を崩さなさそうな男性店員がやって来て、対面の席に座り手に持っていた書類をテーブルの上に並べ始める。
笑顔を絶やさない男性の隣には、新人らしき男が少しだけ不安そうな表情で隣に立っていた。
「えっと……先ずはどのような家があるのか教えてくれますか? できれば部屋が3つくらいあると助かりますかね」
要望を述べると、「なるほど、そうですか……」と、笑顔を絶やさず資料をペラペラ捲り、条件のあった建物を探し始める。そして、幾つかの建物が画かれた皮紙を取り出して「これなど如何でしょうか?」と、勧めてくる。
紙に書かれている建物の概要を手に取って確認する。画かれている建物の絵は想像していたよりも大きく、室内も全て3LDKで画かれていた。アオは後ろに立っていたため覗き込むように見ており、少しだけ尻尾をソワソワと揺らしていた。
「では……これと……これの建物を拝見させてもらいたいのですが……」
画かれている中でも庭付きの建物をチョイスしてみると、座っていた店員が隣に立っていた男性に案内するよう指示し、準備をするから外で待っていてほしいと言われ、先に外へ出て店員の準備が終わるのを待つ。
緊張した表情で男性店員は、見せて欲しいとお願いした建物へ案内するため歩き始める。どうしてこんなに緊張しているのか分からないが、取り敢えずついて行くことにした。
しばらく歩くと目的の建物に到着したらしく、顔を強張らせながら建物について皮紙を見ながら説明してくれる。
話を聞きながら建物の外装を見る。皮紙で見たよりも建物の外装は朽ちており、やはり皮紙に画かれている建物は、所詮ただの絵だということだ。
辺りを見渡しても、近所にある建物はそれなりに劣化しており、どの建物を観ても同じ状況なのだろうと思いを巡らせると、店員は話を聞いていないことに気が付いたらしく、少しだけ顔を引き攣らせていた。
このまま何もしないのは可哀想だと思い、建物の中を確認させてもらう事にして玄関のドアを開ける。
かなりの間、この建物は使用されていなかったらしく、埃がかなり積もっていのが分かる。
この様子だと、どこの部屋を観ても大して変わらないだろう。どの建物を借りたとしても、大掛かりな掃除が必要になる。
少し黴臭く、中に入るのを躊躇ってしまう。
しかし、皮紙に画かれている間取りなのか確認しなければならず、建物の中へと足を踏み入れた。
すると、中を見渡していたアオが、何度もくしゃみを繰り返す。
アオは獣人で鼻が人よりも良いため、埃に敏感なのだろう。何かの病気になられても困るため、建物の外へ出るように指示すると、アオは慌てて建物の外へ出て行った。
部屋の広さを考えると家賃が月額1,500Gと意外と安い。
何故、家賃が安いのか確認してみると、店員は資料をペラペラ捲り、家賃が安い理由を探して答える。
家賃が安い理由は、街の外れに建物があるから……との事だった。やはりこの店員は新人なのだろう。
この程度の質問くらい、誰だって思いつくはずである。
他の建物を観ても同じだろうと思い、この家を借りると店員に話すと、契約のため不動産屋に戻り、契約書にサインをして一年分の家賃を支払う。
店員から玄関の鍵を受け取り、アオに鍵を渡し新居の掃除を命じ、自分は生活用品を購入するために道具屋へ向かった。
生活するうえで必要なのは布団であろう。
10月の半ばに差し掛かっており、夕方になると肌寒く感じてくる。
今後のことを考えると、徐々に気温が下がってくるはずだから、明日はアオと共に服も買いに行った方が良いかもしれない。しかし、この世界で売っている服は基本的に古着しかない。
新品は仕立屋に行って、オーダーメイドになってしまうようだ。
古着でもそれなりの金額なのに、オーダーメイドだといくらになるのか想像ができない。
生活用品を購入し家に帰ることには日が暮れ始めていた。
掃除の状況はどうなっているのか少しだけ心配しながら玄関のドアを開けると、アオは埃を吸わないよう、顔にタオルを巻いて掃除をしていた。
「あ! リョータ様! お帰りなさいませ!」
玄関のドアを開けた音で、帰ってきたことが分かったらしく掃除の手を止めて出迎えてくれる。
「どうだ? 掃除の方は」
「申し訳ありません。アオの仕事が遅く、まだ一部屋しか掃除が終わっておりません」
申し訳なさそうな顔をし、耳も尻尾も元気なく垂れ下がっている。
「気にするなよ。先ずは飯の準備をしようぜ」
「しょ、食事……はい……」
何故か元気がないアオ。
いつもであれば食事と聞くと、元気になるはずなのだが、どうしてなのか全く元気がない。訳が分からないためキッチンへ向かって見ると、そこは竈で調理する台所で、蛇口などがある台所ではなかった。
「……ねぇ、どうやって水を汲むの?」
ゆっくりと顔をアオに向けて質問をすると、アオは難しそうな顔をしながら外を指さしたので、指さした方から外へ出てみる。すると、そこには釣瓶井戸があり、アオは面倒臭そうな顔をしながら桶を井戸の中に入れ、水を汲み上げる。
その顔は珍しくふて腐れているように見え、唇は尖らせながらこちらに顔を向けた。
「……こうやって水を汲むんです」
どうやら掃除をするために何度も井戸から水を汲み上げたらしく、水汲み作業が一番時間を使ったらしい。そして、滅茶苦茶疲れたらしく、無理に笑顔を作ろうとしても作れないほど疲れたそうだ。
「これも改良しなきゃならないな……」
「改良……ですか?」
どうやって改良するのだろうと首を傾げながら考えるアオ。
だが、それよりも先に食事の準備をしなければならないが、これで食事を作るのはかなり大変である。
取り敢えず、今日は雷の剣亭で食事をすることにして、明日から本気を出そうという事になった。
食事を終わらせ家に帰る道中、お腹が膨れて気を良くしたのか、アオが腕に絡まるよう抱きついてくる。防具を着ているわけではないため、アオの胸がダイレクトに当たっており、柔らかくて気持ちが良いと感じた。
家に帰り着き玄関のドアを開けると、中は真っ暗で不気味に感じてしまう。すると、アオは「そう言えば明かりはどうするのですか?」と聞いてきた。
通常であれば光魔石を購入するか、蝋燭で対応するらしい。だが、明かりが有る事が当たり前の世界で生きていたため、もちろん用意などしていなかった。
だが、ライトの魔法を覚えているので明かりに困ることはない。魔法を使い、明かりを灯して中へ入り、アオが掃除してくれた部屋に布団を並べるように敷くと、アオは子供のように敷いた布団の上にダイブした。
「おいおい、身体を洗っていないのに布団に飛び込むなよ……」
この家を綺麗にするために埃まみれになっているアオをたしなめると、アオは笑いながら起き上がる。
「アハハ……申し訳ありません。直ぐに浄化の……あっ!」
そこまで言ってようやくアオは気が付いた。浄化の魔法を使えば掃除は簡単に終わる事に。
「ま、まぁ……気が付いただけ良かったんじゃないか?」
「そ、そうですよね! アハ……アハハ……」
誤魔化すようにアオは笑うのだが、そこまで頭が回らなかったことに項垂れたのだった。
アオのMPは高くないため全ての部屋を浄化する事はできない。
したがって自分がアオの代わりに全ての部屋に魔法を掛けて綺麗にする。
「一度綺麗になってしまえば、当分魔法を使う必要はありません! その都度、アオが掃除を致しますので大丈夫です!」
自分に言い聞かせるようにアオは言い、少しだけ申し訳なく感じているアオの頭を撫でると、嬉しそうに笑顔を見せる。
この家にはお風呂が設置されているのだが、もちろんガスが有るわけではない。薪で湯を沸かすタイプのお風呂が設置されている。
台所の仕組みすら分かっていなかったのだから、薪など購入しているはずもない。したがって、お風呂にも入れないのである。
お風呂まで確認していなかった自分を恨みつつも、自分達の身体に魔法を掛け、取り敢えず今日は休む事にしたのだったが、久し振りに二人きりなので、肌を寄せ合いお互いの唇を重ね合わせると、アオは身を委ね、普段よりも長い夜を過ごしたのだった。
周囲を気にする事のない生活は非常に良いものだ。
翌朝になり、スマホのアラームで目を覚ます。考えてみると、これからは自分たちで朝食を作る必要があるのだが、食材が有っても燃やす物がなければ意味はない。
隣で気持ちよさそうな顔をして眠っているアオを起こし、出かける支度を済ませ買い物へと出かける。
買い物と言っても、先ずは腹ごしらえが必要なため、雷の剣亭ではないところで朝食を済ませ、道具屋へと向かい、昨日買い忘れた薪などを購入したのだった。
「だいぶ色々な物を買ったな」
「はい! ですが、リョータ様のおかげで荷物を持たずに帰ることができます。リョータ様に感謝です!」
「そりゃ、可弱いアオに荷物を持たせるわけにはいかないからな」
「リョータ様……アオは幸せ者です」
嬉しそうな顔をして腕に捕まり、甘えてくるアオ。アオの胸が腕に当たっているが、それは黙っておくことにした。ようやく異世界に来て良かったと思える一時を味わった。
それから家に戻り、設置されているお風呂に入る準備を始める。いくら魔法の【浄化】で身体が綺麗になるとしても、身体をしっかりと休められるという訳ではない。やはり、お風呂に入る事は健康につながるものだという事は、日本人であれば誰でも知っている事である。
風呂の竈に薪を焼べ、風呂を沸かそうとするのだが、どうやって火を付けるのか分からずスマホで調べようとすると、アオが火をつけ始める。
「このような作業はアオの仕事ですよ。リョータ様!」
その笑顔が天使の微笑みのように感じてしまい、抱きしめたくなる衝動を抑えつつ、「あ、あぁ……ありがとう」と、どもりながらお礼を言った。
「ささ、リョータ様はお風呂へどうぞ! 火の管理はアオが行いますから」
優しい言葉に甘え、脱衣所で服を籠の中へ入れて風呂場へと入る。こちらの世界では石鹸などは高級品として扱われているため、町の道具屋では基本的に販売しておらず、平民が簡単に入手することが出来ない代物となっているらしい。
そのことを知らずに店の店員に確認したところ、冷ややかな目で見られながら教えていた。仕方がないので全身に浄化の魔法をかけ、身体を洗った気がしないまま湯船に浸かった。
多少、お湯が熱いと思ったのだが、それほど湯加減は悪くない。
全身の血液が循環し、疲れが一気に取れていくのを感じ、何か月ぶりにすっきりした気分を味わったのだろうかと、目を瞑りながら今までの事を思い出していた。
心が落ち着き、のんびりと天井を眺めていると、アオが作業している音が聞こえた。これほどリラックスさせてくれたアオに感謝しなければと思っていると、外からアオが声をかけてくる。
「リョータ様~! 湯加減は如何ですか~~?」
元気な声で湯加減を確認してくるアオに、「問題ないよ」と答え、湯船に浸かりながら今まで起きていた出来事を振り返る。この世界にやって来てまだ数ヶ月も経っていないのに、色々な出来事が起き、頭の中で出来事を整理していく。
初めての戦闘や、初めて見る死体……。心を病んでも仕方がない出来事が沢山あったが、なんだかんだで乗り越えることが出来た。そして、イルスとやセリカとの出会い。
奴隷のアオを購入し、オークの集落を襲撃。やっている事が異常過ぎると鼻で笑った。
暫く湯に浸かり身体を休めてからアオに風呂から出る事を伝え、湯船から出る。
そして、身体を拭いてから服を着て布団が敷いてある部屋へ向かい、横になりながらスマホでこの世界の家について調べると、本当に中世のヨーロッパに近い文化だという事が分かる。
スマホで調べながら「なるほどなぁ~」なんて、今いる世界の常識との違いを比べていると、とある巨大掲示板のようなサイトを発見し、少しだけ顔を引き攣らせながらも『Lちゃんねる』というサイトを見つめ、「まさか……ね」と、呟き、サイトを開いてみる。
某掲示板の名に似せているだけで、ゲームやニュースなど、自分がいた世界の出来事などのスレッドがたっているだけだろうと思いはせていると、その『まさか』が現実のものとなっており、強い脱力感に襲われ、項垂れてしまった。
開いたサイトのタイトルは、『Lちゃんねる』。エルラレッドの世界について、沢山のスレッドがたっており、そのスレッドの中には『給湯器とかの代わりってあるの?』と、質問しているスレを見つけ、まるで自分の頭の中を覗かれている気分に襲われ、スマホから目を離し、周りを見渡してみるが、誰かが自分を見ている気配などは感じられない。
「しかし……同じような事を考える奴がいるんだな……。と言うか、他にも俺と同じような奴がいるのか?」
このスレが立てられていることに疑問が湧き、スレの立てられた時期を確認してみると、今から百年も昔に立てられたスレであったため、このスレ情報は当てにならないかもしれない。
しかし、見ないよりは見て調べる価値があるかも知れないため、そのスレッドを開いてみる。
すると、本当にイラッとする内容が書かれていたため、少しでも希望を持ちながら開いた自分に後悔をしてしまう。
なんてアホな事を調べてしまったのだろうと思いながら、スマホを水に濡れない場所へ置き、湯船に浸かりつつ深い息を吐き、久し振りのお風呂を堪能していると、戸の向こうから自分の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「リョータ様、お背中を流します!」
戸の向こう側からアオが声をかけてくる。
「おー、悪いな。助かるよ」
「そんな、アオはリョータ様が喜ぶ全てさせて頂きます!」
「ありがとうな」
そう答えてから、湯船から上がり、アオに背中を流してしもらう。背中を流してもらうというのは初めてで、少し照れ臭かったのだが、普段手が届かない場所も洗ってもらえるとあって、とてもすっきりした気分になる。
背中を洗い終わり、アオが湯船から桶でお湯を汲み背中を流してくれる。汚れと共に頭の中で考えていた事も流され、頭の中がリセットされると、ついでにアオも風呂に入った方が良いのではないか? と、思い付き、冗談がてらに話をしてみる。
すると、アオは顔を赤らめ「リョ、リョータ様がそう仰有るのなら……」と言い、急いで浴室から出て行った。
どうやらアオもまんざらではなかったらしく、お互いの身体を洗うという名目で悪戯し、一緒の湯船に浸かった。初めは恥ずかしそうな表情をしていたアオだったが、悪戯していくうちに淫靡な表情となっていく。お風呂の熱さとは別に、自分達が熱く燃え上がってしまったのは言うまでもない。
お風呂を沸かしてくれた代わりに、食事でも作ろうとしたのだが、アオが作ると言い張り、台所から追い出される形となってしまった。なので、夕食についてはアオに任せる事にし、待っている間、暇なので家のリフォームについて考えることにした。
リフォームと言っても、今までリフォームした経験がある訳では無いため、住宅設備の知識おろか、建築設備などの知識については全くの皆無であり、どの様にしたら住み心地が良い家にできるのか、知るはずもない。
町に建築設備関係が詳しい奴がいるはずであるが、中世ヨーロッパに近い文明で、日本で言えば室町時代か、江戸初期の文明だろう。
学校の授業で習った程度の知識しかないため、どうやって文明が発達してきたのかなど、細かな事まで覚えている訳ではない。
そんな事を考えつつ、テーブルの上に置いていたスマホへ目が行き、何気なく手にして検索エンジンに『水回り設備』と、入力してみる。
すると、沢山の水回り専門業者が検索に引っ掛かり、「マジかよ……」と、小さく呟いた。
ぶっちゃけた話、水を汲みやすくするためのポンプなどが売っていれば良いな……と、物凄く楽観的で軽い気持ちだった訳で、特に何か物凄い物を求めていた訳ではない。
しかし、このスマホは地球の情報も拾って来るため、この世界の設備業者という訳ではない可能性だってある。「あっちの世界では、便利な物が沢山あったなぁ……」と、思いながら検索に引っ掛かった専門業者のサイトを開いてみると、この世界でも『水道設備をリフォーム出来ます』と、表示されており、『今すぐ見積もり!』と、記載されている項目に、何故か指が勝手に動きタップしてしまった。そして、必須項目を記載して、『送信』と書かれたボタンをタップしてしまう。この時、この世界で初めてメールを送ったことになるのだが、今はそんな事どうでもよく、身体が勝手に動いた事に違和感を抱いていた。
通常であればこの様なメールを送ったところで返答は翌日になるものだが、返信メールが直ぐに返ってきた。初めはオート返信なのかと思ったが、返ってきた内容は『家を確認したい』という内容だったので、誰かが返信したという事なのだろう。
本当に確認しに来るのか分からないため、『何時でも構いません』と、返信すると、『承知いたしました』と、即時に返答があったが、何時やって来るとは記載されておらず、予定だけでも聞いてみようとしたが、食事の準備が整ったらしく、アオが呼びに来たため、後ほど確認することにした。
「あまり料理は得意ではないですが、食べられる物を用意したつもりです」
考えてみると、生まれてこの方、親以外で女性の手料理を食べたことが無かった。しかも、親が最後に作った料理が何だったかすら記憶がないほど、昔の話。まさか異世界で女性の手料理が食べられるなど考えていなかった。ビバ異世界!
「一応、味見等はしております。ですが、リョータ様の作られたお食事に比べてしまうと、アオが作った物など程度が知れておりますゆえ、お口に合わなければ言って下さい。リョータ様の好みな物を作れるよう、日々研究し頑張っていく所存です!」
力強く宣言するような言葉を言う。その言葉だけでも嬉しいので、アオの頭を撫でながらお礼を言い、作ってくれた料理を口にする。
アスミカ亭や雷の剣亭の食事に比べると多少劣るが、目が悪かった事で料理ができなかったことを考えると、他の人と比べるのは失礼過ぎるし、そんなハンデをものとしないくらい美味しい。
「美味しいよ、アオ。ありがとうな」
「その言葉だけで幸せです!」
嬉しそうな顔をしているアオを見ていると、本当にアオと暮らせる事は幸せなのだと再確認し、一緒にテーブルを囲みながら楽しい夕食の時間を過ごした後、布団の中でお互いに快楽を味わいながら眠りについたのだった。
所持金:93,575G




