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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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104話 再び振り出し?

 コースと名乗った少女と別れ、俺たちは船を出してもらうことになったはずなのだが、何故か船を出してもらうことは出来ずに、俺達は再び王都へ向かうこととなった。

 その理由は、俺たちがゴブリンキングを討伐し終わって、町に戻り状況などを説明した後、翌日に討伐した魔物などのお金を清算してもらい、ギルドマスターにお願いしていた件を再び確認したところに、王宮からの使者が早馬を飛ばして俺たちがいるスラベトイラやって来たのである。

 使者の目的は俺たちにあるようで、ギルドマスターがいる部屋へと再び案内され、使者が持ってきた手紙をギルドマスターが受け取って読み始める。

 その間、俺たちは船の件について話をしたかったため、椅子に腰掛けてギルドマスターが手紙を読み終えるのを待っていると、ギルドマスターのゾレットはこちらに目を向けて溜め息を吐いた。


「どうやら君達は船旅をしなくて良くなったようだ」


 手紙を読み終えたゾレットの開口一番が船旅の中止であった。


「どういうこと?」


 唐突の出来事に俺たちは首を捻りながらゾレットに聞く。


「どうやら他国でも同じことを考えていたようで、君たちよりも先に王宮へ使者がやってきたらしい。どうやらこの国が襲われる前に、他国の方が先に魔族どもから襲われていたようです」


 呆れた理由であり、今までの出来事について謝罪をしてもらいたくなる。

 しかし、相手は一国の王であり、謝罪など絶対にしないだろうと思いながら話を続ける。


「それで俺たちは王宮に戻ってこいという話になった。って、ことか?」


「正確には、国王様が戻らせようとしたわけではなく、王女殿下が戻るように説明してほしい。という風に記載されているわ」


 王女殿下は三人ほどいるが、自分たちを呼び戻す可能性が一番高い人物と言えば、マリー以外いないだろう。


「まあ、他の大陸へ行かなくて済むようになったからと言われても、王国の言うことを聞かなければいけないのか?」


 ゾレットに質問すると、少しだけ困ったような顔をして「できる限り言うことを聞いておいた方が、貴方達にとって無難だと思うわ」と、言われてしまう。


「いつ頃までに戻れという命令ではないので、そこまで重く受け止める必要は無いと思うけど……」


 直ぐにではないにしろ、一応戻った方が良いという風にゾレットは言い、俺たちは話を終わらせてギルドマスターの部屋から出て行く。

 アオは「これから如何なされますか?」と、少しだけ心配そうな声で確認をしてきたので、「取り敢えず別の町へ寄ってから王都へ行こうと思う」と、答えるだけにした。


 それから宿屋へ戻り、アオに荷物をまとめさせているあいだ、移動する手段として考えていた乗り物を購入することにしてスマホをポケットから取りだした。

 一応、元いた世界では免許を持っていたため、購入しても問題がないだろうと思いながら、サイトを開く。

 すると、沢山の種類が出てくるのだが、新車はやはり高くて手がさせなかった。


 そう、俺が欲しいものというのは、乗り物! 車である。

 仕方がなく中古車で良さげな車を探すと、軽自動車ばかり検索にヒットする。

 できれば普通乗用車が良いのだが、この際、文句を言ってはいられないため、五人乗りの軽自動車をなけなしのお金で購入することにし、宿屋の外で待っていると、突然空気が変わったような感覚におちいり、辺りを見渡す。

 すると、二台の車がやって来て、自分の前で停車した。


「中古車販売の者ですが、石橋さんで間違いないですか?」


 車から降りてきた中古車販売のディーラーが確認するかのように聞いてくる。


「はい、俺が石橋です」


 中古車販売のディーラーに名乗ると、車の説明を数点受け、契約書にサインをして車の鍵を受け取った。

 どうやらこの車はインテリジェントキータイプらしく、集中ドアロックが可能となっているようだ。

 中古車販売のディーラー曰く、最近の車は通常仕様となっているらしく、俺は少しだけ安心することができた。

 他にも、この車の特徴としてガソリンを使用するのではなくて、水で給油するらしく、時代に合わせたエコカーとのことだ。

 最近、環境破壊が五月蠅く取り出されていることから、中古車だとしてもガソリンの使用は禁止されたらしく、水で動かせるように改造を施されているとか何とか言われたが、こちらとしてはガソリン代を支払わなくて済むのはラッキーなので、ありがたくお礼の言葉を述べると、車屋はもう一台の車に乗り込んで去って行った。

 ついに移動手段を手に入れた俺。

 これで馬車の時みたいに荷物を取られることもなく、気楽に移動ができるようになった。

 何で始めから車を購入しなかったのかと、ここ数日のあいだ、自分を呪っていたのだが、これからは気にしなくても済むだろう。

 荷物の整理が終わったアオが宿屋から出てくると、見たことのない鉄の箱が目の前に現れ、驚きの言葉と戸惑いの言葉を述べたのは言うまでもない。

 初めて見る車。

 アオは恐る恐ると助手席へ座ると、椅子がふかふかしていることに驚きの声を上げ、俺は助手席のドアを閉める。

 突然ドアを閉められたアオは、何をされたのか理解することができずに泣きそうな顔をして、ドアに張り付くようにしながらこちらを見る。

 運転席側に移動し、運転席に座ってシートベルト締めると、先ほどまで慌てふためいていたアオが、飛びつくように抱き付いてきた。


「どうしたんだよ? 突然」


「だって! 突然閉じ込められたら驚くじゃないですか!」


 たしかに閉めるとは一言も言っていなかったが、泣くほどのことではないだろう。


「だからって泣く必要はないだろ?」


 泣き止むまで待っていると、アオは「自分は必要無くなったので、売られてしまうのだと思った」と、言ってきた。

 以前、自分が売られて時の事を思い出したのか、その時の出来事がフラッシュバックしたのかも知れない。


「アオを売るなんてするわけないだろ」


「言葉では何とでも言えます!」


 だったらどうしろと言うのだろうか。


「アオはスマホを持っているんだ。それに、アオの力が俺には必要だと思っている。それにこれは車といって、馬車の代わりに移動する交通手段なんだよ」


「ほ、本当ですか?」


「本当だ。これから移動するから、シートベルトを締めるんだ」


 アオは「しいとべると?」と、不思議そうな顔をしていたため、シートベルトの締め方と、外し方などを教えると、ようやく車のエンジンをかけることができた。

 小さく車のエンジン音が鳴ると、アオは少しだけ驚いた顔をしていたが、中古車と言ってもそれなりに新しいモデルのため、アイドリング音も小さい。

 俺はゆっくりとアクセルを踏んで、車を発進させると、アオは動いたことに声を上げて驚き、はしゃぐのであった。

 それから町の入り口付近に到着すると、衛兵たちが驚いた顔をしていたが、窓を開けてアオと自分のカードを見せると、戸惑った顔をしながら通してくれた。

 窓が開くことに気がついたのか、アオは俺の手元周辺を観察していたらしく、窓を開けて外の空気を思いっきり吸い込んだ。

 車の中が息苦しかったのかも知れない。

 改めて車を発進させ、町の外へ出ていく。

 スピードは約60キロで走行させており、アッという間に町から離れていく。

 アオは窓から身を乗り出すようにして町を見つめており、「この馬車は馬よりも速いんですね!」などと、俺にとっては当たり前のことを言うのだった。

 それから暫くの間、車を走らせていくと、アオが「これから王宮へと向かうのですか?」と、質問してきたので、「いや、一度、エリエートの町へ戻ろうかと思う。アオ、悪いけどマリーの奴にエリエートに行くことを連絡してくれないか?」と、言うと、アオは渋い顔をし、仕方がなさそうにマリーのガラフォーに電話をかける。


 数回コールがして、ようやくマリーが電話に出たらしくアオは気怠そうに話し始めた。


「あのー、マリー様ですか?」


『あっ! その声はアオ師匠ですね! 師匠はどうしたんですか?』


「リョータ様は今、馬車を動かしておられまして、マリー様とお話しすることができません。リョータ様が連絡しろと仰有るので、連絡させて頂きました」


『連絡ですか? こちらへ戻ってからでも……』


「リョータ様はエリエートの町へ行かれるとのことで、それをマリー様に連絡してくれと言われましたので、連絡したしだいです」


『はい? 今さらエリエートへ何しに行かれるのですか?』


「アオがそこまで知るはずがありませんし、リョータ様がお決めになったことに、アオは口出し致しません。それで、マリー様……」


『――はい?』


「リョータ様がエリエートの町で待っているとのことなので、それだけをお伝え致します」


『――ちょっ!』


 マリーが何か言う前にアオは電話を切り、満面の笑みでこちらを見つめてくる。


「なんでそんなに冷たい口調で話すんだ?」


「別に冷たくなんてありませんよ? 要点だけを伝えたまでです」


 自分はスマホを扱えるんだと言うことをアピールするかのように、スマホと俺を交互に見てくる。


「だからって……。まあ、後で何を言われても知らないからな。それで悪いんだけど、エリエートの町まで、ナビをしてくれないか?」


「はへ? なび?『なび』って何の事でしょうか?」


 改めてここは別の世界なのだと痛感させられ、アオにスマホを使ってエリエートの町まで道案内をお願いする旨を伝え、運転に集中する。

 馬と違って車は疲れることがないため、休憩無しで二時間ほど走らせていくと、アオが隣でソワソワし始める。


「どうかしたのか?」


 ソワソワしているのに気が付いて、アオに質問してみる。


「い、いえ……。あのー……」


 モジモジして、何か言いたそうな顔をしているが、何を言いたいのか分からない。


「どうかしたのなら、ハッキリ言ってくれよ。車にでも酔ったのか? 気持ち悪いのか?」


「いえ、そういう訳ではなくて……。取り敢えず、一度、この馬車を止めて頂けてもらえませんか!」


 アオが強い口調で止めてくれと言うため、仕方なしに車を停車させると、アオは急いでシートベルト外し、ドアを開けて飛び出していった。

 何処へ行くつもりか分からないが、取り敢えず助手席のドアを閉め、窓を開けて戻ってくるのを待っていると、アオはスッキリした顔をして戻ってきた。


「いったい何をしに行ったんだ?」


 何をしていたのか気になって質問をすると、アオは顔を赤くしながら小さい声でボソボソと何か大切なことを言う。

 声が小さいため聞き返すと、アオは「オシッコです!」と、大きな声で、叫ぶようにして教えてくれた。

 だが、これに関しては申し訳なく感じ、「気が利かなくてスマン」と、アオの顔を見ないで謝罪の言葉を述べたのだった。

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