102話 一網打尽
アオたちを残して『先へ』と向かうと、村の出口に辿り着いた。
スマホを確認してみると、周囲に魔物などの印はなく、全て片付けたかのように思えてしまう。
しかし、彼女の言葉を思い出してみると、当時は村の人間が生きており、休んでいるところを襲われたと言う話であった。
そう考えると、村の中で何かが起きているのでは無く、村の外で何かが発生して、村に危害が及んだと考えるべきであろう。
アオたちを残していくのは気が引けるが、調べるという話ではなく、原因を究明することに切り替えて動くしかない。
深い溜め息を一つ吐いて、俺は村の外へ出る事にしたのだった。
スマホの地図アプリを開きながら先へ進んでいくが、原因らしき事態が起きることも無いし、スマホの地図アプリに表示されることもない。
どういう事なのか分からないため、地図アプリの広域範囲を広げてみると、もう少し離れた場所に魔物の集団がいることが分かった。
しかし、この程度の数であれば、自分たちでなくても問題ないような気がして、魔物のいる辺りを地図で確認してみると、途中で反応が切れていることが分かった。
「まさか、この場所って……」
地図アプリで調べられるのにも限界があり、検索ワードで村の名前を入力して調べてみると、既に廃村と記載されていた。
先に調べておけば、コースはあそこまで取り乱すこともなかったかも知れなかっただろうが、こちらとしても、そこまで気が回る訳でもない。
仕方がなかったのだと自分に言い聞かせつつ、原因について調べて見ると、やはりあの場所に原因があること記載されていた。
記載されていたと言っても、大した記事ではなく、洞窟があることだけが書かれており、そこを巣穴として何者かが活動していることを表しているだけであったが、それが分かっただけでも良しとするべきなのかも知れない。
少しずつ洞窟がある方へ向かっていくと、潜んでいたゴブリンやコボルトなどが現れ、音をあまり立てないように始末してスマホの中へと収納していく。
それから暫く歩いて洞窟が離れた場所に見え、周囲を観察していると、ゴブリンやコボルト、ヘルオオカミが洞窟から出たり入ったりしており、洞窟内に親玉がいることを教えてくれていた。
「さて、これからどうするかな……」
洞窟をいつまでも眺めている訳にはいけないと思いながら、作戦を考える。
「一気に殲滅する方法ってあるのかな?」
一気に殲滅する方法がないか、スマホの検索ワードに『洞窟 一気に殲滅』と、入力してみる。
この様なことをして、殲滅方法が表示されるはずが無いと思いつつも、このチートアイテムの力を信じてみたい自分がおり、淡い希望を抱きながら表示されるのを待つ。
すると、『洞窟内にいる魔物を一気に殲滅する方法』と、記載された項目があり、俺は「本当にあるのかよ!」と、心の中でツッコミを入れながら、その項目をタップしてみる。
普通に考えてみても、洞窟内に入り込んで、敵の親玉を討伐するのが当たり前だろうと思いながら読んでいくと、「あー、確かにこの方法なら一網打尽にできるわ」と、思わせる内容が書かれてあったが、誰がこの様な方法を考えているのか知りたくなってくる。
その内容とは、『洞窟の入り口を塞いで、魔法を使って洞窟を崩して生き埋めにしてしまう』であった。
たしかにこの方法なら魔物は一網打尽に出来るだろうが、倫理的にどうなのだろうかと思う。
だが、洞窟の中に生き残りがいたらと考えると、「この方法は使えない」と、思う自分がいる反面、廃村となっていると記載されていたし、いくら待っても戻ってこなかった冒険者。
そして、自分が始末した骸のことを考えると、生き残りがいることは極めて少ないのではないだろうか。
また、女性の骸もいたことから、連れ攫われている可能性も低いと考えられ、洞窟の破壊をしてしまっても問題ないのでは? などと、思ってしまう。
暫くのあいだ考えていると、アオから着信があり、電話に出てみる。
「もしもし、どうした? アオ」
『ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
「気にするな。仕方がないことだろ。それで、そっちの様子は?」
『だいぶ落ち着きを取り戻して頂けましたが、リョータ様の方へ行くのは今のところ難しいかと思われます』
「だろうな」
あの様に取り乱すとなると、簡単に元の状態へ戻るのは難しいだろう。
『リョータ様の方は如何でしょうか?』
アオの質問に対し、俺は簡略的に説明をすると、アオは『現状で考えると、壊滅させても問題ないと思います』と、無駄な戦闘をするくらいなら一撃必殺で仕留めてしまった方が良いと言ってくる。
その理由として、無駄に時間が掛かると自分が心配になってしまうから……と、付け加えてくる。
洞窟の中がどうなっているのかは、中に入ってみないとどうなっているのか分からないため、戻るまでにどれ程の時間が掛かるのか分からないし、さっさとこの様な場所から立ち去った方が良いと、言うことなのだろう。
中に入って数日ほど出られない状態だったら、アオたちも中へ入らないといけない状態となる可能性も考えておかねばならないし、無駄に体力を消耗するだけかも知れない。
「そうだな、さっさと仕事を終わらせて、お前の持っている仕事を終わらせるのが先決だろう」
そう言うと、アオは安心したような声で電話を切り、俺はスマホをポケットへ仕舞い、どうやって入り口を塞ごうかと考えを張り巡らせる。
自分が奇襲を仕掛けたとしても、洞窟の中からワラワラと魔物が現れたらかなり面倒くさいことになりそうだし、時間が掛かってしまう。
辺りを見渡したところで、二メートルほどもある入り口を塞げる岩などもないし、その様な岩があったところで、持ち上げたら相手にも気が付かれてしまう。
気が付かれないように穴を塞ぐには、何かを爆発させて、入り口を塞いでしまうのが一番手っ取り早いだろう。
考えを張り巡らせた結果、爆発物を洞窟内に数発ぶち込んでしまえば、入り口は崩れ落ちるのではないだろうかという結論に辿り着き、六連装式グレネードランチャーを購入することにして、スマホを取り出してポチってみる。
六連装式グレネードランチャーは、それなりの金額がしたが、それなりに今回は稼いだはずだから取り戻せるはずであり、いざとなったらギルドマスターに請求しよう。
暫くすると、バイクに乗ってきた宅配業者が現れ、六連装式グレネードランチャーを届けてくれたのだが、乗ってきた乗り物を見て、自分の馬鹿さ加減に項垂れてしまった。
考えてみると車などを購入するだけのお金は持っていたのだから、先に車を購入しておけば馬車なんて必要なかったのであり、ラスクにお金を盗まれる事も無かったのだ。
そんな簡単なことも考えつかなかった阿呆な自分。
他人を馬鹿に出来る権利なんて無いと思いながら六連装式グレネードランチャーを手にして狙いを定める。
『パシュッ! パシュッ! パシュッ! パシュッ……』
六発連続でグレネードランチャーを撃ち放つと、洞窟の奥でグレネードが着弾して大音響が響き渡ると共に、ゴブリンか、コボルトなのか分からないが、酷い悲鳴らしき声が響き渡った。
外に出てきて魔物の群れも何が起きたのか理解できていないのか、慌てふためく。
その隙を突いて、俺は外に出ている魔物を、離れているこの場所から狙撃して仕留めていき、周囲が落ち着くの待つ。
暫くしてアオから着信があり、今の出来事について説明を求められたので簡単に説明をすると、アオは呆れたような声で返事をして、暫くしたらこちらへ向かうと言ってきた。
コースの状態がどうなのか分からないが、落ち着いたのならば来ると良いと言って、電話を切ると、俺は仕留めた魔物の群れをスマホの中へと回収して魔物たちの整理を始める。
椅子代わりに良さげな岩を探し、それに腰掛けてスマホを弄っていると、アオとコースがやって来る。
「お待たせ致しました」
「思ったよりも早かったな」
洞窟の入り口前で座りながら言うと、コースがアオの後ろに隠れるようにして立っていた。
かなり泣いていたのだろう、目の周りが真っ赤になって、少し腫れている。
「一応、洞窟の中には入っていない。中がどのようになっているのかも分からないため、入って確認する必要があるけど、それも面倒だと思っている」
現状を教えると、アオは少し考える素振りを見せてから、こちらを見る。
「中へ入るのでしょうか?」
入って奥がどうなっているのか調べるのかと言いたいのだろう。
「いや、入らない。このまま崩しちゃう予定」
崩しちゃう予定とはどういう意味を示しているのだろうとコースは思っているが、俺はスマホから六連装式グレネードランチャーを取りだして、弾丸を補充する。
そして、少し離れた場所で再び入り口付近にグレネードを撃ち込むと、入り口は完全に塞がってる。
その光景を目の前にしたコースは、口を開けたまま動くことはなく、再び茫然とした顔をしていた。
まあ、当たり前だろうとお思いながら、土煙が収まるのを待つこと数時間、暇だったのでテントを広げ、食事をテントの中で済ませる。
土煙が様っていることを確認し、スマホで周囲に魔物などの姿が無い事を確認してから土魔法の『クエイル』を唱えると、洞窟があった場所は完全に消滅してしまうのであった。
「さて、これからが大変だけど、コースは先に休んでいろよ」
「え? どういう意味ですか?」
これから何をするのか理解していないコース。
いきなり休んでいろと言われても、困ってしまうのは仕方が無い話かも知れない。
「これから洞窟を掘り起こして、親玉が死んでいるのか確かめる必要がある。疲れていないのなら、掘るのを手伝って貰えると助かるけど、無理そうだから休んでて良いよ」
何を言われているのか理解できていないコース。
仕方がなく、アオがスマホからシャベルを取り出し、コースに渡すと、コースはシャベルを受け取ったのだが、どうすれば良いのか分からずオロオロしてしまう。
それを気にすることなく、俺たち二人はシャベルで洞窟のあった場所を掘り起こしていくと、ゴブリンの死骸が出てきてスマホの中へ収納してく。
そんな作業を繰り返し行っていき、夜が明けて朝日が照らし始める。
コースは目の前で起きている出来事に言葉が出ず、ただ見つめることしか出来なかったのであった。




