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スマホチートで異世界を生きる  作者: マルチなロビー
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99話 使い方

 俺の指示通り馬車を手配しに行くアオとコース。

 まさかアオ二人で行くとは思っていなかったコースは、顔を強張らせながら商人街へ向かうのだが、アオはコースの隣ではなく、一歩後ろを歩いており、コースは背中に刃物突き付けられている気分で歩いて行くのだった。

 何故、自分だけで手配しに行かせてくれないのだろうと、コースは思いながら歩いていると、後ろから深い溜め息が聞こえ、コースは身体をビクつかせる。


「はぁ……。ねぇ、貴女……」


 もちろん声の主はアオである。


「は、はい!」


 慌てて立ち止まり後ろを向くと、アオは残念そうな顔をしてコースを見つめる。


「『何故、自分だけで手配しに……』って、考えていませんか? 先刻から……」


「い、いえ! そんな事は……」


 心を見透かされ、動揺しながら否定してしまうコースに対し、アオは疲れた表情をしてコースに言う。


「貴女様の背中がそう申しているように見えるんです。全く……、普通に考えて頂ければ理解できると思うのですが……。Gを持っていないはずの貴女様が、馬車など手配しに行っても、誰が馬車を出してくれるというのですか? 貴女様はこの町では有名人なのではないのですか?」


 有名人と言う言葉に納得ができない顔をするコース。


「普通に考えて下さい、『呪われた村の出身者』に対し、誰が貴女様を信用してくれると言うのでしょうか……。それに、ろくな依頼も受ける事の出来ない貴女様が、馬車を手配できるだけのGを持っているのはおかしい話とは思いませんか? 適当にあしらわれて戻ってくるのが目に見えているから、アオが一緒についてきているのですよ。もう少しだけ考えて頂けると助かりますが……」


 ぐうの音も出ないコース。

 言い返せない事に悔しさを覚え、睨み付けるようにアオを見つめると、アオは再び溜め息を吐いて、「早く案内して頂けないですか?」と言う。

 全く相手にされていない事が分かり、悔しさを露わにしながら背を向けて歩き始めるのだった。


 商人街で馬車を仕入れた二人だったが、アオが言う通りになり、幾らコースが説明したところで話など聞いてくれる人はおらず、最終的にアオが話をして馬車を仕入れる事が出来たのである。

 この事に関してコースは酷く落ち込むが、アオはフォローなどする事もなく、コースに馬車の操縦できるのか確認するためにお願いするのであった。

 その頃、俺はというと、街で道具を購入したり、街の人から聞き込みをしたりして、旅の準備を進めていた。

 夕方になり宿屋へ戻ると、バカでかい馬車が停車しているのを見て、何処かの金持ちが訪れているのかと思いながら宿屋の中へ入っていく。

 すると、自分達が乗る馬車だと分かり、頬を引き攣らせる。

 アオはドヤ顔で馬車を仕入れるまでの事を話しているが、コースはこちらの顔を見て「これは怒られる」と、直ぐに理解をして一歩後ろへ下がって俺たちの様子を窺うことにしたのだった。


 アオの説明が終わり、亮太が「何人で村へ行くつもりだ?」と、アオに質問すると、アオは「案内人の彼女を入れ、三人で行く予定ですが……」と、何故この様な質問をしてくるのか分からないと言った表情をする。


「三人で行くのに、あのバカでかい馬車を仕入れたのか?」


「はい! リョータ様が乗るのに相応しい代物ですよ! ……何かご不満でも?」


 その言葉に項垂れる俺。

 確かに三人で調査へ行くのに、八人も乗れる様な馬車が必要かと聞かれれば、必要はないだろう。

 コースはそう思いながら、もう一歩後ろへ下がって様子を窺う。

 深く息を吸い込み、アオ頭に手を添えると、アオは顔を赤らめ恥ずかしそうな表情をするのだが、俺は勢いを付けてアオの頭に頭突きをかました。


「グハッ!」


 何が起きたのかさっぱり理解が出来ないアオ。

 頭を押さえながら蹲り、声にもならないらしく、涙を流して動けなくなっていた。

 それを見ていたコース。

 驚いた顔をしている訳ではなく、ほくそ笑んでいた。


「コース、お前も一緒にいながら何をやっているんだ」


 まさか自分にも話が振られるとは思っておらず、コースは言葉を発する事が出来ず、戸惑いの表情を見せる。


「まぁ、仕方がない。アオ、コース、取り敢えず今晩出発する事にするから、出発の準備を始めるんだ。道具は俺の方で買っておいたから、自分の身支度だけすれば良い」


 アオは頭を押さえながら「かしこまりました」と答え、コースは言葉を発することなく頷き、その場を後にした。


 アオとコースの準備はアッという間に終わる。

 と言っても、アオはスマホの中に荷物を収納するだけなので、数分で終わらせることができ、コースは荷物らしい荷物は持っていないので、準備に時間を割く必要がないだけである。

 自分も荷物はスマホの中へ仕舞うだけなので、数分で作業が終了し、宿屋のチェックアウト手続きを行って、八人以上が乗る事が出来る馬車へ乗り込むと、アオも馬車へ乗り込むのだった。

 それから数分後にコースがやって来て、俺たちが馬車へ乗り込んでいる事に驚くのだが、アオが「早く馬車を動かして頂けませんか?」と、冷たい声で言うと、コースは慌てて返事をして馬車に乗り込み、手綱を握り馬車を動かすのだった。


 町の出入り口まで馬車を動かし、門番に俺とアオは自分の冒険者カードを観せる。

 コースは色々な意味で有名人である事が分かる。

 コースが冒険者カードを出そうとしたが、門番はコースが出すのを手で制止し、通過する事を許可する。

 コースは軽くお辞儀をして馬車を出すと、門番は「戻って来なくても良いぞ」と、コースだけに聞こえるように言うと、アオがそれを告げ口するかのように俺へ耳打ちをして知らせると、スマホからエアガンを取り出した。

 それから暫くして、エアガンの射程距離がギリギリのところで、門番に向かって一発だけ放ち、再びエアガンをスマホの中へ仕舞う。


 俺たちが町から離れて暫くした時、門番の顔に何かが当たるのだが、何が当たったのかは全く解らないけれども、物凄い痛みが顔に伝わり門番は蹲ってしまうのだった。


 町が見えなくなり、暫くして馬車を止めるようにアオへ指示すると、アオはコースに馬車を止めるよう指示する。

 直接指示すれば良いのに……と、コースは思うが、言葉にする事はなく手綱を牽いて馬車を停車させる。


「じゃあ、練習を始めるか」


 俺の言葉にアオは「かしこまりました」と言うが、コースには練習と言われても他人事のように聞いており、馬の首を撫でていた。


「――何をしているんですか?」


 誰に話しかけているのか分からないが、自分ではないと思っており馬に餌を与えようと準備を始めると、脚に激痛が走る。


「何をしているのかって、聞いているのです。話を聞いているのですか? 貴女様は……」


 何かが当たった事は理解ができるのだが、何が当たったのかは理解できず周りを見渡すと、アオが何かを自分の方へ向けており、再び激痛が脚に走る。


「アオ、やり過ぎ。ちゃんと教えないと、ただのイジメだぞ」


 俺の言葉でアオが攻撃した事を理解するのだが、どうやって攻撃したのかが理解できず、ただ驚く事しかできずにいた。


「どうだコース、痛かったろ?」


 どうやって攻撃されたのか理解できないが、痛かったことは確かだったので、コースは怯えた目をしながら俺の言葉に小さく頷いた。


「じゃあ、練習を始めようか。アオ、悪いけど馬の方を頼めるか? そっちが終わったらアオが教えてやってくれ。俺よりもアオの方が上手だからな」


「何を仰有っているのですか! アオなんかよりも、リョータ様の方がお上手です!」


「お世辞は良いから馬の方を頼むよ。コース、こっちへ来い。これから自分の身を守る練習を始めるぞ」


 お世辞ではないのにと呟きながらアオは馬の世話を始め、コースは痛みがある脚を引き摺りながら俺の方へ歩き始めると、申し訳ないことをしたかも知れないことに気が付いて、コースの側へと近寄った。


「アイツは悪い奴じゃないんだけど、行き過ぎる行動があってね……。代わりに謝るよ。ゴメン」


 コースの頭に手を乗せながら言い、「だ、大丈夫です! 話を聞いていなかった私が悪いんです!」と、コースは言い返すと、先程まで痛かった脚が、嘘のように痛みが引いていた。


「今、回復魔法を掛けてやったから、アオの阿呆がやった痛みが引いているはずだ。じゃあ、練習を始めるぞ」


「は、はい!」


 回復魔法という言葉に驚きつつも、言う通りにしないと再び何かをされるのか分からないため、コースは俺の指示に従う事にした。


「良いか、これが先程お前を攻撃した武器だ」


 そう言って亮太はエアガンをコースに見せるのだが、コースからしてみれば、どうやって攻撃されたのかすら理解ができていないため、眉間に皺を寄せながらエアガンを見つめる。


「とは言っても、実際にどうやって攻撃するのか分からないだろ?」


 まるで心を読まれたかのような台詞に顔を強張らせ、首を左右に振る。


「嘘を言っても仕方が無いだろ……。こっちの世界では、これを初めて見るとそう思うのが当たり前なんだよ。で、こっちが本物の武器だ」


 そう言って、エアガンと同じ銃を取り出しコースに見せる。


「違いが分からないのですが……」


「そりゃそうだろ。モデルガンなんだから、同じ様に造られているに決まっているじゃないか」


「もでる……がん?」


 初めて聞く言葉に首を傾げるコース。


「じゃあ、実際にどれだけ威力が有るのか試してみようか」


 そう言って俺は少し離れた場所に立っている木に向かって引き金を引き、乾いた音が大きく鳴り響くと、コースはその音に対して腰を抜かし、怯えた目でこちらを見つめる。


「これが『銃』という名の武器だ」


「じ、じ……ゅう?」


 何が起きたのか理解出来ず、銃という名だけが判っただけで、それ以上の事は頭の中で処理することが出来ずにいた。

 そして、弾丸が当たった場所へ連れて行かれると、コースは唖然としてしまう。


「き、木が……抉れている……」


「誰でも使え、人の命を簡単に奪える武器。それがこの銃……。これを使って自分の身を守ってもらう」


 抉れた木を見れば誰だって破壊力という物が理解できてしまう代物だが、どういった原理で木を抉ったのかまでは、分からない。


「弓矢を想像してみろ。弓で矢を引き、手を放すと矢は弓に張られた弦が元の位置へ戻るため、矢がその勢いで飛ばされて行く。この銃も似たような原理で矢の代わりに弾丸という物が飛んでいき、あの様になる」


 一通りコースに銃の使い方を説明して、俺はエアガンをコースに投げ渡すと、コースは銃を地面に落とさない様、大事そうに受け取るのだった。

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