同志ジルイドと同志ユリアの軍服コスプレでおくるなりきり尋問 後編
NKVDの制服を身に纏った俺は、歩きながらユリアをじっと見続け彼女の背後に回り、両肩抑え、耳元でそっと言った。
「ユリア。君とは長い付き合いになるだろう。
より密接な関係になる必要がある。
優秀な副官として私の右腕となり私を支えてほしい。
二人きりの時には、俺のことをジルイド様ではなく、同志ジルイドと呼んでほしい。
俺も君のことを同志ユリアと呼ぼう」
「し、しかし、私は奴隷であり」
「俺を同志と呼ぶことに不服かね?
それにこれは命令なのだよ、同志ユリア」
「し、失礼しました、ごしゅ……同志ジルイド」
軍服を着ているせいで完全に軍人になり切ってしまっているのがわかる。
スタンフォード監獄事件の参加者たちはこういう感覚になったのだろうか。
「同志ユリア。君についていくつか聞きたいことがある。そのまま座ってくれ」
「!!りょ、了解しました……」
席に戻り、羽ペンにインクをつけ、紙に尋問内容を書く準備をする。
いつものダラダラとした俺とは違う雰囲気に圧され、ユリアは少し汗を垂らしており、余計に緊張しているようにみえる。
軍服が軍人をつくる、か。
「同志ユリア、まずは姓名、年齢、身分を答えたまえ」
「は!ユリア・パルシェド、14歳、奴隷であります!」
「同志ユリア、新調した服はどうかね」
「は!このようなかっこいい服をくださった同志ジルイドに感謝します!」
100点満点の受答え。優等生だ。だが。
「同志ユリア、私の質問には今後嘘をつかずに正直に答えたまえ。
本当はふりふりのついたかわいいドレスが良かったのに、
がっかりしたのではないかね?」
ユリアの目が泳ぐ泳ぐ。わかりやすいなほんと。
嘘をつけない隠し事はできないタイプ、と。
「た、確かにかわいいものを着てみたくもありましたが、
私にはもともと似合わないと思っていましたので、
カッコいい服はありがたい……で…ありま…す……」
そう言って顔を赤らめて下をむいてしまった。
今度ユリアが何かやらかしたときは、フリフリのついたロリータファッションをさせて他の使用人達に可愛い可愛い連呼させる事にしよう。
「次の質問だ。
同志ユリア、君の母親は処刑されたが、君の母親に対する率直な感情をいいたまえ」
「は!あのような淫売が王国と父と私と妹達を裏切ったことに怒りに震えます!」
模範解答。
先程とは違い、一点を見つめるような目でこちらを見て震えながらはっきり言う。
あらかじめ聞かれた時にどのように答えるかを用意しておいたのだろう。
「君が君の母親のようになることはないと?」
「はっ!快楽に溺れて裏切行為を働くことに嫌悪感を感じます!」
「君はその快楽とやらをもう知った上で話しているのかね?
それとも、知らずにそのように話してるのかね?」
「ま、まだ、し、しらないであります……」
おっし!未経験かどうか聞き出すことに成功!!
「では嫌悪感を感じるのは快楽と裏切りのどちらかね?」
「裏切りに対してであります!」
にゃんにゃんすることに嫌悪感は抱いていないことを聞き出すことにも成功!!
「では、同志ユリアが裏切行為を働かずに忠誠を誓う相手は誰かね?」
「同志ジルイドであります!」
これもユリアにとっては想定問答のうちのひとつなのだろう。
ジルイド様という用意しておいた答えを言わないくらいには頭が回るようだ。
「では、私と王国、どちらに忠誠を誓うのかね?」
「同志ジルイドであります!」
「他から同じく聞かれてそう答えるのかね?」
「そうであります!」
「その心意気は良いが、これからは他人から聞かれた時は、
"王国に忠誠を誓うジルイド様に忠誠を誓います"と答えるように」
「了解しました!」
先に言っておいてよかった。
王国にはすでに諜報機関に似た組織があるのだ。
もしそのまま他所で俺に忠誠を誓うとだけ答えたら、反逆の言いがかりをつけられかねない。
「次の質問だ。乗馬は婚約者か恋人から教わったのかね?」
「いえ、私には婚約者も恋人もいませんでした!父と乳母より教わりました!」
軍隊生活をしていたわけではないようだな。
「では、同志ユリア、何故君は最初から軍隊口調だったのかね?」
「は!檻の中に入れられて運ばれていた時に軍人たちが命令を受ける際の光景を見続け、それが強固な主従関係においての上からの命令を受ける際のやりとりであると判断したからであります!」
普通の常識から少々外れている、と。
恐らくユリアお嬢様の家の立場はかなり上であっただろう。
ただ、奴隷はいなかったようだな。でなかったらこんな口調はしない。
「では、次の質問だ。
何故君は髪がショートヘアーなのかね?
多くの女性は長髪か、編み込んだ髪型をしているが?」
「……」
「どうしたのかね?同志ユリア。
質問に答えたまえ」
君に黙秘権はない。というか、この時代にも黙秘権はなさそうだが。
「お、檻に入れられ運ばれていく途中に、ぐすっ……兵士たちから、もし王都へ戻ることになったら、ひっく……そのまま帰路の途中で俺たちが可愛がってやるとからかわれたので、うぇぐっ……食事当番の時に使うナイフで髪を短くして男に見えるように…ぐすっぐすっ」
どうやら地雷を踏んでしまったようだ。
だが、この尋問の目的は、ユリアに関する情報と、弱ったユリアにつけこんで慰めてそのまま流れでイチャコラにゃんにゃんするという計画である。
ユリアはちょろいだろうからいけるだろう。
弱みをユリアが見せるまで尋問は続けるつもりだったので、今は既定路線にある。。
それにそもそも言いたくない事を言わせるのが尋問だ。
この程度の尋問は、大粛清時の赤い軍人達からしたら慈悲深いものだろう。
そのままユリアを抱きしめて慰めようと立ち上がろうとすると
「で、ですが、同志ジルイド、ご安心ください!
自分は剣やダガーなどを一通りあつかえ、護身術も身につけておりますので、
たとえ背後から敵が襲ってきてもそのまま返り討ちにできます!
なので問題なく同志ジルイドをお守りできますのでご心配には及びません!」
……前権撤回。うっかりもののユリアのことだ。
例えば、俺が純粋に驚かそうとして後ろから抱き着こうとしても、ユリアにその気がなくとも、つい俺を反射的に倒してうっかり殺してしまう、なんてことがありえる。
そのまま黙って抱きしめたらどうなるだろう。
きっと役立たずと思われないために言ったのだろう。
涙目なのに笑顔で健気に答えた目の前のユリアがちょろインだなんていったい誰が言ったんだ。デレのないツンより難易度高そうだ。
今回の尋問をどう言い訳してごまかそうかと久しぶりに高速で必死に頭をまわしながら立ち上がり、ユリアの横に立って、ゆっくりと話す。
「同志ユリア。
辛いことを思い出させるようなことばかり聞き出したのは、君のことを知りたかったことと、他から君が同じことを聞かれる際に、揚げ足を取られないようするいわば訓練のようなものだ。
これは君を守るためにしたことだったんだよ。
さあ、着替えた後に夕食へといこうじゃないか」
「は、はい!」
頬を伝うクールビューティーの熱い涙を俺が指で拭ってやるとユリアが笑顔を見せる。
どうやら我ながらうまくごまかせたようだ。
ちょっと長めだったので、区切りのいいとこで前編と後編に分けました。




