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歪なトロイカ


小鳥の囀りでさわやかに目覚め、昨日はよく飲んだと腕を伸ばしつつ身体を起こしたら、床で土下座している14歳の色白でブロンドショートヘアーな女の子の姿を見たら、

普通の人達なら一体何をするだろうか、

心に嘘偽りのない正直な気持ちを聞いてみたい。


俺の場合? 見なかったことにしてそのまま2度寝することにしました。


30分後


馬の鳴き声で再び目を覚まし、面倒臭そうな夢をみたなぁと思いつつ身体を起こすと、

床でさっきと同じ姿勢で土下座している14歳の以下略な女の子がいたら普通の人達ならどうするだろうか。

これからさすがに3度寝はちょっときつい。


記憶飛ばなかったのか…。面倒なことになったなこれは。

見なかったことにしてそのまま存在をスルーし着替えて部屋を後にしたいが、

そうしたら余計に怒りに震えていると思うであろう土下座少女は、

ますます負のスパイラルな思考に陥るに違いない。


対応するだけで気まずいのだが、仕方あるまい。


「おはよう、ずいぶん早起きなんだね」


もう11時だけどな。


「……」


何も反応がない。ただの屍となったのだろうか。

ほんの少し体が小刻みに震えている。気がする。

これはきっと何で土下座してるのとか聞いてあげないとダメなパターンだ。

そう誘導する土下座少女にちょっといらっとする。


「昨日のことは気にせず気分を新たに心機一転無理しないよう頑張ってください」


面倒くささとわずかばかりの配慮心から、口頭で簡潔な業務連絡をしてそれで終わらせることにしよう。

土下座少女の筋書きにはのらないし、あまり触れないほうがいい。

だってよく考えてみてほしい。昨日この土下座少女はヤンデレメンヘラ地雷少女のかまってちゃんだって自分で暴露したようなものである。

もしくは、ただただ酔っ払っただけかもしれないが。


「ど、同志ジルイド様!」


ヒィ…!さ、刺されたくないです…

視線を向けると、ずっと土下座して顔を伏している。

同志と呼べばいいのか様付けすればいいのかわからず欲張りコースを選んだのだろう。


「昨夜はせっかくの同志ジルイド様の初酒宴であったのにもかかわらず、

私如き奴隷の分際が身の程知らずの失態を演じてしまい、

せっかくの席を台無しにしてしまって大変申し訳ありませんでしたっっ!!!」


えっ、昨日の飲み会が初体験だったことまで覚えてるのかよ……。


「何でもしますどのような罰でもいかなる折檻でも甘んじて受けますのでどうぞお傍にいさせてくださいっ!」


うわーんやっぱり言うとおもったあ


「不足であれば、私の命で償いますので、どうか妹達には寛大な処置を…!」


重いわ!刀あったら切腹しかねないよこの土下座少女!

ユリアが俺に固執する理由は妹達の処遇である。だが、ユリアの行動に起因する妹達の生殺与奪を握っているのは、俺ではなく、じっちゃんである。

そういえば、ユリアの妹達はやはり10歳以上になっても所有権はキルロスじっちゃんのままなのだろうか。

そのあたりのことを一度確認しておかなければ…。

それにもしかしたら、俺が正式な所有権を保持していない事をこの土下座少女は知らないんじゃないか。

あの時、きっとシェパードパイに夢中で頭の中がユニオンジャックに征服されていたのだろう。

勘違いさせたままならかわいそうだ。頼む相手を変えさせないと。


「君の正式な所有権を俺が持ってはいないことは、君が家にやってきた初めの日にじっちゃんが話したんだけどね。

じっちゃんが所有権を持っていて、俺は管理者。しらなかった?

だから、じっちゃんに言わず俺に言っても意味ないよ」


「すでに存じています!

キルロス様は私をどうするかは、同志ジルイド様に任せると言っていたであります!」

判断丸投してきやがった…。


「もしかして、もう他の出席者には謝罪したの?」


「はっ!もう済ませてあります!」


土下座のままそんなことをいう少女の姿がシュールすぎる。


「他の人たちはその時なんていってた?」


「はっ!スザンナねえさ…スザンナ様とは昨夜子守唄を歌って一緒に寝てもらったようです。

スザンナ様からは小さい頃の同志ジルイド様をあやしていたころを思い出して懐かしいと。

気にしなくていいとおっしゃってくれました!」


スザンナァー!何ばらしてるんじゃあー!


「ファルペ様からは私の家の事情はきいている、今までと同じく励むようにとおっしゃってくださいました!

トロワ様からは、今度また一緒に飲もうねと誘ってくださいました!」


トロワ、お前いいやつだな…。お世辞でもそんなことを言えるだなんて…。

土下座少女は土下座したまま、使用人の服の内側からごそごそ取り出し、そのままエジプトのファラオに供え物をするような格好で、両手に3つの手紙をのせて、俺に向かって捧げるような姿勢をした。


「ファルペ様、キルロス様、トロワ様よりジルイド様宛の手紙を預かりました!」


俺宛て?昨日の作戦に関することだろうか。とりあえず、受け取って土下座やめさせよう。


「お、おう…というか、土下座しなくていいよ」


さて、何が書いてあるやら。

ファルペからの手紙はっと…。


”ジルイドへ


ユリアの生い立ちには十分考慮している。

だが、昨晩の客がトロワ様だったからよかったものの、ユリアを全く知らなかった客だったら失礼にあたる。

今後このようなことが起こらないよう指導、叱咤激励をしっかりし、後で報告するように。

それとユリアが自分から話したのだが、お前が腐ったスープに関係していないことがわかり一安心した。

疑ってすまなかった”


疑われたことが大変心外なのだが、それ以外はやはりというかまともな内容で安心した。

指導して報告しろというのがきっちりしているファルペらしい。

もはやそれすら面倒くささを感じてしまっているのだが。

きっと土下座少女に気遣い、直接言うのは控えたのだろう。


次はキルロスじっちゃんからの手紙か。開拓団についてだろうか。お小遣いあげるとかだったら嬉しいな。


”ジルイドへ


ユリアはすでに奴隷であるのだから、境遇に同情する必要はないぞ。

それに、躾が甘いと他の人達から思われちゃいかん。

思う存分好きなようにビジバシ仕置きをし、後でどんな仕置きをしたか話してくれるのを楽しみにしとるぞ。

お主は管理者なのじゃ、それを忘れぬように”


また土下座少女についてかよ!さっきとは違って随分過激な内容だなおい!

キルロスもユリアを方法はどうあれきっちり指導するよう苦言を呈しているようだ。

だが、じっちゃんのいう事も一理ある。

なめられるな、甘いと思われるなということだろう。

どうやら管理者として厳しくあってほしいようで、土下座少女を通して、領主として時に必要な冷酷さをはぐくんでほしいようだと忖度する。


次はトロワか…。どうせ同じく土下座少女絡みだろう。読むのが億劫だ。


”ジルイド様へ

もし、ユリアさんにお仕置きと称して鬼畜じみたことをしたら、

あなたがアルバーレスの穀つぶしだったことばらすから、胸に刻んでおいてください

あなたからどんなことをされたかを、今度会うときに直接ユリア様から聞きます”


あの奪幸ぉぉぉ!

あいつ、極度のファザコンというのを俺が言いふらさないだろうとふんだうえで、脅してきやがった!

しかもさっきとは全くの真逆の内容だし!

この3人からの要求を応えなきゃいけないなんて、なんつーめんどうなことをしてくれたんだこの土下座少女はと改めて思う。

3人とも命の水のための消毒作戦に関する言及はなしかよ…。

証拠残したくないのもあるんだろうが、ちょっと寂しい。


「先程も言ったけど昨日の事は気にせず気分を新たに心機一転無理せずがんばってください」


もうこの言葉で指導を終えたことにしてごまかすしかないじゃない。


「キルロス様からは手紙を受取る際きちんと躾けてもらうようにと言われました」


あいまいなままで終わらせないように釘を刺してきたよ!

そういうと土下座少女は、手を自分の後ろに回して服の後ろの内側からごそごそと何かを取り出した。


「必要になるかと思い、先に用意しておきました!ご不満でしたら別のを持ってきます!」


手紙の献上の時と同じ姿勢で手の上に捧げているのは、ロープ、鞭、短棒だった。


「…君が俺のことをどう思っているかがなんとなくわかったよ」


ちょっと意地悪くいってみる。イメージが間違ってるとはあえて言わない。


「通常の折檻道具です。気兼ねせずにご自由にお使いください」


寝取られもののDQNみたいに君を好き勝手できるわけじゃないんだよ。


「むち打ちを続けると最悪死ぬかもしれないんだよ。

そしたらじっちゃんとの契約に違反する訳だから、鞭で叩きたいとは思わない」



罰…罰ねぇ……

トロワの要求からして、肉体的な損傷を与えるのはまずいしなあ。


罵詈雑言で徹底的に罵ったら、途中で土下座少女が幼児退行しかねない。

他には恥辱を与えるくらいか。

一応、主の俺が恥ずかしい思いをしたのだから、同じく恥ずかしい思いをしてもらうというのは一見筋が通っているようにみえる。

さて、どのように羞恥心を抱かせようか。

裸で馬に乗り町を駆けたゴダイヴァ夫人の真似をさせるのはまずいだろうし…。



他になにかユリアが恥ずかしいと感じることといえば…


「これから仕置きするから、それを手伝ってもらうためにちょっとスザンナ呼んできて」


「了解しました!」


すぐにしゅたっと返答して踵を返し、顔を確認できないほどすばやくドアの向こうへと去っていた。


罰には程遠いが、これしかないだろう。

それに少し気になるのを確かめたいことがある。


「呼んでまいりました!」


うっすら赤目をしてこれからどのような躾も受け入れるという覚悟を口を固く結ぶ顔の土下座少女と、

何をする気なのかと少し強張った顔をするスザンナが戻ってきた。

そんなこわがんないでよとスザンナを手招きし、耳元で囁く。

こそこそ話するとスザンナは頷きながらくすくす笑う。


「ええ、ありますよ。

わかりました。さっそく用意します」


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