彼女は悪役令嬢 前編
指摘のあった場所を修正しました。
裏町の人間を使ってまで→裏稼業の人間まで使って
「もう君もわかっているんだろう?婚約は破棄させて欲しい」
グリヘルム王国第2王子、フレアス・グリヘルムは、婚約者だったシュタッツ伯爵家の令嬢セリス・シュタッツに婚約破棄を告げた。フレアスの横には、この春に後輩として貴族学院に入ってきた後輩、タード男爵の娘、アマンダ・タードと、フレアスの親友であるこの俺、リシュテル辺境伯の長男ニール・リシュテルが立っている。
「そ、そんな・・・何故ですか!?私よりその娘を選ぶと言うのですか!」
セリスはフレアスに信じられないという風に叫んだ後、横に居るアマンダを睨み付けた。
「貴女がフレアス様をたぶらかしたのですね!」
セリスの剣幕にアマンダは怯えてしまい、フレアスの後ろに隠れる。フレアスもさも当然のようにアマンダを背に庇いながらセリスの事を睨み付ける。
婚約者からのその視線にセリスは動揺を隠せないようだ。
そんな修羅場と化しているこの現状で、俺は何も言わずに傍観している。何でこんなに落ち着いているのかって?
それは俺がこの先どうなるかを知っているから・・・かな?
このまま介入しなければセリスはアマンダへの憎しみから暴挙に出る。伯爵家の力を動員しアマンダの実家、タード家ごと潰そうとするのだ。しかも裏稼業の人間まで使って。
結局その事件は、セリスの動向を探っていたフレアスによって鎮圧され、シュタッツ家は取り潰し。セリスはその後行方知れずとなる。
・・・とまあ、これが俺の知っているこの後の結末だ。別に俺は未来が見えるわけじゃないぞ?この話は俺の前世で妹がやっていたゲームの内容なんだ。前世とか言ってもいきなりすぎて頭おかしいとおもわれても仕方ないんだけどな・・・
まぁその妹がやっていたゲームって言うのが「真実の愛はいずこに?」ってゲームだった。このゲーム、普通の乙女ゲーと見せかけて何故か百合展開まであるゲームだった。攻略対象が5人ほどいてそのどれもにライバルの女性キャラがいる。そこまでは普通の乙女ゲーでいいんだけどな。んで通常のノーマルエンドがライバルの女性キャラから攻略対象を奪い取って幸せになるエンド。これはライバルの女性キャラが結構悲惨な目に遭うものも多い。お家取り潰しだったり国外追放。酷いものでは処刑なんてのもある。
それからライバルの好感度も上げると最後にライバルが身を引くハッピーエンド。フレアスルートの場合は婚約破棄を言い渡されるのがノーマルエンド、セリスから解消を申し出るのがハッピーエンドだった。それから男性キャラの好感度よりもライバルと仲良くなりすぎると起きるのが百合エンドだ。この場合解消を申し出たセリスがそのままアマンダに告白する。妹は居間でゲームをやっていたので俺も結構内容を知っているわけだ。
「私はたとえ婚約を解消されても貴方のことは認めません!今に見ていなさい!」
おっと、考え事をしている間に話が進んでしまっている。これはよろしくない。俺は妹がゲームをやっていた中でもこのセリスというキャラが一番好きだった。だからこの世界に生まれて彼女に出会ってから彼女に幸せになって欲しいと考えていたのだ。だからアマンダが現れずフレアスと結婚してくれるならそれでいいと。
しかしアマンダはやはり現れた。だから今度はなるべくアマンダとセリスが仲良くなってくれるように間を取り持ってきたつもりだったのだ。結局その願いも叶わなさそうだが。そしてこの流れは間違いなくノーマルエンドの流れだろう。このままではセリスはアマンダに敵意を抱き没落してしまう。
だから俺は・・・その流れを変える。
「セリス!ずっと前から好きだったんだ!俺と結婚してくれ!」
「・・・はい?」
俺のその一言で険悪な雰囲気が霧散していった。