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終 物語の終わり――懐旧切々
余、忝くも明君を輔弼して政道を正し、民草を癒し春秋を経るも、鼓腹撃壌に遠く及ばず、真に慙愧の念に堪えざるなり。
而れども、東市朝衣絶えて血刀乾き、文武百官は殿前に粛然たり、また元宵の観燈、清明の踏青、至る所に国人の遊び、其の歓楽尽きざるを見れば、些かなりとも青雲の志を遂げたりと謂うべきか。
朋友既に道山に帰すと雖も、猶お魂魄此の地に留まれり。対酌せんと欲して楓林に入れば、唯だ孤鹿のみ余に従う。白馬を御して蒼海を巡り、彼人の蹤跡を尋ねて遍し。清月に笛声を聞けば、懐旧の念未だ已まざるなり。
『天朝名臣言行録』巻九・烏翠・柳承徳
【 了 】
ここまで読んで下さって本当にありがとうございました。
『翠浪』終盤を別の視点から描く、外伝『還魂記』も合わせてご一読賜れば幸いです。
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