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2-真実

2- 真実


「向こうに召喚された者は皆勇者ですよ。与えられたユニークスキルで魔王を倒し、褒美は選びたい放題、酒池肉林、いやぁ羨ましい。変われるものなら変わりたいくらいです」


 そんな女神の胡散臭い話に俺の本能が警鐘をかき鳴らす。


 馬鹿かこいつは!? 今どきの幼児だってそんな甘言で(なび)かないぞ。


「……早く決めてくれませんか?あなた以外の方たちは全員召喚に応じましたよ?」


 いるのか、おつむ幼児それ以下の連中が。待て、あなた以外?


「あなたのクラスメイト29名、全員が召喚に応じてくださいました。あなたで最後です。

優柔不断さん」


 もうすぐ高校生だってのに、こんな誘いに乗ってんじゃねーよ……


 精一杯弁護してやるとすれば、受験勉強やら何やらで疲れ果てた脳味噌が、現実逃避を欲求しちゃったんだな、としか言えないな。中卒確定の俺には無縁の悩みだ。


「あの、召喚されて、帰る手段は───」


「向こうの世界の召喚者、今回は王族ですね。その方たちが説明してくれますよ。なに、

悪いようにはされません。きっとあなた方の希望を叶えてくれるでしょう」


 はぐらかされたっ!!?つまり召喚されたが最後、帰る手段はないってのか!?


「帰る手段がある、若しくは帰してくれるとは名言しないんだな」


 相手がこちらを騙すつもりできているんだ。丁寧な応対は無しだ。


「………他の連中のように、さっさと召喚に応じれば楽だったのに。それじゃ、あなたは応じないという事でよろしいですね?」

 

 低音な小声で本音を漏らした女神が綺麗な声で再度回答を促す。


 普通ならこんな怪しい取引を避け、現実世界で新しい因果とやらで心機一転、スクー

ルライフを送り直すのだろうが、待っているのは目を背けたい中卒確定、友人すらいな

い現実世界だ。 たとえ帰れないとしても、勇者として暮らせる異世界と、どっちが幸

せなのだろう。

 

 あれだけ心の中で目の前の女神を胡散臭いだの騙しただのと蔑んだのに、悩んでしまう。


「私も暇じゃありません。   ったく、あのジジィのおかげで貴重な時間が───」


 ジジィ?誰だジジィって


「ジジィって誰だ? 随分嫌っているようだが」


「ジジィはジジィですよ。向こうの神です。ちょぉっと私より長生きで経験も多いからって、勝手に格下認定して無理難題押し付けてくる糞ジジィですよ!」

 

 愚痴る相手いないのかな、鬱憤を躊躇いもせずに吐き掛けてくる。


「自分の世界にバグが出たからってワクチン代わりに私の世界から分捕るだなんて、それも30人!ワクチン多すぎて余計バグるわっ!」


 溜っているなぁ、勢いが止まらないぞ。というかバグって何だよ


「あ、バグですか?向こうの民が魔王や異常個体とか呼ぶ魔物ですよ。ふつーバグが出る前に世界を作り直して一からやり直すモノなのに、あのジジィは唯一神として君臨していたいからって騙し騙し世界を存続させているんですよ。そりゃバグも出るわっ!!」


 いいのか?これ、俺が聞いちゃっていい愚痴なのか?


「そのあげく、『我が世界に汝の民、30人を送るべし。汝の神光も深まるであろう』

  

てめーのケツはてめーが拭けってんですよ!!!こっちの世界が荒れて、バグが出るわ!」


もはや愚痴というか、喚いていた球体は急にトーンダウンし、


「あー、死んでくれないかなぁ、あのジジィ。若しくはあの世界滅ばないかなー…」


物騒な事言った球体は沈黙した。




ひどい愚痴だったが、得るものは多かった。いや、多すぎた。

こちらが交渉するだけの材料を向こうから吐き出してくれた。




「なぁ、女神様。その願い、俺が叶えようか?」


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