おはようございます
あの方に出会わなければ
私はただの猫だったかもしれない…
「おはようございみゃ…ます!!」
だだっ広い部屋の中央にある黒い箱…
俗に言う棺をペチペチと叩きガタガタと揺する
「…ん…んんぅ…」
「先生っ!朝ですよ!!」
更にガタガタと乱暴に揺すれば観念したかのようにゆっくりと棺の蓋が開き
白く綺麗な手が伸びてくる
パチンッ
彼が軽く指を鳴らせば殺風景だった部屋はたちまち綺麗な寝室が現れる
「おはよ…もう少し優しく起こしておくれ…」
先ほどまで棺だったそれは大きなベッドへと変わっていた…
大きな伸びをしながら上半身を起こした人物…
白い肌にサラサラの黒髪が映え、ボルドーの瞳に赤く艶のある唇…
世の女性が見たら虜にするであろう美貌の持ち主
彼は…吸血鬼
このクロス森最深部にあるリークナー湖の湖畔にて薬屋兼医者をしている
そんな彼を起こしていたのは彼とはまた違った
可愛らしい少女
ふわふわのロングヘアーをなびかせ頭には猫のミミ、女の子らしいワンピースのお尻部分にはしなやかな尾が機嫌よく揺れている
にこにこといつも笑顔を絶やさず彼の側に寄り添っている
「サラサ」
身仕度を整えれば側で待っていた少女を呼び飛びついてきた少女をギュッと抱きしめてやる
「えへへ〜…」
抱きしめられた少女は嬉しそうに笑みをこぼし彼の胸元へと擦寄る
そんな朝の日課を終えれば
《森の薬屋さん》openです。