涼しくなってきた風を感じて
初めての予約投稿です。
月日はめぐり、季節が3回ほど回ったと思われる今日このごろ。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
私は今、窓の不透明なガラスを見て、自分の顔をマジマジと見ています。
……目がなぁ。母親の遺伝がこれでもかと出ているんだよなぁ……。
椅子の上に立ち、外を眺めるようにして窓を凝視している。
顔は母親の血を濃く受け継いだように小顔で、鼻や口も小振りだ。
特に目については、まさに親子ということを主張し、普通に見ている今ですら何やら怒っているかのように鋭い。
父親を感じさせるのは、山なりになっているちょっと太い眉と、笑った時の顔だ。
髪の毛は、両親の色を合わせたように、金髪に明るい茶色が混ざったような色。つまりは黄金のように深い金色である。
束にしたら売れそうな色をしていると思う。
そういえば、父親の容姿については何も言っていなかったな。
優しい面差しで、特に目については仏様のように柔らかく優しさにあふれている。
これまたスッと通り高めの鼻と大声を出したことがないような緩めの口。
眉が太いところが唯一の男らしい点といえる。
身長も高く、恐らく180cm? 位はあるように思う。
ちなみに母親は150cm程度に見えるので、デコボコ夫婦という見た目だ。
そんな見た目なので、父親にロリ疑惑を持っているのは内緒である。
「スージ、えほん、よんで」
「分かりましたラルバ様。今日はこの本にしますね」
スージーが2歳位の赤ちゃんをあやしているのを後ろに聞きつつ窓を少し開ける。ちょっと風を感じたい年頃。
「ローリエ様、ラルバ様が冷えますので閉めていただけますか。」
「ごめんなさい」
窓を閉める。しょんぼりした気持ちで窓を見つめる。窓に映った自分の姿がちょっと怖い。
そう、なんとなく流していたが赤ちゃんがいるのである。しかも弟だ。
生まれたのは一昨年、名前はラルバ。
フォートス家の跡取りである。
顔は父親に似て優しそうな感じではあるが、母親の小顔を受け継いでおり、将来がとても楽しみに思わせる。きっと中性的な美男子になるに違いない(姉バカ)
髪の毛も少し暗い茶色と、これまた父親の血が流れているのを実感できる。
2年前の自分の誕生日から2ヶ月ぐらい前に生まれたので、危うく誕生日パーチーが延期しそうになった事を覚えている。何時仕込んだか分かっちゃいますねぇ、ぐぇへへへ。
そんなことを考えていたら、窓に映る自分の顔がとても怪しくなった。MPが下がりそうである。
見られているのを感じて振り返ると、二人が目を逸らしたのを確認できてしまった。
「さ、さぁ。ラルド様。今日は勇者とドラゴンですよ」
「わ、わーい」
棒読みである。
ジト目で見ていると、二人のほほ当たりに汗が一筋流れるのを確認してしまった。
ため息をつき、二人に声を掛けて庭へと進む。
キャッキャとした声が後ろに遠ざかっていく。
庭まではすぐなのだが、ステータスを確認しておこう。
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名前:ローリエ・バロン・フォートス
性別:女
PC: 90/100
MC: 80/100
魔力:212
スキル
魔力感知 魔力操作 魔力放出
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4倍である。一体感を感じていただけで4倍である。
更にスキル表示に2つも増えている。
ステータスの魔力とスキルの考察については、今は時間が無いので次にしようと思う。
庭では、お腹の大きくなった母さまが花壇に水を上げたり、植木周りに水を上げたりしている。
水は井戸からではなく魔法を使っているのがポイントだ。
「お母さま、お手伝いに来ました」
「あら、ありがとう。ローちゃん」
「赤ちゃんは元気?」
「もう元気よ〜。今もお腹の中で蹴ってるもの〜」
「よかった! なでなでー」
「ふふっ。喜んでるみたいよ? さっきより動いてるわ―」
「ふふふっ」
「それじゃ、あっちの方に水をあげてくるね」
「あんまり無茶して魔法使っちゃダメよ?」
「はーい」
そう。またしても子供を孕ん…もとい、出来たのだ。お盛んである。
私も生まれてくるのが弟なのか妹なのか興味津々である。
てってけ走り、母さまとは反対側から魔法で水を出す。
えっ、おおっぴらに魔法を使っているが大丈夫なのかって?
「できた〜」
と夕食後に光を浮かべて笑顔で言ったら
「スゴイスゴイ! 天才天才! 将来は魔法師様よ~!」
と母さまのテンションうなぎ登りということだけで済んでしまったのだ。
ちなみに父親も似たようなものだった。
それから、庭の水やりの仕事を手伝ったりしている。
たまに父さま、母さまに魔法の手ほどきを受けて魔法を使いこなそうと頑張ったりしている。
「水じゃあー。タップリと食らうが良い」
とか言いながら適量の水を出して振りまいていく。
庭全体に水をかけ終わり、裏庭にある“ろーりえかだん”に向かう。
ここはちょっと実験がしたかったので、両親に頼んで作った場所である。自分で耕したりした、渾身の場所だ!
実験の内容は花に魔力を注ぐことだ。何となく魔物になりそうな気がするが気にしない。
今の私なら花の魔獣ぐらいへっちゃらだ!
それに、魔力を注ぎ込むとユラユラと揺れているような気がするので、きっと喜んでいるのだろうと思っている。
実験と言ってもそれだけだ。
肥料だとか魔力水っぽいのだとかも考えたのだが、肥料はわからないし、魔力水っぽいのは魔法で水を出しているので意味が無いかなっとも思ったのだ。
さて、母親や父親、自分の名称が変わっているのにお気づきだろうか?
いい加減、女に生まれて4年も立ち、自分は男だ〜! とか言っても詮無いことに気がついたのだ。
そこで、女らしくなろうと自分の心のなかで思っていることから変えようと考えたのだ。
母親を“母さま”に、父親を“父さま”に、自分のことを“私”と呼ぶことにした。俺だとか言うのに、そろそろ違和感が出てきたというのもある。
最終的には、敬語で思うようにしたいと思う。
あとは、設定を思い出していた時に魔素やら魔力というのがこんがらがってきたので、統一して魔力とすることにした。
一応、自分の中では“祈りに影響されたものを魔力”とし、“素のままの魔力を魔素”という認識に落としている。結局は魔力と呼称しているが。
そんなことより、花を見ると落ち着く……。
マイナス6年前の男だった時には考えられないことだ。
それに場所もいい。
裏庭とあるが、日も当たって風が心地よく吹き抜けていく。
風に合わせて震えているようにみえる花が可愛い。
目線を上げれば、低い位置に黄金色の小麦畑が見える。
収穫の最中なのか人々が手に何かを持ち、屈んで根本を切っているのが遠目に分かる。
風が吹けば穂波がうねり、生命の力強さを感じられる。
ギギギ……、麦になるんじゃ……
四角いおっさんの顔が空に浮かんだ。
ここは小高い丘の上に立っていて、家も周りに立っているものよりも数倍大きい。
壁はレンガを積み重ねたような薄茶色で、屋根は木に何かを塗ったくったようなこげ茶色をしている。ちなみに三角屋根だ。
そんな風貌をしているこの家は、まさに領主様が住む家という感じだ。
実にヨーロッパ風な感じである。
中世後期ッて感じだな! 何となく。
「ローちゃーん。終わった―?」
「はーい」
景色を眺め、風に流れる髪をそのままに、眇めていた目を声のもとに向けて返事をし、愛しい母親の元へと駆け出すのだった。
第01章は、あと5話くらいを予定しております。
バトルについては、この章は簡単なものを予定しております。
次章で頑張りたい。