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アロエとろうえ

掲載日:2026/03/31

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 飼育に興味がある人、この中でどれほどいるかな?

 動物あるいは植物などであろうが、自分の思うように育てようと思うと、相手に気をつかわねばならない、と少し矛盾したような世の道理を知ることができるだろうな。

 なんでも自分の思い通りにいくことに慣れすぎると、ちょっとした反発さえ許せなくなる。わめいたり、殴ったり、隠し持った刃物で物や人を傷つけたり……。

 ふむ、嫌な顔をしてくれるみんなは「まさか、そんなアホはいないだろ」と思ってくれているのかな。素晴らしいことだ。

 先生が前にいた学校の生徒はこのような子が多くてね、病んで仕事を辞した人も何名かいる。この学校と比べたら、まあ世界が違うね。もちろん良いほうでだ。


 飼育としつけを同レベルに語るとか失礼かもしれないが、みんなも親になったら、よ~く子供をしつけておけよ。下手に甘やかすと、自分はよくても他人を壊す破壊神に育つからな。

 そのうえ平気で虚偽申告をするから親は実態をつかめん。みんなも大人をだますために都合のいい嘘をいろいろ考えることあるだろ? あれにさらされる側になるんだぞ、今度は? お覚悟だぜ。

 そいつは動植物にも当てはまる。相手もこちらを騙してくるやもしれないからな。信用はしても信頼するかどうかは、こちらの器量も試されるもの。

 先生の実家の話なのだが、聞いてみないか?


 先生の実家は、とある小さな村にある。家の裏手の縁側の端の地面には、先生が生まれる前より育てている植物がある。

 アロエだ。みんなもヨーグルトとかに、こいつが含まれているものがあるのを、知っているんじゃないかな。外から貼れば火傷や腫れに効き、内服すれば便秘や胃腸の痛みに効果を発揮する、とは民間にも伝わっていることだ。

 先生の実家はこのアロエの葉を定期的にカットして、間に合わせの薬としてストックしている。昔にお湯をこぼして火傷した時も、肌が真っ赤に染まって痛みを発していたのが、このアロエを貼り付けていると、数時間で腫れも痛みもおさまってしまったくらいだ。

 アロエは環境によっては、ほぼ放置状態でも生育が可能な植物。先生の実家で育てているキダチアロエと思しきものは、あまり水を与えることなく育てているな。

 アロエは寒さに弱いとされるが、水絶ちを行うと耐える力が増す。先生の地元は冬場、寒いと雪がちらつくこともあるが、アロエは室内へ避難させたりすることなく露天栽培を実行し続けていたよ。


 アロエ栽培には薬以外に、もうひとつ理由がある。

 我が家に限らず、地元ではアロエ栽培をしている家は多いんだが、これはあるものの注意をするための役割も持っているんだ。

「ろうえ」と先生たちは呼んでいる。

 アロエの読みのもじりにくわえ、この概念への注意を最初に持ち込んだ者の苗字が「浪江」だからと伝わっているが、いまとなっちゃあどれだけ本当のことかは知らない。

 その、ろうえなのだが昔ながらに人を化かす狐狸の一種だと伝わっている。ただタチが悪いのがシンプルに人を惑わすのではなく、人の内へ入り込んで悪さを働くことを主目的としている点だ。


 発熱、臓器の機能低下で寝込んでしまうならまだいいほうで、悪いと一部の記憶や正気の喪失を伴い、周囲へ害を及ぼすことがある。昔ながらに「狐憑き」呼ばわりされるようなトンチキぶりさ。

 けれど、ろうえには特徴的な弱点がある。それはアロエを見つけると、優先順位のトップがアロエに化けることに置き換わってしまうことだ。

 アロエが薬として用いられやすいことから、体内へ入るにふさわしいと考えたかどうかは分からないが、これは人間にとって好都合。ろうえを隔離するための策に、先のアロエに水をやらないことも効果があるわけだ。


 ろうえがアロエに化けると、家人の間でせきやくしゃみが頻発するようになる、とされる。花粉の時期とずれ、熱も出ないとなると花粉症や風邪のようなものと考えづらいから、判断に助かったりすることも。

 そうなると、家人は甘くて粘り気のあるものを家のアロエの葉にかけていくんだ。代表的なものとしてはちみつが挙げられる。アロエのはちみつ漬けは代表的な調理方法のひとつだが、ろうえにも抜群の効果を発揮するんだ。

 はちみつを少量でも浴びた、ろうえの部分はたちまち赤く色を変えていく。それを確かめたらその葉の部分を、ちょんとカットしてしまい、土の中へ埋めてしまうんだ。

 ゴミとして、袋に入れてしまうのはおすすめしない。人工的なものに長時間接すると、ろうえは自分の身の上がばれたと、強引な手段に出るかもだからね。自然物に囲まれた環境に戻すのが吉だ。


 とはいえ、対策は必ずしも100パーセントうまくいくとは限らない。

 いまだ、魔が差したかとか思えない原因不明の犯罪は、先生の地元でも散見される。アロエを世話していなければ、もっと被害が出ていたかもと考えると、その生育はおろそかにはしがたいのさ。

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