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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-2章:「交錯する運命・危機」

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82/83

第82話「森下家」

教会の中央ホールで小暮隊長の指示を受けたあと、僕たちは三方向に別れた。

僕は東側の廊下へ。久野さんと岡本さんは西側へ。



---


廊下に一歩足を踏み入れた瞬間、足音が妙に響く。

高い天井のせいか、靴底の「コツ、コツ」という音が壁に反射して、二倍にも三倍にも大きく聞こえる。

しかもその廊下は、思っていた以上に長かった。

奥が霞んで見えるほど、左右方向に延びている。



---


外から見た教会が縦長の構造だったことは知っていた。

けれど、内部の廊下までこれほど長く続いているとは予想していなかった。



---


「うわぁ!!なんじゃこりゃー!?」


遠くから久野さんの叫びが響く。


「廊下が左右縦長だーーー!!?」


続けざまに岡本さんの声も飛んできた。

どうやら西側も同じ造りらしい。

あの二人が同時に驚くなんて、よほど印象的な構造なのだろう。



---


学校の廊下に似ている――そう言えばそれまでだ。

だが、外の惨状を見てきた僕らにとって、この不気味に整った造形は逆に不安を誘った。



---



そんな考えを振り払い、僕は最初の部屋――聖具室に入った。

壁際には祭服が丁寧に掛けられ、金属の燭台や聖餐用の皿が整然と並んでいる。

手袋越しに触れると、金属は冷たく、埃一つない。

ここだけ時間が止まったように、物があり続けていた。



---


次は告解室。

二つの小部屋が薄い仕切りで分けられ、中央には木の格子。

誰もいないのに、耳を澄ますと微かに囁き声のようなものが聞こえる気がして、背筋がぞわりとした。

けれど、それは僕の神経が過敏になっているだけかもしれない。

結局、この二つの部屋からは何の手がかりも得られなかった。



---


残された部屋はあと一つ。


こんな状況なのに、まだ何も掴めていない。

胸の奥で、疑念が小さく膨らんだ。



---


「助言って……嘘だったのか?」



---


リリィの顔が頭に浮かぶ。

あの時の真剣な眼差し――それを思い出して、僕はすぐに首を振った。

疑うのは、この最後の部屋を見てからだ。



---



廊下の奥に、その部屋はあった。

扉の上に掛かったプレートには「資料室」とある。



---


「……流石に、ここには何かあるよな?」



---


深呼吸をひとつ。

僕はドアノブに手を掛け、ゆっくりと回した。

軋む音と共に、重い扉が開く。



---


そこは、まるで紙の山に飲み込まれたような空間だった。

古びた棚や机の上だけでなく、床にも、壁際にも、資料が山のように積み上げられている。

どれも埃を被っているはずなのに、不思議なほど整っていた。



---


「……何でこんなに綺麗に積まれてるんだ?」



---


その瞬間、鼻を突くような臭いが襲った。

古紙の匂いとは違う、もっと生臭く、湿った匂い。

誰かが長くこの部屋を使っていなかったのか、それとも別の理由か――判断がつかなかった。



---


資料の山を迂回しながら奥へ進むと、部屋の中央に奇妙な物があった。

透明なガラスケース。

中には、一冊だけ分厚い資料が鎮座している。



---


ケース越しに見えるその背表紙は、重厚な革装で覆われ、中央に金色の十字架が刻まれていた。

ただならぬ存在感があった。



---



「……取り出してみるか。」



---


当然、ガラスケースには鍵が掛かっている。

引いても押してもびくともしない。

僕は辺りを見回し、床に転がっていた石を見つけた。

何故こんな物が資料室に落ちているのかはわからないが、今は好都合だった。



---


「悪いけど……壊させてもらう。」



---


振りかぶり、全力で石を叩きつける。

ガシャアアアン!

高く鋭い破砕音が、廊下まで響き渡った。



---


割れたガラス片を払い、慎重に資料を取り出す。

革の感触は想像以上にしっとりとしていて、手に吸い付くようだった。

表紙を開くと、最初のページに大きくこう記されていた。



---


「名古屋キリスト教会」



---


ページをめくる。

次の瞬間、息が止まった。



---


「旧教会持ち主『森下家』の家系」



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「……森下家?」



---


思わず声が漏れる。

脳裏に、ひとりの人物が浮かんだ。



---


亮さん――森下亮。

もしこの資料にその名前があれば……

状況が大きく変わるかもしれないし、何も変わらないかもしれない。

それでも、知りたいという衝動が全身を突き動かした。



---


この部屋で、僕は確信した。

リリィの助言は、やはり意味がある――と。



---


                 To be continued

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