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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-2章:「交錯する運命・危機」

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第81話「教会探索前2」

息を整える。

胸の奥まで入り込んだ空気は、外の焦げ臭さとは違い、教会の前では奇妙に澄んでいた。

背後には、まだ遠くで黒煙が上がり続けている。

その煙が、まるで背中を押すように僕をこの建物へと向かわせていた。



---


「教会の中に入り捜索すれば何かがある」

――リリィの言葉が、脳裏で静かに反響していた。

助言、というより命令に近い響き。

僕はそれに従うと決めていた。



---


入り口の前で足を止める。

両開きの木製扉は、古く、重そうで、表面に細かい傷や手の跡がいくつも刻まれていた。

ここに至るまでに何人が出入りし、何人が帰ってこなかったのだろう。


扉の向こうに、ゾンビが群れを成しているかもしれない。

あるいは、積み重なった死体が教会の床を埋め尽くしているかもしれない。


――だが僕は、「一歩も引かない」と心の底で決めた。



---


手を伸ばし、扉に触れる。

木の冷たさが指先から腕へと伝わり、その重みを感じる。

ぎぃ……と、低く軋む音が、室内へと通じる隙間から漏れた。



---



扉を押し開けると、そこにはテレビや映画で何度も目にした“典型的な教会”の光景が広がっていた。

だが、それはどこか現実離れしていた。

さっきまで見ていた焦げた金属や血の匂いが、この空間ではほとんど感じられない。

代わりに、古い木と紙の匂い――そしてほんのわずかな埃の香りが漂っていた。



---


左右には長く連なった横長のチャーチチェア。

その背もたれには整然と聖書が並び、どれも使い込まれて紙が少し波打っている。

奥には高い説教壇があり、その背後の壁には巨大な十字架。

外の惨状とはあまりに対照的な、静謐な空気が満ちていた。



---


だが、遠くの説教壇の前で、誰かが手を振っているのが見えた。

反射的に僕は歩き出す。

チャーチチェアの間を抜けながら、視界が少しずつ明るくなる。

そして――



---



そこにいたのは、見覚えのある顔ばかりだった。


チャーチチェアの上には、小野さんが横たわっていた。

顔は蒼白で、呼吸は浅く、昏睡状態のまま動かない。

その傍ら、説教壇の前には小暮隊長、久野さん、そして岡本さんの姿。



---


「小暮隊長! 久野さん! 岡本さん! 生きてたんですね……よかった!」


息が少し上ずった。

この瞬間だけは、外の惨状を忘れられた気がした。



---


「坊主も生きていてよかった……だが、すまないな。」


その声は、低く、どこか自分を責めるようだった。

彼は僕をまっすぐ見てから、視線を小野さんに向ける。



---


「私が少女の方を優先したせいで……お前を見逃してしまった。」



---


「大丈夫です。今、一番危ないのは小野さんの方ですから。」



---


小暮隊長はしばらく黙って僕を見て、それからわずかに口元を緩めた。



---


「そうだよな……だが、すまなかったな、坊主。」



---



岡本さんが口を挟んだ。

相変わらずの鹿児島弁が、この場の緊張を少し和らげる。



---


「隊長……これからも気をつけた方がいいでごわすよ。確かにあの少女を優先するのはわかりもす。じゃっどん、他の生存者のこともかんぐいがよか。」



---


「おいおい岡本! 隊長相手に鹿児島弁全開じゃ、何言ってるかわからんだろ。普通に話せ!」



---


「あ、し、失礼した! 久野!!」



---


僕はそのやり取りに少し笑いそうになったが、小暮隊長は手を軽く上げ、場を収めた。



---


「わかった、わかった……お前らの言いたいことは十分にわかった。――それより、私の話を聞いてくれ。」



---



僕と久野さん、岡本さんが一斉に隊長へ顔を向ける。



---


「これからお前らには、この教会全体を探索してもらう。」



---


「ええーーっ!? なんででごわすか、隊長!?」



---


「手がかりでもあるんですか?」



---


「正直、私にもわからない。だが……何かあるはずだ。

手がかりを見つけるか、捜索が終わり次第ここを脱出する。もうすぐ軍用ヘリが到着する。その間に動け。」



---


「……了解でごわす。」



---


「私は少女を見張る。くれぐれも慎重にな。」



---


久野と岡本は声を揃えて「はい!」と答えた。

その響きが、高い天井の奥まで反射して消えていった。



---



僕は一歩下がって、改めて教会の内部を見回した。

静かすぎる。

外の炎や叫びがまるで別世界の出来事のように、分厚い壁に遮断されている。

それがかえって、不気味だった。



---


リリィの言葉――


「教会を捜索する」




この場所に、彼女がわざわざ告げるほどの「何か」が眠っているのか。

その正体が何であれ、見つければ事態は動く。

けれど、そこにたどり着くまでに何が待っているのかは、誰にもわからない。



---


僕は心の奥で、小さく呟いた。


(……リリィ、本当にここでいいんだな?)



---


こうして、教会探索が始まろうとしていた。



---


                 To be continued

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