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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-2章:「交錯する運命・危機」

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第73話「三つ首の生物」

警察署の駐車場に、沈黙が漂っていた。


夕日が傾き、赤く染まった空が、瓦礫と血と硝煙の匂いをなぞるように染めていく。

僕は一歩ずつ、足を引きずるように警察署の入口へと向かっていた。


その足元には――

冷たくなった警察官たちの死体が転がっていた。


一人は、首がない。

一人は、内臓が裂け、地面に腸が広がっていた。

一人は、自らを撃ったのか、右手にハンドガンを持ったまま、虚ろな目を天井に向けていた。


吐き気がこみ上げた。


「う……」


けれど、もう何も出なかった。

何度も吐いた。何度も涙を流した。何度も命を背負ってきた。

それでも、“慣れ”ることなんて絶対にない。


そして――


「タッ、タッ、タッ……」


背後から誰かの足音が近づいてきた。

とっさに振り返る。


そこにいたのは――


「太一さん!!!」


「小野さん……!?」


小野さんだった。

肩で息をしながら、顔には疲れが滲み、体には土埃がついていた。


「来たんですか!? 少しは休めましたか?」


「……はぁ、はぁ……まぁ……ちょっとだけ。けど、そんなことより――」


その顔が、恐怖に染まる。


「犬が……追ってきてるんです!!」


「犬……ですか? 野犬のゾンビ化したやつですか?」


「ちがいます! そんなものじゃない……!! あれは、頭が三つあって……!」


「グルルルル……」


言い終える前に、何かの唸り声が響いた。


僕たちの左――

建物の影から、重いものが地面に落ちる音がした。


「……ッ!」


姿を現した“それ”は、間違いなく犬の形をしていた。

だが――それは明らかに“犬”ではなかった。


頭が三つ。

それぞれの口からは、長く鋭い牙がのぞき、唾液が滴っていた。

背中の筋肉は、異様に発達し、全身の毛は斑状に抜け落ちていた。

体高は、おそらく130センチを超えている。

まるで人間と同じ目線で睨みつけてくる。


小野さんは息を呑んで後ずさり、叫んだ。


「化け物……!!」


「バァン!!」


彼女は震える手でハンドガンを構え、引き金を引いた。


――だが。


「……っ!? 避けた……だと……!?」


三つの頭のうち、一番左の頭が首をひねり、弾丸を“見て”避けた。

他の頭もわずかに動いて、弾道を正確に認識している。


「嘘……そんな……!」


小野さんが青ざめた顔で呟いた瞬間だった。


「――グアアアアアア!!!!」


吠えるような唸り声をあげ、三つ首の犬は地面を蹴った。

そのまま、小野さんに向かって跳びかかる――!


「小野さん!!!!!」


僕が叫んだと同時に、獣は小野さんの腹部に噛みついた。

彼女の体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。


「ぐあっ……ぁ……ッ!!」


三つ首の犬はすぐに後退し、僕の方へとゆっくりと歩を進め始めた。


「……こっちに来る……!!」


もう迷っている暇はなかった。

銃では通じない相手だ。

なら――僕は、僕自身の“武器”で戦う。


右足を一歩引き、姿勢を低くする。

風が静かに吹いた。


(やるしかない……)


太一の技読み――


「瞬脚・一閃」


空気が裂ける音が耳元を走る。

視界がブレる。

世界がスローモーションに変わる。

重力の束縛から解放されるように、僕の体が動いた。


――背後を取る。


回し蹴りを放とうとした、その瞬間。


(……!? 動いた!?)


まさかの反応速度。

こいつ、見えてるのか!?

動きを“読んでいる”のか!?


ならば――もう一段階!!


太一の技読み――


「瞬脚・双閃」


その瞬間、僕の横に“もう一人の僕”が現れた。


「っ……!?」


これは……分身……?


僕自身も戸惑ったが、考えている時間はなかった。

僕と“もう一人の僕”が同時に回し蹴りを放つ。


「ドォォォォォォォォン!!!!!!!」


三つ首の犬は、大きく吹き飛ばされ、駐車場に停まっていた車に激突した。

車が大きく揺れ、警報が一瞬だけ鳴る。


けれど、犬は――すぐに立ち上がった。


(まだ動けるのか!?)


しかし、それ以上戦うことは選ばなかったようだ。

三つの首をこちらに向け、鋭く睨みつけた後、巨大なジャンプで――

屋根の上へと跳躍し、そのまま夜の空へと消えていった。


僕はその場で息を切らしながら呟く。


「逃げた……のか……?」


けれど、それよりも――僕の意識は、彼女へと向いていた。


「小野さん!!!」


急いで彼女の元に駆け寄る。

膝をつき、彼女の顔を見る。


「う……」


彼女は微かに目を開けていた。

しかし、彼女のお腹――その部分からは、信じられないほどの血が流れ出していた。


(あ……これ……ダメかも……)


そう思うと、僕の中で何かが崩れそうになった。


「小野さん……ごめんなさい。僕が……もっと早く動いていれば……!!」


でも、返事はなかった。

彼女の片目が、じっと僕を見たまま、動かない。


涙がこみ上げてくるのを、僕はなんとか堪えた。

今は、泣いている暇なんてない。


立ち上がり、警察署の自動ドアに手をかけた。


(誰か……誰かいないのか?

誰か……まだ生きてる人はいないのか……!?)


扉は、きい、と鈍い音を立てて開いた。


僕は、血と硝煙の中、再び“孤独な戦場”へと足を踏み入れた。



---


                         To be continued

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