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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-1章「交錯する運命・序章」

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第65話「予想通りの結果」

僕たちは、あの異様な地下階段を降りた先の研究所の前で、静かに息を整えていた。


それは明らかに“人のため”に作られた場所ではなかった。

白くない。明るくもない。

むしろ、朽ちた金属の匂いと、どこからともなく染み出してくる冷気が、この建物が“何かを抱えてきた”証のように感じられた。


――ここは、ただの施設じゃない。


戦場ではなく、“処理済み”の実験場。

誰かがかつて生き、試し、狂い、そして全てを封じた……そんな重さを空気が帯びていた。


僕はみんなの方を向いて、言った。


「さっきと同じグループで動こう。何かあったら、通信機で報告してほしい」


誰も異論は言わなかった。

目と、わずかな頷きだけが、静かな返事をしてくる。


この“沈黙”がすでに全てを語っていた。

今、誰もが直感しているのだ。

ここは――終わりか、あるいは全ての始まりになる場所だ、と。



---


僕はスライド式のドアの前に立ち、深呼吸した。

センサーが反応し、「ピッ」という軽い電子音が響く。

その直後、ドアは滑るように左右に開かれた。


「行こう」


僕は一歩、足を踏み入れた。

すぐ後ろに森下さんが続き、そして少し遅れて他のグループがそれぞれ中へと入っていく。


中は、外観通り、陰鬱な色で満ちていた。

壁は灰色、床は鈍く光る金属。

天井には照明があるにはあるが、その明かりは心細く、視界の端がどこか霞むようだった。


床には薄く積もったホコリ。

壁のあちこちに残る“ひっかき傷”のような破損痕。

乾いた錆の臭いと、何かが焦げたような残り香。


これは、ただの“施設”ではない。

ここには“何かが起きた”という事実だけが確かにあった。



---


「……とりあえず、分かれて動こうか」


田中が言うと、みんなはそれぞれのグループへ自然と戻っていった。

マスクを着用し、備えつけられていた消毒液を手にかける。


森下さんと僕は、再び二人で廊下を歩き始めた。

どの部屋も重たい鉄のドアに覆われており、鍵はなかったが開けるたびに「ギィィ……」と軋む音が響いた。


だが、どれだけ部屋を調べても、有力な手がかりは見つからなかった。

床に転がる空のカプセル、破れた書類、割れたガラスケース……。

無人でありながら、何かの痕跡だけが、時間を止めたように残されていた。


僕と森下さんは、しばらく黙ったまま、同じ空間を共有していた。


そして――

森下さんが立ち止まり、僕の方を見た。


「太一。俺と……別れて動くのはどうだ?」


僕は驚いたが、その提案にはすぐにうなずいた。


「……それがいいかもしれません。

捜索効率も上がるし、誰かと早く合流できる可能性も高くなりますから。――一石二鳥です」


森下さんは口元を僅かに緩め、そして静かに言った。


「決まりだな」


僕たちは、言葉少なに別方向の廊下へと歩みを分けた。



---


別れて間もなく、僕はひとつの部屋の前で立ち止まった。

プレートには何も書かれていない。

それでも、直感が告げていた。


(ここだ……)


扉を押すと、想像通り――そこには一台の古いパソコンがあった。


灰色の筐体。CRTモニター。

かすかな埃を纏って、長い年月を黙って過ごしてきたように見える。


スイッチを押す。

「ブウゥゥン……」という電源の立ち上がる音。

驚いたことに、パスワード入力画面はなかった。

それどころか、OSが立ち上がるとすぐに、デスクトップの中央にひとつだけファイルがあった。


《研究発表》


(……やっぱり、同じだ)


マウスをクリックすると、ファイルが開かれる。


スクロールしながら、僕はその文字列を静かに、けれど目を逸らさずに読んだ。



---


研究発表


1970年5月27日

この度「インフィニティ過激派組織(IN)」は、

生物や人間をゾンビ化させる開発に成功しました。


1. ゾンビ

人間がウイルスに感染した姿。集団行動で襲ってくるのが最大の特徴。


2. D-41

犬がウイルスに感染した姿。異常なスピードで接近し、一瞬で噛みつく。


3. C-97

ゴキブリが感染した姿。毒液を発射しながら突進してくる。


4. C-257

カメレオンが感染し巨大化。一定時間透明化し、姿を現した瞬間に攻撃。


5. G-180

ゴリラが感染した姿。爆発以外の攻撃がほとんど効かない、凶暴性を極めた存在。


6. G-315

人間が感染し巨大化した姿。極めて凶暴で、第2形態を持つ。



以上で研究発表を終了します。



---


(……やはり、“予想通りの結果”か)


僕は静かにファイルを閉じ、息を吐いた。

あの時――僕、井上、田中、小野さんの4人の中で、僕だけが知っていた“この文書”。

まさか別の場所で、同じ内容を見ることになるとは。


(やっぱり、“すべての元凶”は――)


思考が、過去と今を結びつけたその瞬間。

僕はふと、部屋の奥に「扉」があることに気づいた。


「……え?」


目を凝らす。

鉄製の細いハンドルがついた、見覚えのない扉だった。


(前は……なかったはずだ)

確かに、同じような部屋に入ったが、その時はこんな扉はなかった。

これは明らかに“新しい”存在だ。


「何だこれ……繋がる部屋なんて、なかったのに……」


鼓動が、早くなる。

視界の奥が揺らぐような不安と、好奇心が胸の奥でせめぎ合う。


僕は、そっと扉の前に立った。


(この先には――いったい、何があるんだ?)


ゆっくりと、手をハンドルにかける。


――ギィィィ……


鈍い音が、静寂を破った。


                         

                       To be continued

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