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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-1章「交錯する運命・序章」

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第64話「地下研究所」

北校舎の裏山、その頂に忽然と現れた“見たことのない建物”。

その金属的な無機質さと、不自然に伐採された木々。

ここが、ただの“校外学習エリア”の一部とは到底思えなかった。


僕はみんなよりも一歩前に出た。

心臓の鼓動が、やけに耳の奥で響いていた。

金属製のゲートには、鍵もセキュリティ装置もない。

ただそこに“開けられるように”存在していた。


「太一、待て」

森下さんの声が背後から届いたが、僕は振り返らなかった。

手をかけて、ギィ……と音を立てて重たいゲートを押し開ける。

その瞬間、少し湿った冷気が顔を撫でた。


「……やっぱり、おかしい」

僕は無意識に呟いた。


そして、次の瞬間には、森下さんが僕の横に立っていた。

彼もまた黙って中を見つめている。

鋭い視線が、ただの空間を切り裂くように真っ直ぐだった。


「――ここが、“次の地獄”かもしれないな」

森下さんは静かに言った。


その言葉の意味を理解する前に、背後から足音が近づいてきた。

小野さんが口を押さえて震える声を漏らす。


「は……早く、行かなきゃ……」


けれど、動こうとしても身体が動かない。

まるで足に見えない鎖が絡みついているかのように。


「おかしい……なぜ足が……」


天野君の声が低く震えていた。

博士も苦笑しながらつぶやく。


「以下同文じゃな……この年で“恐怖”がまた蘇るとは……」


それでも、数秒後には皆、意を決したように顔を上げた。

無言のまま、それぞれが一歩を踏み出し、ゲートの中へと入っていく。



---


中は、完全な静寂に包まれていた。


床は灰色のセラミックタイル。壁は光沢のある金属。

天井に等間隔で取り付けられた蛍光灯が、じわりとした白光を放っていた。


そして――中央に“それ”はあった。


「……っ!」


僕は、言葉を失った。


中央に口を開けるのは、“地下へと続く階段”。

しかも、その“異様な段数”は、かつて目にしたものとまったく同じ。

あの北校舎の特別室の奥に続いていた、“あの階段”と。


森下さんも立ち止まり、その光景を凝視していた。


「これは……ただの偶然じゃないな」


その直後に続いて入ってきた他の仲間たちも、目を見開き、息を飲んだ。


「……ヤ、ヤバくない……? 段数エグいんだけどっ!!」

佐藤さんが叫ぶように言う。


「地下へ……続いてるんですね、これ……」

時子さんが足元を覗き込みながら、怯えた声を漏らす。


「うっわ……見れば見るほどおかしい段数……まるで底がない……」

普子さんも顔をしかめた。


五条さんが顔を引きつらせながら、弱々しく口を開いた。


「と……とりあえず、みなさん……降り、ますか……?」


だが、僕と井上、田中、小野さん――あの“時”を体験した4人は理解していた。

この階段を降りれば、“地獄”が待っていることを。


けれど、進まなければいけない。

戻るという選択肢は……もはや存在していなかった。


「わかりました。“敬語さん”」

羽田がニヤリと笑いながら言う。


「うん。たしかに、進むしかないね」

髙橋も静かにうなずいた。


「“後ろ見たら負け、前を見たら勝ち”。そう言うしね」

井上がぽつりと呟く。


僕たちは、意を決して階段を降り始めた。



---


息が苦しい。

下へ下へと降り続けるにつれ、空気が変わっていく。

じっとりとした冷気。湿った金属のにおい。

光はどこまでも薄暗く、ただ淡く階段を照らしている。


「長い……な……」

誰かの声が漏れた。


休憩スペースも、トイレもない。

降りるしかない。

それだけしか“選ばされていない”。


この道を選んだのではない。

“強制的に”歩かされているのだ――そんな感覚すらあった。


ようやく、足が最後の段差に触れた時、誰もが安堵の息を漏らした。

そして、目の前に現れたのは……


「……自動ドア……?」


ピッ、とセンサー音がして、スライド式のドアが、静かに左右へと開いた。


その向こうに見えたのは――確かに、“地下研究所”だった。


けれど、あの時の“白く輝く研究所”とは違う。

今回のそれは、灰色に染まり、所々に破損や剥離の跡が見えた。

まるで、すでに“戦場”になったあと……いや、“処理済み”の実験場のようだった。


「ここ……繋がってるのかな、前と」

田中がぼそっと呟く。


「いや……建物の構造が違う。前は、校舎からの地下道だったけど、今回は裏山だ。独立した場所かもしれない」

森下さんが冷静に答える。


僕は立ち尽くしながら、かつての記憶を呼び起こす。


――あの時。

北校舎の「特別室」の奥にあった階段。

その先の、五叉路。

その一角に続いていた、“白く輝く研究所”。


――そして今、裏山。

金属ゲートを越え、異様な階段を降り、たどり着いた、陰鬱な地下の建造物。


違うのは構造だけではなかった。


……雰囲気が違う。

……空気が違う。

……そして、何より、“ここには、まだ何かがいる”。


そんな“確信めいた恐怖”が、背中をぞくりと撫でた。


でも、立ち止まってはいけない。

だから、僕は言った。


「みんな。……ここは、おそらく“地下研究所”だ。もしかしたら、この異常事態の“真相”が見つかるかもしれない」


誰も言葉を返さなかった。

だが、全員が頷いた。

目に宿るのは、“恐怖”と“覚悟”。


進むしかない。


……真相に、触れるために。


なぜこの世界は変わったのか。

誰がこのパンデミックを引き起こしたのか。

なぜ僕たちは“選ばれた”のか。


僕は知っている。


――この先に、すべての答えがある。


                         

                       To be continued

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