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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-1章「交錯する運命・序章」

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第63話「見たことのない建物」

北校舎の裏手――そこに伸びる細い道の先に、裏山へと通じる鋼製の扉があった。


僕と森下さんが校舎の裏に出ると、すでに他のみんなはその前に集まっていた。


13人の仲間たちが、静かに、けれど確かな“決意”を胸に抱えた表情を浮かべていた。


その中でも、田中は僕に気づくと勢いよく手を振った。


「太一!! ここだぞ!!」


井上も駆け寄るようにして手を上げる。


「太ちゃん! 早く来てよ〜!」


髙橋は両手を口に添えて叫ぶ。


「太一くーん!! 急いでー!」


こんな状況下でも――笑顔を見せてくれるみんな。


僕は嬉しくて胸が熱くなった。


でも、心のどこかで、こうも思っていた。


(――無理やり、笑ってるのかもしれない)


何もかもを忘れたように笑えるほど、今の状況は甘くない。


でも、それでも僕たちは“子ども”であり、“生きている”存在だ。


それだけは、忘れたくなかった。



---


「遅れてごめんね、みんな……」


僕がそう言うと、五条さんがにこやかに首を振る。


「そんなことないですよ、太一君。」


佐藤さんも、腕を組みながら言葉を添えた。


「そうそう。五条の言う通りだよ。ってか、そこの変人が一番遅れてたしね。」


「……俺に言ってんのか、それ?」


森下さんがぼそっと言うと、佐藤さんは肩をすくめて小声でつぶやく。


「あたりまえじゃん。誰に言ってんのよ。」


そのやり取りに、時子さんが小さな声で割って入る。


「そ……そんなこと、言っちゃダメですよ……花さん……」


田中が口を押さえて笑いをこらえる。僕もつられて笑ってしまった。


(なんだろう……こんな時間が、ずっと続けばいいのに)



---


井上が言った。


「それじゃ、みんな! 裏山に行こう!」


「そうですね……急がないと、日が落ちちゃうかも……」


時子さんが、不安そうに空を見上げた。


羽田が拳を掲げて声を張り上げた。


「よし! みんな見てろよ!! 俺が一番に登り切ってやる!!」


ドタドタと先頭を駆け出す羽田。


その勢いに釣られて、みんなも扉をくぐり、裏山への小道を登りはじめた。



---


山道は思ったよりも傾斜があり、汗がじっとりと額ににじむ。


それでも、みんなは文句も言わずに前へ進んでいた。


登るごとに、山の緑が濃くなる。


草木が風に揺れ、カサカサと控えめな音を立てていた。


蝉の声が、どこからともなく響いてくる。


「ジィィィィ……ジジ……ジィィィィィ……」


そして突然。


「……あの……みんな……!」


列の途中から声が上がった。


振り返ると、それは普子さんだった。


顔が真っ赤で、眉がひくついている。


「どうしたんですか、普子さん?」


時子さんが心配そうに声をかける。


すると普子さんは、両手で自分の股を押さえながら、小さな声で叫んだ。


「ト……トイレ……行きたくなったからっ(。>﹏<。) 先に行ってて……!」


その場が一瞬、静まり返った。


空気がピン、と張り詰める。


……と、次の瞬間。


「えっ!? でも、待ってた方が――」


五条さんが慌てて言いかけるが、普子さんは彼を睨みつけるように言い放った。


「五条!!! 私は子どもじゃないの!!

高校2年、17歳、身長145センチ!! 低身長でも子ども扱いしないで!!」


「す、すいませんでしたああぁぁ!!!」

五条さんは土下座寸前の勢いで謝った。


普子さんは少し怒りを引っ込め、小さく肩をすくめる。


「……わかればいいのよ、まったく……」



---


みんなは彼女に気を使って、少し前方まで先に進むことにした。


そして、普子さんが見えなくなった頃――


彼女は山道の脇に腰を下ろし、ズボンを下ろした。


草を踏み分ける音、ザザ……ザッ……。


軽く息を吐きながら、しゃがみこむ。


背後で風が枝を揺らす、カサ……カサカサ……。


一瞬、小さな石が転がる音――コロ……カラン……。


静寂の中、わずかな用を足す音が、地面に吸い込まれるように響いた。


チョロ……チョロチョロ……。


遠くから鳥の鳴き声がかすかに重なる。ピィ……ピピ……。


彼女は慌ててポケットからハンカチを取り出し、素早く身なりを整える。


ズボンを引き上げる音――スル……シュッ。



(……みんなに遅れないように、すぐ戻らないと)


トイレを済ませ、ズボンを履き直すと、彼女は軽快な足取りで山道を駆け上がっていった。



---


それから数分後。


普子さんは、ようやくみんなに追いついた。


「き……来たよみんな……」


息を切らしながら言葉を吐く。


だが、その声は、誰にも届かなかった。


なぜなら――


みんなが“固まっていた”からだ。


全員が、口を閉じ、ただ一点を見つめていた。


普子さんも、その視線の先をたどる。


その先にあったのは――


見たことのない建物。



---


コンクリート製の灰色の壁。

背丈よりも高い金属のゲート。

窓もなく、まるで監獄のような無機質な外観。

そしてその周囲には、木々が不自然に“伐採された跡”があった。


「……なんだ、これ……」


太一がつぶやいた。


「こんな建物……この裏山にあったか?」


井上が首を振る。


「いや、俺は毎年この山で“校外学習”してるけど……見たことない。」


羽田が小さく唸った。


「まるで……地面から生えてきたみたいだな。」


五条さんが肩をすくめる。


「学校の施設じゃないのは、確かですね……」


「これは……ただの“建物”じゃない。」


森下さんが前に出て、刀の柄にそっと手を添えた。


「――ここが、“仕組まれた終点”の可能性もある。」


太一の心臓が、高鳴った。


「(もしかして……僕たちが、また“巻き込まれてる”?)」


全員が、無言で“その建物”を見つめた。


そこに何があるのか、誰も知らない。


だが、進むしかない。


進む者だけが、“未来”を知ることができる。



---


                     To be continued


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