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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-1章「交錯する運命・序章」

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第62話「裏山へ」

視点は変わり、太一と森下亮のグループ。


2人は旧体育館での激闘を終えたあと、すぐに校舎へ戻り、北校舎1階の「1−1」の教室で一息ついていた。


教室の窓から差し込む西日の光が、床を橙色に染めていた。


学校という場所のはずなのに、そこには子どもらしい笑顔や喧騒の欠片すらない。


ただ、静けさと、息の詰まるような緊張感が張り詰めていた。



---


太一は、床に腰を下ろしながら、そっと森下さんに尋ねた。


「ねえ…森下さん。少し聞いてもいいですか?」


森下は、教卓にもたれかかるようにして座りながら、ゆっくりと顔を上げる。


「“聞きたいこと”?……何だ?」


「さっきのことなんですが……。

なんで、あのカメレオンを一撃で倒せたんですか?」


太一の声は純粋な疑問と、少しの敬意、そして戸惑いが混じっていた。


彼にとって森下の剣捌きは、あまりにも人間離れしていた。


だが、返ってきた答えは予想に反して、あっさりとしたものだった。


「偶々……上手くいっただけだ。」


「え……はぁ?」


その曖昧さに太一は眉をひそめた。


「そのままの意味だ、太一。俺は別に“特別”じゃない。

ただ運良く、隙を突けただけさ。」


「でも……それって――」


「太一。」


森下は鋭く言葉を差し込んできた。


「この話は、ここまでにしよう。

俺はな……“異世界の勇者”でもなければ、なろう小説の主人公でもない。

今までだって死にかけたことが山ほどある。

それでも生きてるのは――“たまたま”だ。」


静かに、けれど確かな重みを持って言い切った。


その言葉の裏にある経験の数々を、太一は想像するしかなかった。


「……分かりました。反論、できません。」


「それでいいんだ、太一。」


森下はわずかに微笑んだように見えた。


「だがな……俺にだって、守りたかった命がある。

それが今の俺を、形作っている。」


「……守りたかった命?」


不意に出たその言葉に、太一は再び顔を上げた。


「誰を……守りたかったんですか?」


森下は少し俯き、目を閉じた。


そしてゆっくりと語り始めた。


「――幼女たち、女性たち、老女たち……そういった“命”を、俺は守れなかった。

当時の俺には、“力”がなかった。

それが悔しくて……眠れない夜が何度もあった。」


その言葉に太一は驚いた。

何故、そこまで具体的に“女性の層”を言い分けるのか。


「森下さん……それって、“大切な人たち”って言えば済む話じゃ……?」


ふと、そんな疑問が心の中をよぎった。

でも、それを言葉にすることはできなかった。


森下は続ける。


「この刀は、俺の“命の恩人”から受け継いだものだ。

その人も、今ではどこか遠くに行ってしまったが……

戦うたびに、その人の“声”が聞こえてくる気がする。」


森下が腰の刀に手を添える。


――それは、ただの武器ではない。


過去の誓いであり、失った命の代償であり、今を生きる“根拠”なのだ。


その静かな語りに、太一は心を打たれた。


まるで、森下さん自身が、時間と命を背負って戦っているようだった。


そんな時だった。


教室に響く、“ピピッ”という通信機の音。


森下の腰につけていた機器から、誰かの声が流れてきた。


「太ちゃん……太ちゃん、聞こえる?」


声の主は――井上翔だった。


太一は驚きながら通信機に手を伸ばす。


「な……何? 翔ちゃん?」


「今ね、玲奈と勇気、それから佐藤さんと一緒に行動してるんだけど……

捜索しても手がかりが全くなかったんだ。」


「えっ!? でも、翔ちゃんって……玲奈と2人だったはずじゃ……」


「ああ、それはね、俺から提案したんだ。

『一緒に捜索しませんか?』って。

そしたら2人とも『いいよ』って言ってくれてさ。」


「そ……そうか。なら安心した。」


太一が通信を終えようとしたその瞬間――

井上が慌てて続けた。


「あっ!! もう一つ伝えたいことがあった!」


「お、おどかさないでよ! 何?」


「次の捜索場所なんだけど……

**“裏山”**に行こうと思ってるんだ。」


「……裏山!? あの、北校舎の北側にある?」


「うん、そう。それぞれに通信して、みんなに『北校舎の裏に集合しよう』って伝えてある。」


「……分かった。今すぐ行くよ。」


「じゃあ、待ってるね。」


通信が切れ、教室には再び静けさが戻った。


太一は立ち上がり、森下の方へ振り向く。


「森下さん。行きましょう。」


森下も立ち上がり、刀の柄に手を当てながら頷いた。


「ああ……行こう。」


2人は教室を後にし、北校舎の外へと続く廊下の扉を押し開けた。


そこから見えたのは――

夕陽に染まる校庭と、鬱蒼とした緑が広がる“裏山”。


この先に、どんな危険が待っているのかはわからない。


だが、戻ることのない覚悟だけは、すでに2人の中に芽生えていた。


そして、太一の心にはひとつだけ確かなことが残っていた。


「もう……校舎には戻らないだろう。」


その言葉が、教室の扉を閉じる音とともに、過去の自分に鍵をかけた。



---


             To be continued

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