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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第3-1章「交錯する運命・序章」

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第61話「世界一の天才博士と日本一の天才小学生」

視点は変わる――静まり返った現体育館。

柔らかく射す午後の陽射しが、窓から差し込み、床の木目を照らしていた。


ここには、天野日佐知香と長谷川普子の2人の姿があった。


天野君は、体育館の隅――管理室と倉庫の捜索を終えたあと、体育館中央にポツンと座っていた。


その背中は、まだ小学生らしい幼さを残しながらも、どこか哀愁を帯びていた。


「何してるの?天野君?」


ステージの上から声をかけたのは普子さんだった。

小柄ながらも眼差しは鋭く、どこか見守る姉のような優しさを含んでいた。


「手がかりがなかったから、座ってるんです。」

「そ、そうなんだ。」

「普子さん、手がかりは見つかりましたか?」

「嫌、なかった。ごめんね…見つからなくて。」


「大丈夫ですよ。僕も見つからなかったので。」


ほんの一瞬、静かな時間が流れた。


ステージの上で照明に照らされた普子さんが、ふと思い出したように尋ねた。


「ねえ、天野君……聞きたかったことがあるんだけど。」


「質問ですか? 色々聞いてもいいですよ。」


「……漢検や数検、英検がそれぞれ1級で、運動も超一流。

雑誌の表紙に何度も載ったことある“超優秀児”。

もしかして……あなた、『日本一の天才小学生』の天野日佐知香君なの?」


天野君は、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに微笑み返した。


「そうだよ。僕は、天野日佐知香。気づいてたんだね。」


「嫌……有名人だから、すぐに気づいたの。名前見た時には、もう確信した。」


「そうなんですね。」


天野君は立ち上がり、ステージの方へ歩き始めた。


「とりあえず、体育館から出て、校舎に戻りましょうか。」


「そ、そうだね。」


2人が並んで体育館の出口に向かおうとしたとき――

扉が静かに開いた。


そこに立っていたのは――Big博士と、長谷川普子の妹、時子だった。


「お……お姉ちゃん。」


「時子!! 大丈夫!? 怪我はなかった?」


「う、うん。大丈夫。」


再会に少し安心した表情を見せる姉妹。

だが、次の行動を迷っている間に、天野君が口を開いた。


「その前に、博士と2人で話したいことがあります。

普子さん、時子さん……先に校舎に戻ってくれませんか?」


「えっ……? そ、そうなの? うん、わかった。

行こう、時子。」


「う、うん……お姉ちゃん。」


2人が去った後――

体育館には、天野君とBig博士の2人だけが残った。


沈黙が満ちる中、天野君はまっすぐ博士を見上げて言った。


「博士……ひとつだけ、聞きたいことがあります。」


「なんじゃ?」


「あなたは……どうして『世界一の天才』になったんですか?

その理由を、教えてほしいんです。」


博士は少しだけ目を細め、深い皺の奥から穏やかな眼差しを送った。


「……なぜ、そんな質問を今するのかね?」


「今までずっと考えていたんです。

人はどうして“そこ”まで到達できたのか――

その答えを知りたくなったんです。」


博士は、ほんの一瞬だけ目を閉じると、静かに頷いた。


「……そうか。ならば、ワシの話を特別にしよう。

これは、誰にも語ったことのない過去じゃ。」


その口調は、過去を振り返るように、どこか懐かしさを含んでいた。


「ワシが『世界一の天才』を目指すようになったのは――1970年5月30日、

あの日に起こった『グアム事件』がきっかけだった。」


「グアム事件……?」


「うむ。あれは、グアムにある研究所が崩壊した事件として、ニュースで報じられた。

しかし――真実は違った。」


「……違った?」


博士は深く頷いた。


「あれはただの“倒壊事故”ではなかった。

裏で糸を引いていたのは――『インフィニティ過激派組織』……すなわち、“IN”じゃ。」


「“IN”……!」


天野君は思わず息を呑んだ。

自分たちが今、命をかけて戦っている組織、その源がここにあったのだ。


「事件の2週間後、現場周辺の捜索によって、“IN”の旗が見つかった。

それにより、この研究所がインフィニティの秘密施設だったと明るみに出た。」


「……そんなことが……」


「ワシはそのとき、まだ30歳じゃった。

だが、その事件でひとりの人物に出会ったのじゃ。」


天野君の目が輝いた。


「……誰なんですか、その人は?」


博士は一歩、天野君に近づき、静かに腰をかがめた。

そして、誰にも聞こえないように――天野君の耳元で囁いた。


天野君の表情が、驚きに染まる。


「えっ……? 本当なんですか……? それ……」


博士は微笑み、短く答えた。


「……ホントじゃ。」


しばしの沈黙が流れた後、2人は歩き出す。


木の床を踏みしめ、静かに体育館を後にした。


――その場に残されたのは、ただ陽射しと沈黙だけ。


2人だけが知る、「始まりの真実」。

そしてその真実は、後に世界を左右する“決断”へとつながっていくことになる。



---


           To be continued

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