第59話「危険な校舎内」
視点は変わり、田中勇気と佐藤花――奇妙な組み合わせのグループが、1階にある「口論室」を捜索しているところだった。
廊下の照明は一部切れており、天井の蛍光灯がジジジ……と不気味な音を立てながら点滅していた。
古びた教室の扉を開けると、埃の臭いとともに、ひんやりとした空気が2人を包む。
口論室――名前の通り、学校内でのトラブル処理や、いわゆる“生徒指導”に使われていた部屋。
壁には「話し合いのルール」や「生徒憲章」などが貼られており、机と椅子が中央にいくつも並べられていた。
そんな中、田中が何かを見つけた。
「なぁ……『花』だったっけ?」
その呼びかけに、佐藤はピクリと眉を跳ね上げた。
「下の名前で呼ぶんじゃねぇーー……で、なに?」
田中は、少しバツが悪そうに、手に持っていた紙切れを掲げる。
「小さな紙切れを見つけたんだよ。紙には、『2103』って書いてあるぞ。」
佐藤はそれを見るなり、即答した。
「そうなんだ……多分だけど、そこにあるダイヤル式の金庫に入力すればいいんじゃない?」
その言葉に田中は目を丸くし、少し照れながら頷いた。
「わ、わかった……教えてくれて、ありがとな。」
佐藤はふっと微笑んだ。
(……あれ、可愛いとこあるじゃん、この子。)
田中は、部屋の隅にあった金庫の前に膝をついた。
重厚な金属製のダイヤル式金庫。鍵穴は無く、4桁のダイヤルを回す方式。
田中は紙に書かれていた通り、「2103」と入力した。
「ガチャンッ」
重たい音を立てて、金庫が開いた。
「うおっ……マジで開いた。」
中には――
新品のショットガンと、数発分の弾薬が収められていた。
「うわぁ! このショットガン、なんかまだ新品だね!!」
突然背後から声がして、田中は驚いて振り向いた。
「な、なんでわかるんだよ!?」
佐藤は胸を張って答える。
「当然でしょ!? 私はあなたと違って、“アニメ”を見てるからね。」
「まさか……花……『アニメオタク』だったのか!?www」
「わ、笑うな! 笑うなってば!!」
「だって、だって……特大ブーメランが帰ってきたかのような感じがしたから。」
「うっ……(。>﹏<。)!!!」
顔を真っ赤にしてぷいっと横を向く佐藤。
一触即発の雰囲気だった2人の距離が、ほんの少しだけ、縮まった気がした。
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視点は変わり、井上翔と髙橋玲奈のペア。
2人は「資料室」を捜索していた。
この部屋は、旧年度の記録や行事の記録が保管されている場所で、古びた棚とファイルが乱雑に並んでいる。
「翔君。なにか手がかりはあった?」
玲奈が声をかける。
「いや……特に何もないなぁー。」
「えっ?……ホントに? なんか怪しい。」
「ホントだよ。」
その時だった。
「キイィィィィィ!!!!」
資料室の扉が、鋭い音を立てて開いた。
「ん? なんか音しない?」
「開ける音……もしかして……!!」
2人が扉の方を向いたその瞬間。
そこには――**巨大なゴキブリ型の生物「C-97」**が立っていた。
「キャあああああああああぁぁぁぁ!!!!」
「ご……ゴキブリだーーーーー!!!!!」
玲奈は悲鳴を上げ、翔も腰を抜かしそうになる。
「C-97」は過去に戦った「C-257」と同様、改造された生物兵器である。
ゴキブリのような多脚構造と巨大な顎、そして異常な反射速度と跳躍力を持つ。
2人は必死に逃げようとするが、「C-97」は音もなく迫ってきた。
その時だった。
「翔!!玲奈!! 大丈夫か!!」
部屋の奥から、田中と佐藤が飛び込んできた。
「悲鳴が聞こえたから来たけど……な、なにこの化け物!!?」
「こいつ……っ!!」
田中は迷わず、手にしたショットガンを構える。
一発、二発。
「ドンッ!! ドンッ!!」
炸裂音とともに、「C-97」の体が大きく弾け、謎の黒い体液が飛び散った。
化け物は動きを止め、ついには床に崩れ落ちる。
動かなくなった「C-97」を見て、佐藤が顔をしかめる。
「うわぁ……ゴキブリじゃん……気持ち悪くなる。」
2人は、「C-97」についての情報を何一つ知らなかった。
だが、確かに今、自分たちの目の前にあった“化け物”を、田中は撃ち倒したのだ。
「……ありがとう、勇気。」
「勇気君……カッコいい。」
突然の称賛に、田中の顔が一気に真っ赤になる。
「……(。>﹏<。)……!!」
佐藤がニヤニヤしながら見つめる。
「あれれ? ガキんちょ……顔赤くなってるけどぉ~?」
「ち、違ーーよ!!」
そのやりとりに、思わず翔と玲奈が笑い出した。
空気が、少しだけ和らいだ。
「ねぇ、佐藤さん。ここから4人で一緒に行動しませんか?」
井上が言うと、佐藤はあっさり頷いた。
「いいね。私は構わないけど。」
「じゃあ、決まりだな!」
不器用な少年と、ツンと澄ました少女。
真面目な秀才と、やや天然な癒し系。
4人のバランスはどこか歪だったが、逆にそれが、今の彼らに必要な「支え」だった。
だが――
彼らの知らぬ場所で、さらなる危機が、静かに目を覚まそうとしていた。
To be continued




