第56話「友と初対面の人」
「生きてる……みんな、生きてるんだ……」
保健室の扉を開けた瞬間、僕の胸は、安堵と驚きでいっぱいになった。
部屋の中には、田中、井上、髙橋、小野さん、羽田……懐かしい顔がそろっていた。
しかも、さらに初めて見る5人の高校生たちが混ざっていた。
「太一!!太一じゃねぇーか!!」
田中が僕に駆け寄ってくる。声が裏返るほど嬉しそうだった。
「よかった太ちゃん…来てくれて。」
井上が安心したように微笑む。
「太一君…大丈夫?」
髙橋が小さく手を握ってくれた。
「大丈夫ですか…?太一君。」
小野さんは涙を堪えながら、僕の顔を覗き込んでくる。
「おい『脳筋』!!大丈夫か!!?怪我はないか!!?」
羽田の相変わらずの冗談に、思わず笑いそうになった。
「山田君…怪我はないかい?」
……聞き覚えのあるその声。目を向けると、そこには日佐知香がいた。
目を疑った。確かに彼は一度、僕の手によって……。
けれど、そこに立っていた彼は、まぎれもなく生きている日佐知香だった。
記憶との違和感に思考が追いつかない。でも、涙が溢れそうになった。
そんな僕の気持ちに応えるように、僕は自信満々で言った。
「大丈夫!!逃げ足だって速いから!!」
隣にいた博士も、顔色は悪いものの、頑張って強がっていた。
「だ…大丈夫じゃ…これぐらい…平気じゃ」
だがその言葉の直後。
「博士…めちゃくちゃ疲れているじゃないですか。」
羽田が冷静に突っ込んで笑いを誘う。
「みんな無事で…よかった。」
僕がそう呟いた瞬間。
「無事でよかった?そんな訳無いでしょ!?人が死んでるんだよ!!」
鋭い怒声が空気を切り裂いた。
声の主は、初対面の女子だった。年齢は16歳くらい。
細身で、瞳の奥に怒りの炎が見える。
「そ、そんな……」
僕が反論しようとすると、すぐに数人がその場をなだめようと入ってきた。
「やめてください花さん!!小学生相手にそんなに激怒しなくても……。」
背の高い少年が、優しく割って入った。
「そ…そうですよ花さん…そんなに怒らなくても。」
今度は、高身長な女子。
「そうよ花…小学生相手に、そんなに本気出すのは、良くないと思うわ。」
落ち着いた口調の低身長女子も続いた。
彼女の名は、佐藤 花。
そして、止めに入った三人はそれぞれ五条 守(15歳)、長谷川 時子(14歳)、時子の姉である長谷川 普子(17歳)。
しかし、花の怒りは収まらない。
「はぁ!!?そんなことはどうでもいいの!! 今は脱出することが優先でしょ!!?」
その言葉に、田中がピクリと反応した。
「はぁ!!?うるせぇーーーー!!俺より歳上なのに、黙ることもできないのか!!?えっ!!?」
「はぁ!!?ガキんちょは黙っててよ!!」
「お前何歳だよ!!?教えろよ!!」
「16歳!!!16歳ですけど!!!あなたは!!?」
「じゅう……11歳だ……。」
「11歳!!?めちゃくちゃガキんちょじゃん!!!ていうか敬語で喋ってくれない!!?……『か・ち・く』」
「なんだと!!!?お前…ぶっ殺す!!!」
怒りの沸点が一気に突き抜けた。
田中は花に飛びかかり、ドゴッと鈍い音とともに殴りかかった。
「痛っ!!やったなガキんちょ!!」
花も負けじと殴り返す。保健室の中が修羅場と化した。
「や、やめろ勇気!!」
「喧嘩は、よしてくれよ!!」
「花さん!!流石に殴るのは!!」
「やめてください!!お願いします!!」
周囲の叫びも虚しく、ふたりの取っ組み合いは激しさを増すばかりだった。
その時だった。
「シャキィィィィィン!!!!」
銀光が閃いた。
その場にいた全員の時間が止まったようだった。
二人の間に割って入ったのは、初対面の一人の男子。
ただ者じゃない空気をまとっていた。
年齢は不明、鋭い目付き。
それ以上に目を引いたのは――彼の服装。
彼だけが**“戦闘服”**を着ていたのだ。
迷彩と黒を基調にした装備、腰には拳銃のホルスター、そして右手に握られたのは本物の日本刀。
「えっ!!?なに考えてるのあなた!!?」
花が驚愕する。
「お…お前、俺たちを殺す気か!!?」
田中の声も震えていた。
彼は二人の間に立ち、そして淡々と尋ねた。
「お前ら…名前は?年齢は?」
「……はぁ?」
花が苛立ち混じりに言うが、彼は一切動じない。
「わ…私は、佐藤花。16歳。」
彼はうなずくと、今度は五条へ。
「お前は?」
「ええぇ…ぼ、僕は、五条守。15歳。花さんの同級生です。」
時子に向き直る。
「お前は?」
「ええぇ…私!?…私は…長谷川時子。14歳です。」
次に、普子へ。
「お前は?」
「わ、私は、長谷川普子。17歳。時の姉よ。」
それを聞いた彼は、日本刀を静かに下ろした。
そしてようやく、自らの名を名乗る。
「そうか…わかった。俺も自己紹介するよ。」
彼の声は、戦場を知る者の静けさと、何かに抗う者の鋼鉄の意志を帯びていた。
「俺の名は、『森下 亮』。
この世界は、よくわからないが……これからもよろしく。」
その瞬間、空気がガラリと変わった。
まるでひとつの“旗”が立てられたかのように。
戦うための旗。
運命に立ち向かうための集結の証。
そして、ここから始まる。
**「第三の地獄」と「新たな仲間たちとの戦い」**が――。
To be continued




