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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第2章「終わらない戦い」

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第50話「激戦」

キャロットが立ち上がった。


 彼の表情は、これまでのような余裕など微塵もなかった。苦悶、怒り、そして焦燥。それらがごちゃ混ぜになった感情が、あの男の顔を歪めていた。


 「……山田太一……貴様……!」


 僕はその瞬間を逃さず、足に力を込めて一気に距離を詰めた。体にまとわりつく空気すら、僕の味方になってくれているようだった。


 「そんな攻撃で、調子に乗ってんじゃねぇーよ!!!」


 キャロットの怒号が響くと同時に、大爪が空を切る。


 しかし僕は、すでに“次”を見ていた。


 


 「瞬脚・『双閃そうせん』!!」


 


 声と共に、地を蹴った。


 次の瞬間――僕の隣に、もうひとりの“僕”が現れた。


 キャロットの表情が一変する。


 「なに……!? 分身!? バカな……っ!!」


 僕と“もうひとりの僕”は、完全にシンクロした動きで左右から迫った。


 超高速で動く僕たちは、まさに“実体を持った幻影”そのもの。


 (キャロットには――どっちが“本物”か、わからない!)


 


 「どっちだ…? …左か…それとも…右か……?」


 


 キャロットは一瞬の判断を誤った。


 「――こっちかっ!!」


 彼が左に構えた瞬間、僕は右から跳び上がり、回し蹴りを叩き込んだ。


 「ドンッ!!」


 


 僕の片足が、キャロットの片脚を正確に撃ち抜いた。


 「ぐっ……あああああぁっ!!」


 


 重心を失ったキャロットは、地面に崩れ落ちた。爪が床に引っかかり、甲高い金属音が響いた。


 


 だが――終わりではなかった。


 


 「く……クソが……貴様……足技程度で……」


 


 キャロットは血を吐きながら、それでも立ち上がった。


 彼の目は赤く血走り、完全に“理性”を失っていた。


 


 「もう……限界だ!!こうなったらやるしかない!!」


 


 そして左腕を高く掲げ――


 


 「コンプリートモータリティレインジ!!」


 


 その叫びと共に、空気が震えた。


 


 ――次の瞬間。


 床が砕け、鋭い黒い爪が地中から一斉に飛び出した。


 


 僕の周囲に展開される、異様な構図。


 東、西、南、北、そして北西、北東、南西、南東――


 八方から“鋭い刃”が、僕を取り囲むように現れる。


 まるで巨大な黒の檻が地面から突き出たかのようだった。


 


 キャロットの叫びが響く。


 「地獄に堕ちろ!!太一ィィィィィィィ!!」


 


 八方向から迫りくる“死”。


 もし、ほんの一歩でも遅れれば――間違いなく即死だった。


 


 (避けるしかない……!)


 


 僕は、限界まで集中した。


 足元の空気、微細な気流の流れ、キャロットの目線の先、爪の軌道、すべてを一瞬で読み取る。


 


 「――っ!!」


 


 体を低く沈め、右に回転しながら地を滑る。


 ギリギリで、刃と刃のわずかな隙間をすり抜けた。


 


 「――っはあ、はあっ……!」


 


 肩にかすり傷を負ったが、致命傷には至っていない。


 


 爪が床に突き立つ音が、ひとつ、またひとつと鳴り響き、やがて静寂が戻る。


 


 「クソ……っ! 簡単に避けるとは……まあ、いいか……」


 


 キャロットが舌打ちしながら、再び距離を詰めてくる。


 でも僕は、心の中でひとつのことに気づいていた。


 


 (今の攻撃は――本気だった。)


 


 間違いなく、殺す気だった。


 あれは“見せ技”じゃない。命を奪うための、“殺意の塊”だ。


 


 もし、あの攻撃を受けていたら――僕は、もうこの世界にいなかった。


 


 ……でも、それは“もし”の話だ。


 僕は生きている。


 そして――“まだ”戦える。


 


 (忘れるな。キャロットを倒さなきゃ、未来は変えられないんだ)


 


 なぜなら、僕は今まで一度も――こんなふうに命を懸けて戦ったことなんて、なかったからだ。


 


 「これが……本物の戦いだ!!!」


 


 両脚に力を込める。


 指先から膝、腰、そして背中まで、全身が跳躍の準備をしていた。


 


 僕は、再び構える。


 


 そして、次なる“足技”の名を――心の中で唱えた。


 


 


                     To be continued


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