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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人
第1章 「全ての始まり」
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第5話「集団」

太一はしゃがみ込んで涙をこぼしていた。嗚咽混じりに肩を震わせていると、背後から足音が近づいてきた。


「太一くん。」


振り返ると、そこには小野さんが立っていた。手には白い包帯が握られている。


「小野さん……早かったですね……。」


「包帯を持ってきました。それと……金森さんはもう……」


言葉を選ぶように、小野さんは静かに言葉を濁す。太一はそれ以上聞かなかった。ただ、小さくうなずいた。


「……わかりました。また行動しますね。」


小野さんは無言で太一の右肩に包帯を巻いた。傷は浅いが、痛みと恐怖は心に残っていた。包帯が巻き終わると、太一は静かに立ち上がった。


次に向かったのは、校舎の三階だった。薄暗い廊下を歩きながら、彼は音楽室の前で足を止めた。ドアを開けると、そこには健二と太郎がいた。二人は机の上の歌詞カードをじっと見つめ、何やら悩んでいる様子だった。


「誰だ!!?」


健二が反射的に叫ぶが、太一の顔を見てホッとしたように声のトーンを落とす。


「なんだ、太一か。」


「たいちにいちゃん!! きたんだね!!」


太郎が笑顔で駆け寄る。太一は彼らの視線の先、歌詞カードに目をやった。


「健二さん、歌詞なんか見て、どうしたんですか?」


「これ見ろよ。」


健二が指さしたその端には、黒いインクでこう書かれていた。


――「この曲を轢くべし」


「……轢く?」太一が首をかしげた。


「ピアノでひくのはどう?けんじにいちゃん!」と太郎が無邪気に言った。


「無理に決まってんだろ!? ピアノなんて弾いたことすらねぇんだぞ!!」


だが、太郎はそんな健二の言葉を無視するように、歌詞を譜面台の上にそっと置いた。


その瞬間――


音もなく、ピアノの鍵盤が勝手に動き出した。誰も触れていないはずのピアノが、まるで意志を持ったかのように旋律を奏で始めた。


「はぁ!? いったいどうなっているんだ……?」


「ピアノが……勝手に……」


「うわぁ!! すごーーーーーーい!!」


太郎は目を輝かせ、音楽に夢中になっていた。


しかし――


廊下の奥から、低く湿ったような鳴き声が響いた。その音に空気が凍りつく。三人が振り返ると、扉の向こうには、ゴリラのような異形の生物が複数、じっとこちらを見つめていた。


「うわぁ!! なんだなんだ!!?」


太一が叫ぶ間もなく、一体の生物が猛然と太一へ飛びかかってきた。次の瞬間、健二が太一を突き飛ばす。


「危ねぇ!!」


ゴッ――!


生物の爪が健二の腕を直撃し、そのまま引き裂いた。


「うあああああああああああ!!!!!」


太一は声を失った。健二の右腕が、肩から無残にちぎれて転がっていた。


「健二さん!!! 大丈夫ですか!!!?」


「だ、大丈夫だ……!」


そう言った矢先、生物たちは健二に群がった。牙をむき出しにし、彼の体にガブリと噛みつく。肉が引き裂かれる音が、音楽室に響いた。


「うあああああああああああ!!! 痛でえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


健二の絶叫の隙を突いて、太一は太郎を連れ、ピアノの裏に身を潜めた。息を殺して身を縮めるが、生物たちは咀嚼の手を止めることなく、鋭い視線をこちらへ向けてきた。


「……見つかった……」


次の瞬間、異形たちが一斉に吠えた。


「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


その声が、脳を揺さぶるように響く。


太一は震える手で腰のホルスターからハンドガンを引き抜いた。迷いのない目で生物たちを睨みつける。


「……殺るしか……ないのか?」


そして、引き金に指をかけた。


――襲いかかる生物の群れ。


果たして、太一たちの運命は――


              To be continued

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