第49話「反撃開始」
意識を取り戻した僕に、最初に声をかけたのは――キャロットだった。
「山田太一……起きたのか……www!!」
その嘲り混じりの笑い声が、頭の奥で不快なノイズのように響く。だが同時に、それが僕の覚醒を証明する“鐘の音”にも思えた。
次いで――
「太ちゃん!! 太ちゃん!! 大丈夫!!?」
「おい!! しっかりしろ、太一!!」
「大丈夫ですか!? 返事をしてください!!」
井上、田中、小野――僕の大切な仲間たちが駆け寄り、声を重ねていた。
僕は、口の端にわずかな笑みを浮かべながら、言った。
「……うん、大丈夫。」
当然、みんなは驚いた表情を浮かべた。
「太ちゃん……無理はしないでほしい」
「そうだ!! 今は休んでくれ!!」
「私たち3人でキャロットをなんとかします!」
心配してくれる仲間たちの声が、温かく胸に届く。
でも――
今の僕には、「休む」なんて言葉は、必要ない。
だって、僕は……“取得した”。
リリィから授かった最後の技――「足技」を。
「大丈夫……。僕が絶対に……キャロットの根を断ってみせるから!!」
その言葉に、仲間たちは驚愕した表情を見せる。
さっきまで“瀕死”だった僕が、まるで別人のように立ち上がっている。
でも、すぐに彼らの顔は“信頼の色”に染まった。
「……そうか、頑張れよ!! 太一!!」
「ヤバい時は、僕たちが守る!!」
「無理はしないでくださいね……!」
その声に、僕はこくんと頷いた。
目を向けると、キャロットが距離を取って構えている。相変わらず余裕の笑みを浮かべながら。
「www!! 友達に応援されて、“再戦”か? 笑わせんじゃねぇよ。お前は私には勝てないんだよ!」
さっきの惨敗を引き合いに出す、汚い挑発。
だけど――僕の中に沸き上がる怒りは、冷たく、そして確かな力を帯びていた。
「いい加減にしろ!!」
怒声が響いた瞬間、仲間たちは驚いた表情を見せた。
「“実力差”とか、“再戦”とか……そんなのはもうどうでもいい!!」
「僕は今、“倒したい”んだよ!! ここで負けたら、意味がなくなる!」
「だから……もう“逃げたい”とか、“死にたい”とか――考えねぇ!!」
その言葉に、キャロットの顔がわずかに変わった。嘲笑から、わずかな“興味”を含んだ真剣な表情に。
「……そうか。お前は、私と“本気”で戦いたいんだな?」
「当たり前だ!! 後悔なんか、どうでもいい!! 僕の目的は……お前の根を断つことだ!!」
次の瞬間。
キャロットが、動いた。
「私の右腕の“大爪”を喰らうがいい!!」
その異形の右腕――黒く巨大な爪を振りかざしながら、僕へと突進してくる。
それを見た瞬間――不思議と、心が静かになった。
そして、ふと思った。
(……あれ、“避けられる”かもしれない……なんで……?)
自分でも理由がわからなかった。けれど、体が自然と動いた。
「――瞬脚・『一閃』!!」
地を蹴る音が、空気を切り裂いた。
視界が流れる。すべてがスローモーションのように感じられる。
キャロットの腕が目の前を横切る直前、僕の体はすでに――背後にいた。
「なに!!?」
キャロットが振り返った瞬間。
「ドンッ!!」
僕の右足が、キャロットの頭部に見事な回し蹴りを打ち込んでいた。
衝撃で体勢を崩したキャロットが、数メートル先へと吹き飛ぶ。
「な……なに……!? 嘘だろ!? 私の“大爪”を避けた!? それどころか……攻撃が当たっただと!?」
地に伏すキャロットが、狂ったように見開いた目でこちらを見る。
僕は、静かに立ち上がった姿勢を整えながら言った。
「……これが、僕の“足技”だ!!」
床を踏むたびに、空気が唸る。
足先に集中するエネルギーが、重力を操るような感覚さえ与えてくれる。
“戦士”ではなく、“忍者”のような機動力。
――リリィの言葉は、本当だった。
僕は、変わった。
キャロットはゆっくりと立ち上がり、右腕を握りしめて言った。
「……ならば、次は“真の技”で……貴様を切り裂く……。」
僕も、ハンドキャノンを手に構えながら言った。
「さあ――こいよ、キャロット。今度は、僕が主役だ。」
To be continued




